子供向けパンフレットの刊行

『東京文化財研究所ってどんなところ?』
東京文化財研究所は今年度、子供向けパンフレット『東京文化財研究所ってどんなところ?』を刊行しました。これは小学生や中学生などを対象にした研究所の案内です。
2009年度版は2008年度版に比べ、判型をB5判に、またページ数を16ページに改めたほか、内容も研究所の活動をトピックスとして紹介するように変更しました。
今後、子供向けパンフレットは台東区内の小学校や中学校に配布する予定です。もちろん一般の方々にもご利用いただけるように、研究所や黒田記念館でも配布しています。ぜひご利用ください。
また子供向けパンフレットのPDFファイルは、研究所のホームページ、下記URLからダウンロードすることも可能です。
http://www.tobunken.go.jp/~joho/japanese/publication/kids/2009.pdf
第43回オープンレクチャー「人とモノの力学」の開催




当研究所では、美術史研究の成果を広く知っていただくため、毎年秋に公開学術講座「オープンレクチャー」を開催しています。昭和41年(1966)の第1回目から数えて、今年で43回目を迎えます。平成18年(2006)より、「人とモノの力学」という共通テーマを設定してきましたが、今年は10月2日、3日にわたって、所内外の研究者4名が発表を行いました。
10月2日は、土屋貴裕(企画情報部研究員)が「「異国」をこしらえる―「玄奘三蔵絵」をめぐって―」、塚本麿充氏(大和文華館学芸部員)が「宋朝からみた日本僧―仏法・国土と文物交流の世界―」と題し、中世の日本、および宋代の中国が、互いをそれぞれどのように眼差し、認識していたのかを、鎌倉時代の絵巻作品、そして中国-日本を含めた東アジアの文物の移動/交流、そして当時の社会的なコンテクストから探るものでした。
翌3日は、中野照男(当所副所長)が「大谷探検隊収集西域壁画の光学的調査」、白須淨眞氏(広島大学講師)が「チベット宗教世界と大谷探検隊」と題して、大谷探検隊によって見出された作品の、近年の研究成果を踏まえた美術史的位置の再評価と、大谷隊の活動をめぐる日英中露の人々の動きを、当時の政治的状況を踏まえて捉えなおすものでした。
この度の4人の発表は、前近代/近代それぞれの、中国・チベット・インドなど「アジア」と「日本」の関係を、美術作品/文物/文化財といった「モノ」の広範な作用や働き、そしてそれをとりまく「人」の様々な営みを読み直すという、まさに「人とモノの力学」という共通テーマに相応しい、大変刺激的な内容となりました。聴講者はそれぞれ133名、125名を数え、両日にわたって行われたアンケート結果においても、多くの方々から大変満足いただけたとの回答を得ることができました。今後とも、当研究所の研究成果を発信するこのような企画を積極的に行っていきたいと思います。
所内エントランスのパネル展示「X線透過撮影による仏像の調査・研究」



9月18日(金)より、企画情報部の担当で、所内エントランスのパネル展示「X線透過撮影による仏像の調査・研究」を行っています。この展示は企画情報部の研究プロジエクト「美術の技法・材料に関する広領域的研究」の一環として保存修復科学センターの協力を得て、これまで行ってきた調査・研究の一端を紹介するものとして企画されたものです。なお、このパネル展示は年末までを予定しております。
カリフォルニア大学バークレー校日本文化研究所シンポジウム
今年度9月25日から27日の3日間、カリフォルニア大学バークレー校日本文化研究所の創立50周年を記念して、Tracing Japanese Buddhism(日本仏教学のあゆみ)と題したシンポジウムが開催されました。仏教学、仏教史、仏教美術史など、仏教に関わる領域を専門にしているアメリカ、日本、ヨーロッパの研究者が一同に会し、多くの講演や報告が行われました。各日80名近くにのぼる参加者とともに活発な議論が交わされ、お互いの研究成果を知る貴重な機会となりました。
1日目には、“Numinous Materials and Ecological Icons in Premodern Japanese Buddhism”をテーマにした仏教美術史のパネルがあり、そのパネリストの一人として、皿井は平安時代初期一木彫像の代表作である神護寺薬師如来像に関する発表を行いました。その他のパネリストは、木彫像に用いられる材の樹種について、近年の研究成果などに関する知見を紹介するなど、最新の情報を交えた報告を行いました。 アメリカでは日本の仏教彫刻に関する研究者が数少ないこともあり、仏像に関しては知られていないことが多いようです。今後こうした機会を活用し、海外においても日本の仏像に興味を抱いてもらえるよう、国際交流を積極的に進めていきたいと思います。
今泉雄作『記事珠』について

昭和5年の開設以来、当研究所は文化財に関する資料を収集・整理してきました。それらは目録化し、公開・閲覧できるよう鋭意努めていますが、なにぶん80年近くの長きにわたって集積した諸資料の中には、時として未整理のまま、日の目を見ずにいるものもあります。
ここでご紹介する今泉雄作の『記事珠』は、そのように長らく埋もれていた資料のひとつです。今泉雄作(1850~1931年)は、文部省や東京美術学校(現、東京藝術大学)、東京帝室博物館(現、東京国立博物館)に勤務し、岡倉天心とともに近代日本の美術行政を支えてきた人物です。『記事珠』は明治20年から大正2年にかけての、全38巻からなる今泉自筆の日記で、とくに彼が鑑定や調査を行なった美術工芸品が略図を交えながら詳細に記録されています。これらは資料整理中に当時学生だった依田徹氏(さいたま市文化振興事業団)が発見し、すでに今泉雄作研究で実績のある当研究所客員研究員の吉田千鶴子氏によって確認されました。
もっか『記事珠』の書き下しを進めている吉田氏によって、その中間報告が9月30日に企画情報部研究会で行われました。今泉の広範にわたる古美術品の記録に、さまざまな分野を専門とする各部員から大きな関心が寄せられ、資料の重要性をあらためて認識しました。
『年報』2008年度版の刊行

このたび『東京文化財研究所年報』2008年度版を刊行しました。
『年報』は、機構、年度計画及びプロジェクト報告、その他の活動、個人の研究業績、研究交流、主な所蔵資料、研究所関係資料など、昨年度、研究所が行ったさまざまな活動の実績を網羅的にまとめた年次報告書です。
『年報』は、国および都道府県の美術館・博物館、都道府県・政令指定都市の教育委員会や埋蔵文化財センター、文化財研究部門をもつ大学図書館に資料用として1部を配布しています。
また『年報』はホームページ上でもPDFファイル形式で配信しています。どうぞご利用ください。
「近代日本洋画の巨匠 黒田清輝展」盛会裏に終了
7月18日(土)より島根県立石見美術館で行なわれた「近代日本洋画の巨匠 黒田清輝」展は、15177名の入館者を得て8月31日(月)に終了しました。1日の入場者数平均は、石見美術館開館記念展以来の数字となりました。8月1日に当所が行なった出口アンケートでは、同日の入館者の8割以上の方々にご解答いただき、広島県から全体の約30%、山口県から約10%と、島根県のみならず近隣の方々にも多数御覧いただけている様子がわかり、また、100%の方々に展覧会に満足していただけたという結果が得られました。同展に際しては、≪湖畔≫の画像を用いたティッシュの配付や、この作品に描かれた団扇を復元して、毎日来館者先着30名に贈呈するなど、話題づくりに様々な工夫が凝らされるとともに、関連の企画として、1日に「日本絵画の近代化と黒田清輝」と題して、当所企画情報部の山梨絵美子による講演会が、8日には≪湖畔≫に似た装束の人物モデルを使ってデッサンや水彩画を描くワークショップが、29日には同館学芸員川西由里氏による講演会「黒田清輝と森鴎外」が行なわれ、多くの方々にご参加いただきました。
来年度の黒田清輝展は岩手県立美術館で開催される予定です。
ポートランド美術館日本美術作品の調査

オレゴン州に位置するポートランド美術館は1892年に設立された、アメリカ西海岸で最も古い美術館です。約42,000点の所蔵作品のうち、アジア美術については約4,000点の作品が収蔵されています。2009年8月17日から20日の4日間にわたり、企画情報部・綿田稔、土屋貴裕、江村知子の3名により、同美術館所蔵の室町時代から江戸時代までの日本絵画、屏風・掛幅など30点余りを調査しました。作品ごとに調書を作成し、保存状態が良好でない作品については損傷状況などを詳細に記録し、同館担当学芸員の方々とも協議しながら美術史的観点から調査・検討を行いました。なかにはこれまでほとんど紹介されたことがないものの、出来映えのすぐれた重要な作品もあり、限られた時間の中ではありましたが、有意義な調査を遂行できました。調査成果については今後、所内の研究会にて発表するとともに、『美術研究』誌上などで作品紹介を行い、さらなる美術資料の充実と、国際研究交流に務めて参ります。
刀剣のガラス乾板ならびに紙焼き資料の寄贈
このたび大塚巧藝新社(佐藤末春代表取締役)より、刀剣のガラス乾板ならびに紙焼き資料一式の寄付の申し出があり、8月10日(月曜日)に研究所への搬入が完了いたしました。受け入れ窓口である企画情報部文化財アーカイブズ研究室では、ご寄付いただいたガラス乾板ならびに紙焼き資料を、研究所の文化財資料として活用してゆくことを視野に入れて、紙焼き資料より順次整理を行っていく予定です。
近現代美術の保存・修復に関する欧州調査

企画情報部が推し進める資料学的研究の一環として、8月2日から13日まで、英国テートギャラリー、オランダ文化財研究所(ICN)を中心に調査を実施しました。
近現代美術作品においては、さまざまな実験的な様式や素材が用いられてきていますが、近年、それらの作品をいかに後世に継承していくのかが大きな課題となっています。そもそも朽ちていく過程そのものが作品の一部であったり、プラスチック等の新素材が利用されていたり、文化財の保存・修復に関わる組織や専門家にとって新たなチャレンジとなっています。
今回の調査では、アムステルダムのICN内に拠点をもつ「現代美術保存のための国際ネットワーク」(インカ:INCCA)と、その事業の一環としてロンドンのテート・ブリテンが主催する現存のアーティストに自らの作品について語ってもらい、それをアーカイブとして組織的に保存・公開していくという「インタビュー・ウィズ・アーティスツ」プロジェクトを中心に、近現代美術をめぐるこの新たな問題に欧州ではどのように取り組んでいるのか、関係機関を訪問し、関係者の方々にお話をうかがいました。
特筆すべき成果としては、東文研が昨年度に開催した国際研究集会のテーマでもあった「オリジナル」とその保存をめぐる問題について大いなる示唆を得たことはもちろん、東文研のオランダ版ともいえるICNという機関、その中のINCCAというネットワーク、その一プロジェクトを担うテートの三者の関係が非常に興味深く思われました。すなわち、 資金・人材不足や機関の民営化など世界共通の厳しい状況に直面しながら、いかに新しいプロジェクトを運営していくかというモデルを提示していました。その詳細については、企画情報部が刊行する『美術研究』誌上であらためてご紹介したいと思います。
「近代日本洋画の巨匠 黒田清輝展」を島根県立石見美術館で開催

黒田清輝の功績を記念し、あわせて地方文化の振興に資するために、1977(昭和52)年から年1回、開催館と共催で行なっている「近代日本洋画の巨匠 黒田清輝」展は、今年度、島根県立 石見いわみ 美術館を会場として、7月18日(土)より8月31日(月)まで開催されています。重要文化財≪湖畔≫≪智・感・情≫をはじめ油彩画・デッサン等147点、写生帖、書簡などが出品され、初期から晩年までの黒田清輝の画業を跡づける展観となっています。
石見は、明治の文豪森鷗外の出身地です。鷗外は、陸軍軍医として衛生学を勉強するため1884(明治17)年から1888(明治21)年までドイツに留学し、本務のかたわら美術館や劇場を頻繁に訪れて、芸術にも親しみました。帰国後、文筆活動の一環として美術批評も行い、黒田清輝が裸体画論争のなかで第二回白馬会に≪智・感・情≫を出品し、批評の的になった折には、この作品に敬服している一人であると発言しています。後年、鷗外は帝国美術院の初代院長となりますが、1922(大正11)年に鷗外が逝去すると、黒田がその後を襲い、二代目院長となるなど、鷗外と黒田はさまざまな接点を持っています。
石見美術館では、黒田清輝展にあわせて森鷗外と関連する同館の所蔵作品を常設展示しています。黒田の作品や師ラファエル・コランの作品、鷗外の墓碑を書いた洋画家・書家中村不折の作品などが展示され、明治・大正期の文化人の交遊の一端を知ることができます。
『概要』2009年度版の刊行

このたび『東京文化財研究所概要』2009年度版を刊行しました。
『概要』は研究組織をはじめ、今年度、研究所が行おうとする各部・センターの活動、研修、助言・指導、大学院教育、国際シンポジウム、公開講座、情報発信、刊行物などを視覚的にわかりやすく、また日英2ヶ国語で紹介しています。
『概要』は、国および都道府県の美術館・博物館、都道府県や政令指定都市の教育委員会、埋蔵文化財センター、文化財研究部門をもつ大学図書館、大使館、友好協会宛に資料用1部として配布しています。
また『概要』は一般の方々にもご利用いただけるように、『東文研ニュース』とともに黒田記念館や研究所でも配布しています。さらに『概要』はホームページ上でもPDFファイル形式で配信しています。どうぞご利用ください。
データベースの有効活用にむけて―「連想でひろがる美術資料の情報発信」

有形、無形の文化財に関する調査研究を多様な分野で行ってきた当研究所には、調査研究の成果として培われた資料が蓄積されています。企画情報部では国立情報学研究所特任准教授の丸川雄三氏を客員研究員としてお招きし、当研究所がこれまで蓄積してきた資料のデータを有効に活用できるよう、広く公開する方法を検討しています。その一環として6月23日に丸川氏に「連想でひろがる美術資料の情報発信」と題してご発表いただきました。検索者が指定した複数のデータベースを横断検索する連想検索システムや、それを応用した展示の例などが紹介され、当研究所が持つデータを用いた連想検索のデモンストレーションも行なわれました。データのもととなるモノとしての資料の収集、保管についても考えつつ、電子空間での情報公開の方法についてこれからも検討を重ねていく予定です。
大徳寺蔵「五百羅漢図」の光学的調査 (その2) 研究協議会の開催

企画情報部では、美術史研究に欠くことのできない画像資料の形成とその発展的利活用を目指し、「高精細デジタル画像の応用に関する調査研究」というプロジェクトを立ち上げ、調査研究を進めています。本プロジェクトの一環として、奈良国立博物館と研究協定を結び、本年5月に大徳寺蔵「五百羅漢図」の調査・撮影を行いましたが(詳細は活動報告2009年5月の記事をご覧ください)、本調査によって得られた研究成果をさらに深めるべく、研究協議会が6月15日に開かれました。奈良国立博物館より、谷口耕生氏、北澤菜月氏、井手誠之輔氏(奈良博客員研究員・九州大学教授)に来所いただき、当部からは田中、津田、城野、鳥光、土屋が参加しました。
5月の調査後、撮影画像一点一点に画像処理を施すことで、調査時には不鮮明であった銘文もほぼ判読可能な状況となりました。今回の協議会は、これら補正処理を施した画像をもとに、銘文の確認とそこに記された年紀、絵師、寄進者等の解釈、また来たる秋の第二次調査、および次年度以降予定している報告書の方針を立てるべく、終日討議が重ねられました。とりわけ、画像処理の過程で明らかとなった本図銘文の「欠失」の要因等について城野から報告があり、本調査が極めて重要な意義を有することが再確認されました。
本調査および協議会の成果の「速報」は、先にお知らせした奈良国立博物館開催の「聖地寧波 日本仏教1300年の源流~すべてはここからやって来た~」(http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2009toku/
ningbo/ningbo_index.html)の会場にてご覧いただけることと存じます。
大徳寺蔵「五百羅漢図」にほどこされた銘文の全貌、ひいては本図制作の背景が明らかになりつつあります。
大徳寺蔵「五百羅漢図」の光学的調査

企画情報部では、奈良国立博物館と「仏教美術等の光学的調査および高精細デジタルコンテンツ作成に関する協定」を結び、共同研究を進めています。その一環として、平成21年5月11日から17日までの日程で、大徳寺蔵「五百羅漢図」の調査・撮影を奈良国立博物館において行いました。
大徳寺蔵「五百羅漢図」は、南宋の寧波において、淳煕5年(1178)からほぼ十年をかけ、林庭珪・周季常という絵師により全100幅が制作された美術史上大変重要な作品です。現存する94幅(江戸期の補作を除く)のうち、計37幅に銘文の存在が確認されていましたが、経年劣化等により肉眼では判読困難な状況でした。
今回の調査は、これらの銘文を蛍光撮影等の光学的手法を用いて明らかにすることを目的として開始されましたが、新たに11幅、計48幅に銘文を確認することができました。美術史のみならず、当時の歴史や宗教史を考える上でも非常に大きな発見と言えます。
今回撮影した画像をもとに、6月中旬には両機関の関係者を交えての協議会を開き、秋に行う第二次調査のための検討材料としていきます。また、今回の調査の成果の一端は、今年7月より奈良国立博物館にて開催される「聖地寧波 日本仏教1300年の源流~すべてはここからやって来た~」(http://www.narahaku.go.jp/
exhibition/2009toku/ningbo/ningbo_index.html) において提示するほか、さらなる調査・検討を加えつつ、来年度以降、報告書としてまとめていく予定です。
滋賀・百済寺銅造半跏思惟菩薩像の光学調査
企画情報部の津田徹英・皿井舞は、出光文化福祉財団よりの調査・研究助成を得て、二カ年計画で開始した「秘仏等非公開作例を中心とする近江古代・中世の彫像の調査研究」の一環として、保存科学修復技術センターの犬塚将英、早川泰弘の協力を得て、5月12日(火)に滋賀・百済寺銅造半跏思惟菩薩像のX線透過撮影ならび蛍光X線非破壊分析を東京文化財研究所にて行いました。当日、像は13時に共同研究を行っているMIHO MUSEUMの学芸員二名と百済寺住職によって研究所に到着し、調査がはじまりました。今回の調査は胸部で再接合が認められる頭と体部が同時期の造像かどうかを確認すべく、X線透過撮影によって構造を把握し、蛍光X線非破壊分析で両か所における銅の成分を確認することを目的に実施しました。その調査を踏まえて、本像はこの夏にMIHO MUSEUMで公開される予定です。
キッズページの新設
2009年5月、小・中学生を対象としたキッズページを新設しました。とくに「とうぶんけんのしごとぜんぶ」では、東京文化財研究所のさまざまな活動をカード形式でご覧いただけます。 昨年7月に刊行しました子供向けパンフレット『東京文化財研究所ってどんなところ?』(http://www.tobunken.go.jp/~joho/japanese/publication
/kids/2008.pdf)とともに、キッズページを夏休みの自由研究などにご利用いただければ幸いです。ぜひ一度、キッズページhttp://www.tobunken.go.jp/kids/index.htmlまでアクセスしてみてください。
稗田一穂氏へのインタビュー


文化功労者であり、東京芸術大学名誉教授、創画会の創立会員である日本画家稗田一穂氏(1920年生まれ)は、1943(昭和18)年に東京美術学校を卒業し、翌年から当研究所の前身である美術研究所に一年間、嘱託として勤務されていました。
現在、当研究所では、『東京文化財研究所75年史 本文編』を年内に刊行すべく編集をすすめています。そのため、これまでにも多数の関係者の方々にインタビューをして、記録として残すようにし、当研究所の歴史を語っていただいてきました。
今回は、4月14日に都内の稗田氏のご自宅をお訪ねし、当時の研究所のお話をうかがうことができました。1944(昭和19)年という時期は、空襲などで戦禍がひろがるなか、研究所も資料等の疎開を余儀なくされたときで、稗田氏はその疎開作業にあたられました。同氏は、疎開先である山形県酒田市に資料を守るべく半年間滞在され、1945年8月に召集礼状を受けとり、入隊すべく奈良まで帰郷することになったそうです。まさにその車中で、終戦を知ったと語られていました。ご高齢ながら90分を超えるインタビューの応じてくださり、当時の貴重な証言を残すことができました。
連想検索サイト「想―IMAGINE」と美術関係文献検索データベース

企画情報部では、昨年10月から、268,000件からなる「美術関係文献検索データベース(試験運用中)」を公開しています。このデータベースは、1966年から2004年までの美術関係文献を「編著者」、「キーワード」「雑誌名等」の三つの窓口から検索できるもので、データ数からいっても圧倒的なものです。情報の蓄積と公開、発信を研究業務の大きな柱のひとつとしてとらえている当部では、今以上に発信できるように、他のサイトとの連携を現在すすめてようとしています。そのひとつが、国立情報学研究所によって立ち上げられたユニークな連想検索サイト「想―IMAGINE」との連携です。今年度より、当部の客員研究員となった中村佳史氏(国立情報学研究所研究員)が、4月21日にそのデモンストレーションを行い、今後の進め方等について研究協議会を開催しました。このデモンストレーションによって、「美術」というひとつの分野だけではなく、さまざまな分野からの情報が同時にあらわれ、思いがけない広がりと可能性があるのではないかと期待されます。
『昭和期美術展覧会の研究 戦前篇』の刊行

企画情報部では、国内の研究者26名による論文集『昭和期美術展覧会の研究 戦前篇』を刊行しました。本書はプロジェクト研究「近現代美術に関する総合的研究」の成果であり、2006年に刊行した基礎資料集成『昭和期美術展覧会出品目録 戦前篇』の研究篇として、昭和戦前期の美術について各研究者の視点から多角的に論じたものです。展覧会や美術団体の動向を軸に、絵画や彫刻、版画、写真、工芸等の諸ジャンルを対象とし、プロレタリア美術や戦争美術といった昭和戦前期ならではのテーマも盛り込まれています。昭和期の美術をめぐるさまざまな論点を通覧していただきながら、さらに新たな発見や問題意識の端緒となれば幸いです。
各論文のタイトルと執筆者については、企画情報部刊行物のページをご覧ください。
http://www.tobunken.go.jp/~joho/japanese/
publication/book/showaki.html
本書は中央公論美術出版より市販されています。
http:/www.chukobi.co.jp/kikan/index.html