研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


文化財(美術工芸品)の修理記録および修理記録データベースの公開について―令和7年度第1回文化財情報資料部研究会の開催

データベース間のリレーションシップ

 東京文化財研究所は、令和4(2022)年度より文化庁が進める「文化財の匠プロジェクト」の一環である「美術工芸品修理のための用具・原材料と生産技術の保護・育成等促進事業」に携わっております。本事業で行っている文化財の修理記録データベースの公開については既にご報告している通りですが(https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/2391276.html)、公開に引き続いて、令和7(2025)年4月17日に本データベースに関する研究会を行いました。
 研究会では、データベース構築の実務にあたった小山田智寛(東京文化財研究所 主任研究員)、山永尚美(東京文化財研究所 アソシエイトフェロー)、田良島哲(東京文化財研究所 客員研究員)より、本データベースの作業フローや構成、典拠となる資料の現状や国指定文化財の修理記録の公文書としての位置づけ、そして今後の運用について報告いたしました。続けて行われたディスカッションでは、従来の博物館や美術館等の収蔵品のデータベースと修理記録の関係や情報を取集する範囲等、報告内容に関する質疑にとどまらず様々な問題提起が行われました。
 文化財の修理という行為に対して、経年劣化や何らかの理由による損傷に対してやむを得ず行う行為という印象が持たれていることは否定できません。そのため、修理の仔細を伝える修理記録それ自体が表立って注目されることはありませんでした。しかしながら元来、文化財は適切な周期で修理しないと保存できないということや、過去の修理記録が未来の修理や文化財の保存のための大きな助けとなることは近年認識がひろがってきました。本データベースの公開をきっかけとして、文化財の修理記録についての議論や整理が進むことを期待いたします。


講演会・体験型イベント「バーレーンの歴史と文化」の開催

体験型イベントを視察するシェイク・ハリーファ文化古物局総裁
講演者

 令和7年(2025)年4月に大阪・関西万博が開幕しました。中東のバーレーンも、万博にパビリオンを出展しています。これにあわせパビリオンの総責任者であるバーレーン文化古物局総裁シェイク・ハリーファ王子が来日されました。
 東京文化財研究所は、長年、バーレーンにおいて文化遺産保護のための国際協力事業を行っています。シェイク・ハリーファ王子からの依頼もあり、この機会を生かして、より多くの方にバーレーンの文化遺産の魅力を知っていただくため、4月20日にバーレーン文化古物局と共催という形で、東京文化財研究所において講演会・体験型イベント「バーレーンの歴史と文化」を開催しました。
 バーレーンや日本の専門家、古墳の伝道師まりこふんさんらが講演を行ったほか、来場者にはVRゴーグルを着用して遺跡の内部を探索していただくなど、各種のXRコンテンツを通じてバーレーンの歴史と文化を楽しんでいただきました。


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