研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


7月施設見学(1)

実演記録室での説明(7月2日)

 武蔵野市社会教育関係団体老壮連合会「ハッピー76会」 計19名

 7月2日、文化財の保存・修復の現場を見学するために来訪。無形文化遺産部実演記録室、保存修復科学センター修復アトリエ及び同化学実験室を見学し、各担当者が業務内容について説明を行いました。


7月施設見学(2)

資料閲覧室での説明(7月5日)

 文化学園大学服装学部 計7名

 7月5日、文化財の保存・修復の現場を見学するために来訪。企画情報部資料閲覧室、無形文化遺産部実演記録室及び保存修復科学センター分析科学研究室を見学し、各担当者が業務内容について説明を行いました


7月施設見学(3)

生物実験室での説明(7月19日)

 独立行政法人国立文化財機構新任職員 計36名

 7月19日~20日、独立行政法人国立文化財機構新任職員研修会の一環として来訪。企画情報部資料閲覧室、無形文化遺産部実演記録室、保存修復科学センター生物実験室及び同分析科学研究室を見学し、各担当者が業務内容について説明を行いました。


7月施設見学(4)

化学実験室での説明(7月24日)

 参議院第三特別調査室 計4名

 7月24日、東京文化財研究所の視察のために来訪。企画情報部資料閲覧室、無形文化遺産部実演記録室及び保存修復科学センター化学実験室を見学し、各担当者が業務内容について説明を行いました。


7月施設見学(5)

X線撮影室での説明(7月31日)

 文部科学省主催「放射線等に関する課題研究活動の支援」参加校の高校生 計35名

 7月31日、文化財におけるX線の利用及び文化財の化学分析手法について見学するために来訪。保存修復科学センターX線撮影室、分析科学研究室及び電子顕微鏡室を見学し、各担当者が業務内容について説明を行いました。


韓国国立文化財研究所との第二次研究交流

狂言師野村万作師へのインタビュー

 昨年11月の調印により、韓国文化財研究所との第2次の研究交流が始まりました。5月に、無形文化財研究室の高桑が韓国で調査を行いましたが、韓国文化財研究所から李明珍研究員が7月に来日し、1ヶ月間、狂言について調査を行いました。
 韓国では、無形文化財のありかたが日本とは異なり、日本のように重要無形文化財と重要無形民俗文化財には分かれていません。芸能に関しては、重要無形民俗文化財に相当するものがほとんどですし、伝承のあるべき姿についての基本的な考え方も異なります。芸能や制度の比較をおこなう際には、その相違をふまえる必要があるのですが、今回は、和泉流の狂言師にインタビューをおこないながら、日本での伝承のあり方について、認識を深めました。


「博物館・美術館等保存担当学芸員研修」の開催

文化財害虫同定実習の様子

 表題の研修は、文化財保存に必要な知識と技術をその任にあたる学芸員に伝えることを目的としています。7月9日より2週間開催した今年度の研修には、全国より30名の学芸員や行政担当者が参加しました。本研修は主に、(1)自然科学に立脚した保存環境に関する項目、(2)文化財の種類ごとの劣化要因とその防止対策に関する項目の2つの柱から講義や実習カリキュラムが構成されています。
 保存環境実習を実地で応用する「ケーススタディ」は国立歴史民俗博物館のご厚意により、同館で行いました。参加者が8つのグループに分かれて、それぞれが設定した温湿度や照度などの実地調査と評価を行い、翌日にその結果を発表しました。
 本研修参加者には、勤務館のみならず、地域の文化財保存における中核的存在となることを期待しております。募集要項は毎年2月頃、各都道府県教育委員会を通じて各施設に配布しておりますので、ぜひとも参加をご検討下さい。


ワークショップ「日本の紙本・絹本文化財の保存修復」の開催

基礎編における日本画制作技法のデモンストレーション
応用編における掛軸応急修理のデモンストレーション

 本ワークショップは在外日本古美術品保存修復協力事業の一環として毎年開催しています。本年度は7月11~13日の期間で基礎編「Japanese paper and silk cultural properties」を、16~20日の期間で応用編「Restoration of Japanese hanging scroll」をベルリン博物館群アジア美術館で行いました。
 基礎編では、制作、表具、展示、鑑賞という実際に文化財が私たちの目に触れるまでの過程に倣い、原材料としての紙・糊・膠・絵具、書画の制作技法、表具文化、取扱いまでの講義、デモンストレーション、実習を行いました。
 応用編では装潢修理技術による掛軸の修復に関して、実習を中心にワークショップを行いました。何層もの紙や裂から成る掛軸の構造、掛軸修復のための診断、伝統的な刷毛や刃物の取り扱、応急修理などに焦点を当てました。
 近年、日本の装潢修理技術が海外で認められ、海外の絵画、書籍などにも応用されるようになって参りました。しかし、海外の多くの修復技術者は、文献あるいは人伝に学んでいるのが現状です。本ワークショップを通して、一人でも多くの海外の修復技術者に本場の材料と技術を理解する機会を提供していきたいと考えています。


カンボジア・タネイ遺跡における建築測量研修

トータルステーション操作方法の実習
遺構実測の様子

 カンボジア政府アンコール地域遺跡整備機構(アプサラ機構)との協力協定に基づく新規の人材育成プロジェクトとして、アンコール遺跡群内のタネイ遺跡における建築測量研修を開始しました。本研修は、GPSとトータルステーションを用いた遺構実測と、取得したデータをCADに移行して行う図化作業までの一連の基本的手順をカンボジア人スタッフに習得してもらうことを目的とするもので、現場および室内での実習と講義を組み合わせたトレーニングコースを準備しています。来年度にかけて全四回を実施予定の研修の初回となる今回は、7月30日から8月3日までの5日間にわたり行われ、アプサラ機構のほか、プレアヴィヒア機構、JASAチーム等から建築及び考古を専門とする若手・中堅スタッフが計12名参加しました。研修生たちは技術を習得しようと皆熱心に取り組んでおり、当面は遺跡全体の現状平面図を完成することを目標にしています。


第1回ASEAN+3文化協力ネットワーク会合

会議集合写真
会議の様子

 フィリピンのボホール島で2012年7月20日から23日に開催された第1回ASEAN+3文化協力ネットワーク会合(Meeting of the ASEAN Plus Three Cultural Cooperation Network, 通称APTCCN)に、文化庁からの依頼により参加しました。ASEAN諸国及び中韓の文化行政担当官公庁と各国の文化遺産保護及び文化事業全般について情報交換と、ASEAN諸国の文化遺産保護支援のため資するための情報収集を行いました。昨年までは、東アジア文化遺産ネットワーク(Networking of East Asia Culture Heritage, 通称NEACH)と呼ばれていましたが、今後の五カ年計画に、1.無形、有形分野での専門家のネットワーク構築を通じての文化分野での地域間協力の強化、2.ASEAN+日中韓における固有のアイデンティティの発展、3.文化遺産マネジメント、文化分野における人材育成、中小規模の文化企業の発展における共通認識の必要、といったより広い課題が含まれたことにより、会議名称の変更がありました。
 2013年は、ASEAN日本交流40周年記念にあたります。ASEAN諸国と日本の関係性を深めるうえでも、この会合の重要性は今後、より増加していくと考えられます。


to page top