研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS
(東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。
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拓本資料を閲覧する一行
令和6(2024)年5月11日、早稲田大学文学部アジア史コースの一行が、東京文化財研究所の資料閲覧室を訪問しました。柳澤明氏(教授、清朝史)、柿沼陽平氏(教授、中国古代史)、植田喜兵成智氏(講師、朝鮮古代史)が引率する大学院生・学部生の一行は、文化財情報資料部文化財アーカイブズ研究室研究員・田代裕一朗による案内説明を受けながら、昭和5(1930)年以来集められてきた当研究所の蔵書、そして所蔵拓本を興味深く見学しました。
文化財アーカイブズ研究室は、文化財に関する資料情報を専門家や学生に提供し、資料を有効に活用するための環境を整備することをひとつの任務としております。世界的に見ても高い価値を誇る当研究所の貴重な資料が、美術史研究だけでなく、アジア史研究、ひいては歴史学研究全般で広く活用され、人類共通の遺産である文化財の研究発展に寄与することを願っております。
※文化財アーカイブズ研究室では、大学・大学院生、博物館・美術館職員などを対象として「利用ガイダンス」を随時実施しています。ご興味のある方は、是非案内(資料閲覧室_利用ガイダンス (tobunken.go.jp)) をご参照のうえ、お申込みください。
研究会の様子
米国ワシントンD.C.にある国立公文書記録管理局(National Archives and Records Administration)は、歴史的価値を有する国の記録史料の保存と管理を担うナショナル・アーカイブズです。昭和9(1934)年に設立された同館は、「独立宣言」「合衆国憲法」「権利章典」という、いわゆる「自由の憲章」のほか、外交文書、戦争関係文書、移民記録、従軍記録など、国の「記憶」となる史料を保管しています。収蔵資料は、135億枚の文書、4億5千万フィート以上のフィルム、4千100万枚の写真、4千万枚の空中写真、1千万枚の地図や建築技術図面、837テラバイトに及ぶ電子記録など、非常に多様である点に特徴があります(令和5〔2023〕年10月時点)。
同館では、映像資料それ自体(映画フィルムやビデオ等)とともに、長年にわたり、これらの制作過程が記録された関連資料の移管も受入れてきました。令和6(2024)年5月14日に開催された文化財情報資料部研究会では、令和4(2022)年8月に実施したこれら関連資料の現地調査成果について、文化財情報資料部アソシエイトフェロー・山永尚美が「行政機関で作成された映像資料とその関連資料の管理と利用可能性について」と題して報告を行いました。
同館アーキビストへの照会を通じて得られた文書記録シリーズ登録簿(Textual records series register, 1990)の情報によると、特殊メディア(Special Media)を扱う新館(ArchivesⅡ)にはシリーズ単位で約300に及ぶ関連資料の所蔵があり、近年はそのデジタル化も進められていました。プロダクション・ファイル、台本、書簡、索引カード、インタビューの文字起こしなど、多岐にわたる関連資料の内容について撮影写真も交えて報告し、その後の質疑応答では、制作活動に伴って生みだされる記録の保存や管理の必要性について様々に意見が交わされました。この議論をもとに、作品や文化財の文脈を保証する記録の保存に貢献すべく、引きつづき検討を重ねてまいります。
版画を教える島﨑清海(2011年撮影)
島﨑清海旧蔵資料の一部(2024年撮影)
この度、「島﨑清海旧蔵資料」の目録を東京文化財研究所のウェブサイトに公開し、資料閲覧室で当該資料の閲覧提供を開始しました(事前予約制)。美術教育者の島﨑清海(1923~2015)が保管していた創造美育協会関係資料は、ご遺族の意向で令和5(2023)年3月当研究所に寄贈されました。
創造美育協会(以後「創美」)は、昭和27(1952)年に設立された民間による美術教育団体で、島﨑は昭和32(1957)年から昭和47(1972)年まで創美の本部事務局長を務めていました。彼は、退任後も根気強く同協会の活動を見守り、後世に残す努力を続け、創美の初期から2000年代にかけて資料を保管していました。そのことを伝える資料として、初期の創美会員・浅部宏をはじめ数名の談話がまとめられた島﨑私製の冊子(島﨑資料A-531)には、「創美創立当時のことを知る人が少なくなり、今、記録を残しておかなくては、それを後世に伝えることができなくなる」と記し、関係者に冊子を配布していました。創美の活動を後世に伝えることを誰よりも島﨑が望んでいました。
「島﨑清海旧蔵資料」の受贈後、資料の閲覧提供に向けた準備が、文化財情報資料部近・現代視覚芸術研究室長・橘川英規と元研究補佐員・田村彩子の助言で進められ、アシスタント・鎌田かりん氏と神尾雛希氏、元アシスタント・田口ことの氏が資料整理を担当しました。資料は、「A.創造美育協会発行資料類」「B.書簡」「C.スケジュール帳・日記」に分類し、計19個の保存器材で保管しています。
ご遺族並びに関係者皆様のご尽力を賜わり、このようなかたちで後世につなぐことが出来たことを心より感謝申上げます。島﨑の熱意のこもった資料が、少しでも多くの人の目に触れ、国内外の美術教育等の研究がより盛んになることを切に願っています。
◆資料閲覧室利用案内
(東文研_資料閲覧室利用案内 (tobunken.go.jp) )
アーカイブズ(文書)情報は、このページの下方に掲載されています。実際の資料は資料閲覧室でご覧いただけます(事前予約制)。
◆島﨑清海旧蔵資料
(archives_Shimazaki_Kiyomiö w.xlsx (tobunken.go.jp) )
国際博物館会議(ICOM)日本国内委員会での報告の様子(撮影:関広尚世)
令和6(2024)年5月19日に国際博物館会議(ICOM)日本国内委員会の総会と公開シンポジウムが国立民族学博物館で開催されました。この総会において、無形文化遺産部長・石村智が「スーダン武力紛争における文化遺産保護について」と題した報告を行いました(清水信宏氏[北海学園大学]、関広尚世氏[京都市埋蔵文化財研究所]との連名)。私たちはこれまで科学研究費事業「ポストコンフリクト国における文化多様性と平和構築実現のための文化遺産研究」において武力紛争下にあるスーダンの文化遺産の現状について情報収集を行っており、その成果を発表しました。
スーダンでは令和5(2023)年4月に始まったスーダン国軍と準軍事組織である即応支援部隊(RSF)との間の武力紛争が現在まで続いており、同国の有形・無形の文化遺産も深刻な影響を被っています。私たちはこれまでスーダン国内・国外のスーダン人文化遺産専門家および英国をはじめとする国際的な専門家と連絡を取り合い、その現状についての情報収集を行ってきました。今回はその成果を報告するとともに、国際博物館会議(ICOM)を通じたスーダンに対する国際的な支援の必要性を訴えました。
国際博物館会議(ICOM)はブルーシールド国際委員会を構成する組織のひとつです。ブルーシールド国際委員会とは、昭和29(1954)年に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)で採択された「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」(通称ハーグ条約)に基づき、武力紛争や災害によって存続の危機に面している文化遺産を保護するための活動を行う国際的な枠組みで、平成8(1996)年に設立されました。日本は平成19(2007)年にハーグ条約に批准し、117番目の締約国となりましたが、日本はまだブルーシールド国際委員会には未加盟となっています。
日本は昭和20(1945)年の終戦以降、幸いなことにこれまで大きな武力紛争に巻き込まれることはありませんでした。しかしその後も世界各地では武力紛争によって多くの文化遺産が被害を受けてきました。これまで日本はカンボジアやアフガニスタンにおいて武力紛争後(ポストコンフリクト)の文化遺産保護の国際協力を行ってきており、国際的にも高い評価を受けてきました。
しかし昨今の状況を見ると、スーダンだけではなくウクライナやガザ地域など、世界の様々な場所で武力紛争が継続しており、多くの文化遺産が危機に瀕しています。こうした文化遺産を守るために私たちは何ができるのか? 今回の私たちの国際博物館会議(ICOM)日本国内委員会での発表がそのことを議論するきっかけとなることを願っています。
オンラインワークショップの様子(5月29日)
令和6(2024)年5月28日・29日にオンラインワークショップ「スーダンの無形文化遺産とリビングヘリテージの保護(“Reunion, Rehabilitation, and Revitalization” International Online Workshop for Safeguarding Intangible Cultural Heritage and Living Heritage in Sudan)」を開催しました。このワークショップは無形文化遺産部長・石村智が代表者をつとめる科学研究費事業「ポストコンフリクト国における文化多様性と平和構築実現のための文化遺産研究」の活動によるもので、東京文化財研究所無形文化遺産部が主催、英国のSSLH(Safeguarding Sudan’s Living Heritage)プロジェクトが共催、スーダン国立文物博物館局国際協力部(Department of International Relations and Organizations, National Corporation for Antiquities and Museums)が協力という体制で開催されました。
スーダンでは令和5(2023)年4月より武力紛争下にあり、首都のハルツームにある国立博物館や国立民族学博物館などは閉鎖され、文化遺産を守る専門家も国外に脱出するか、国内の比較的安全な地域に退避するかを余儀なくされています。しかしそうした困難な状況にも関わらず、スーダン人専門家たちは文化遺産を守るための活動を継続しています。例えば私たちのカウンターパートであるアマニ・ノーレルダイム氏(前・国立民族学博物館館長、現・国立文物博物館局国際協力部部長)は、スーダン国内の比較的安全な地域に退避し、その地域の博物館を拠点に文化遺産を守る活動を地域住民と協力して行ってきました。また英国のSSLHプロジェクトは、スーダン国内の比較的安全な地域の博物館を拠点に、現地のスーダン人専門家と協力しながら伝統文化の継承のための事業を開始しようとしています。
今回のオンラインワークショップでは、こうしたスーダン国内外で様々な活動を行っている専門家たちをつなぎ、情報共有を行うとともに、この困難な状況を乗り越えるための議論を行いました。その内容は以下の通りです。
一日目(5月28日)
開会のあいさつ(齊藤孝正/東京文化財研究所所長)
趣旨説明(石村智/東京文化財研究所無形文化遺産部)
スーダンの無形文化遺産とリビングヘリテージ保護のための戦略(イスマイル・アリ・エルフィハイル氏/ハウス・オブ・ヘリテージ代表・ユネスコ専門家)
近年のユネスコ無形文化遺産保護条約の流れ(石村智)
人災への備え:21世紀の危機遺産(益田兼房氏/立命館大学)
スーダン国内外でのSSLHプロジェクトの活動(ヘレン・マリンソン、マイケル・マリンソン氏/SSLHプロジェクト)
リビングヘリテージとしてのスーダンの伝統建築(清水信宏氏/北海学園大学、石村智、関広尚世氏/京都市埋蔵文化財研究所)
二日目(5月29日)
基調講演:現状においてスーダンの博物館が目指すところ(ガリア・ガレル・ナビ氏/国立文物博物館局局長)
戦時下における文化遺産への影響:ゲジーラ博物館の事例(アマニ・ノーレルダイム氏/国立文物博物館局国際協力部)
戦時下の世界遺産ジェベル・バルカルにおける文化遺産保護と現地住民(サミ・エルアミン氏/世界遺産ジェベル・バルカル事務所)
シーカン博物館における文化遺産保護と地域住民(アマニ・ヨーセフ・バシール氏/シーカン博物館)
総合討議(司会:インティサール・ソガイロウン氏/アラブ学研究所(カイロ)・前スーダン教育大臣、ジュリー・アンダーソン氏/大英博物館、コメンテーター:アブドルラーマン・アリ氏/ユネスコ専門家・前国立文物博物館局局長)
閉会のあいさつ(アリ・モハメド氏/在日本スーダン国大使)
参加した専門家の中には、ネット接続が難しい状況に苦労した人もいました。それでも武力紛争下という困難な状況にあっても、こうしてオンラインで多くの専門家が一堂に会することが出来たことは大きな成果でした。
スーダンは現在もなお武力紛争下にあり、私たちが現地に行って活動することは出来ません。しかしたとえスーダン国外にあっても、スーダンの文化遺産保護のためにどのような国際協力が出来るかを、これからも考え続けたいと思います。
視察の様子
日光東照宮御仮殿鐘楼(処理空間内部)
令和6(2024)年5月15日に、日光東照宮御仮殿鐘楼で開始した「湿度制御温風殺虫処理」の現地視察を行いました。湿度制御温風殺虫処理とは、木造建造物の柱、梁など木材を食害する害虫を高温(60℃程度)によって駆除する方法です。昇降温時に、木材の含水率が一定に保たれるように処理空間内の湿度を制御することで、木材の物性にほとんど影響を与えずに木材の内部まで温度を上げていくことが可能になります。従来のガス燻蒸による殺虫処理は、安全性や環境配慮の観点から継続が困難な状況にあるため、湿度制御温風殺虫処理はガス燻蒸に代わる新しい方法として期待されています。
これまでに、日光社寺文化財保存会、京都大学、トータルシステム研究所、関西電力、KANSOテクノス、東京文化財研究所などからなる研究チームで実際の建造物を対象とした3度の検証処理を実施しました。殺虫効果や建造物への影響の評価に加え、騒音などの環境への影響や消費電力量などについても検討が行われ、湿度制御温風殺虫処理は実用可能な新しい木造建造物の殺虫処理法として確立されました。そして昨年、指定文化財として初めて輪王寺護法天堂にて殺虫処理が実施され、今回、指定文化財では2例目となる東照宮御仮殿鐘楼での処理が実施されました。今後は、本法が木造建造物の殺虫処理の新たなスタンダードとなるよう普及を進めていきたいと考えています。
特徴から検索している例
令和6(2024)年4月から「文化財害虫検索」(https://www.tobunken.go.jp/ccr/pest-search/top/index.html)という新たなウェブサイト公開しました。このウェブサイトは文化財害虫を発見して同定を行う際に役立ちます。
文化財害虫は種類が多く、これまで昆虫を専門としていない人が同定するのは困難でした。しかし、害虫を発見した人が同定するためにその場で使うことができるツールの開発が求められていました。そのニーズに答え、誰でも簡易的に文化財害虫が調べられることを目的としてこのウェブサイトを制作しました。
「文化財害虫検索」はウェブ上のコンテンツであり、スマートフォンから閲覧することができるため、文化財害虫を発見した現場ですぐに調べることができます。昆虫の形や色などのその場でわかる形態情報をもとに文化財害虫を検索することができるため、昆虫に詳しくなくても直感的に調べることができます。各文化財害虫のページでは、形態や生態などの情報に加え、様々な角度の多くの写真を取り入れているので、見つかった実物の昆虫と簡単に比較することができます。また、遺伝子情報や関連論文なども載っているため、文化財害虫の研究を行う上でも役立つサイトとなっています。
文化財害虫検索では現在(令和6(2024)年5月時点)までに主要な文化財害虫である30種を掲載しています。文化財害虫とされている昆虫は150種以上いるので、これからさらに多くの文化財害虫を登録していく予定です。
サクテン集落での調査風景
荒廃が進む領主館の遺構(ポンメイ・ナクツァン)
東京文化財研究所では、平成24(2012)年以来、ブータン内務省文化・国語振興局(DCDD)と協働して、同国の伝統的民家建築に関する調査研究を継続しています。同局では、従来は法的保護の枠外に置かれてきた伝統的民家を文化遺産として位置づけ、適切な保存と活用を図るための施策を進めており、当研究所はこれを研究・技術面から支援しています。
今年度第1回目の現地調査を5月11日~23日にかけて行いました。当研究所職員3名に外部専門家2名を加えた5名を日本から派遣し、DCDD職員2名とともに、おもにタシガン・タシヤンツェの東部2県における石造民家調査を実施しました。
今回対象とした地域は、昨年の同時期に既に訪問しており、その際に調査した3集落で継続調査を行ったほか、新たに3つの集落で調査を行いました。
最初に訪れたタシヤンツェ県キニ集落では既調査3棟の補足と新規2棟を合わせて同集落内でとくに古いとみられる民家全てについて実測や家人への聞き取りを含む詳細調査を完了しました。
次に、タシガン県メラ郡のメラ、ゲンゴ両集落では、補足1棟、新規6棟の調査を行いました。いずれも妻入の平屋で、小屋裏の正面側一部を木造外壁の居室とするものが多く、移牧生活を営む少数民族が暮らす当地固有の民家形式です。このような地域色の強い建物の分布を調査した結果、メラ集落全体で67棟を確認でき、とくに集落中心域では棟数の半分ほどを占めることがわかりました。
その後、同じ民族が暮らす同県サクテン郡を初訪問し、同様の形式の民家がここにも所在することを確認しましたが、宅地を石塀や門で囲む家がみられるなど、集落景観の印象はかなり異なっています。隣接するサクテン、テンマ両村で計5棟を詳細調査し、純木造の小規模民家や製粉用の水車小屋なども含む、貴重な事例を収集することができました。同じ民族の生活圏は隣接するインド北東部に跨っていますが、その地域にも同様の民家がみられるとの情報を得ており、大いに興味を惹かれます。
このほか、同県ポンメイ村で領主層の古民家2棟を調査しましたが、どちらも無住でうち1棟は石壁が大きく変形するなど荒廃が進み、かなり危険な状態でした。地方の過疎化に伴って今後こうしたケースが急速に増加することが懸念され、すぐに保存の策を講じることも現実には難しいとはいえ、まずは古民家の所在と現状の把握および記録が急務と言えます。
本調査は、科学研究費助成金基盤研究(B)「ブータンにおける伝統的石造民家の建築的特徴の解明と文化遺産保護手法への応用」(研究代表者 文化遺産国際協力センター長・友田正彦)により実施しました。
学会のプログラム
会場「フリーニョの食堂」の様子
ペルジーノ(本名:ピエトロ・ヴァンヌッチ)は、イタリアのルネサンス期を代表する画家のひとりです。バチカンのシスティーナ礼拝堂にも壁画を描くなど数多くの芸術作品を残し、若きラファエロの師でもあった彼は、「神のごとき画家」として賞賛されました。そんなペルジーノがこの世を去ってから、令和5(2023)年は没後500年にあたり、イタリア国内外で数多くの展覧会やシンポジウムが開催されました。
この流れを汲み、東京文化財研究所は、エリオ・コンティ歴史学協会、イタリア国立研究会議-文化遺産科学研究所、文化省フィレンツェ美術監督局、南スイス応用科学芸術大学と共催で、フィレンツェの「フリーニョの食堂」を会場とする国際学術会議『ペルジーノとフィレンツェ』を令和6(2024)年5月14日と15日の2日間にわたり開催しました。美術史学や歴史学、文化財保存学などの分野やから専門家が集まったこの会議は、ペルジーノに関連する研究発表を通じて改めてこの偉大なる画家の価値を見つめ直そうとするものです。プログラムの中では、フィレンツェに残る2つの壁画作品を対象にした学際的技術研究についても発表を行い、今後の保存修復や維持管理のあり方について議論しました。
今後は、会場となったフリーニョの食堂にペルジーノが描いた最後の晩餐を対象に、科学的な調査等を通じ、現地専門家と協力しながら、今後のより良い保存のあり方について研究を進めていきます。