研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


2月施設訪問

 ユネスコ国内委員会関係者ほか6名
 2月8日に、日本ユネスコ国内委員会の主催する研修事業にて招へいされた、中国・韓国・タイ・カンボジア・マレーシア各国のユネスコ国内委員会関係者が、無形文化遺産に係る当研究所の取り組みについて視察のため来訪、地階無形文化遺産部実演記録室、4階文化遺産国際協力センター、2階企画情報部資料閲覧室および1階ロビー企画展示を見学し、それぞれの担当者が説明及び質疑応答を行いました。


黒田記念館のホームページ(フランス語版)の新設

 今年2月、当研究所は黒田記念館のホームページ(フランス語版)
http://www.tobunken.go.jp/kuroda/index_f.html
を新設しました。その内容は日本語のページとほぼ同じで、「黒田清輝について」「公開日と交通案内」「黒田清輝作品一覧」などから構成されています。黒田記念館のホームページの外国語版としては英語・中国語・ハングルに続く四つ目です。
 1884年(明治17)、黒田清輝は法律を学ぶためにフランスに渡りましたが、2年後、絵画に転向し、画家としての人生を歩むようになりました。1890年から1893年の帰国までの間、黒田清輝はしばしばグレー・シュル・ロワンという小村に滞在し、数々の作品を描いています。
 このように日本の近代洋画の父とよばれた黒田清輝が、フランスとたいへん縁の深い画家であったことを、黒田記念館のホームページ(フランス語版)を通して、フランスはもちろん、フランス語圏の方々にご理解いただければ幸いです。


研究会「セインズベリー日本藝術研究所と英国の文化財アーカイブ」の開催

ディスカッションの様子

 セインズベリー日本藝術研究所は1999年に英国東部のノリッジに設立され、日本の芸術文化の研究拠点として積極的な活動を展開しています。また同研究所のリサ・セインズベリー図書館は日本の芸術文化に関する図書や資料を収蔵し、その中には陶芸家バーナード・リーチや美術史研究者柳澤孝の旧蔵書も含まれ、とくに柳澤の蔵書については彼女の勤務先であった東京文化財研究所も深い縁があります。2月25日に東京文化財研究所企画情報部、アート・ドキュメンテーション学会の共催で、同図書館司書の平野明氏をお招きし、研究会「セインズベリー日本藝術研究所と英国の文化財アーカイブ」を東京文化財研究所セミナー室にて行いました。平野氏の報告はセインズベリー日本藝術研究所の紹介から英国、さらにはヨーロッパにおける日本研究のネットワークに及ぶものでした。またディスカッションでは、同研究所を拠点に研究をされた経験をもつ森下正昭氏(東京文化財研究所企画情報部客員研究員)と出光佐千子氏(出光美術館学芸員)がパネラーとして加わり、海外での日本美術研究の実体験やヨーロッパでの現代美術をめぐるアーカイブの現状について話題を拡げていただきました。フロアも交えたディスカッションの中で、日本の大学や美術館・博物館の紀要論文や展覧会カタログの閲覧が海外では難しいことが挙げられ、その電子化や国際的な連携協力といった現実的な問題をあらためて認識する機会ともなりました。


アジア太平洋諸国における無形文化遺産保護状況調査

ブータン染織博物館での染織技術伝承活動の様子
トンガ教育大学での伝承活動(カバの儀式)
トンガ教育大学での伝承活動(タパ・クロスの製作)

 無形文化遺産部では、ユネスコの無形文化遺産条約の枠組みにおける無形文化遺産の保護状況についてアジア太平洋諸国において調査を行っています。2月には、タイ、ブータン、太平洋諸国(サモア、トンガ、ニュージーランド、フィジー、パラオ)にミッションを派遣し、無形文化遺産関連の政府担当者や関係機関担当者等とヒアリングと意見交換を行いました。タイは条約批准に向けて無形文化遺産保護における国内体制を強化しており、ブータンでは条約批准後に無形文化遺産の記録やデータベース作成にとりかかり、国内法のドラフト準備に入っています。太平洋諸国は無形文化遺産条約の締結に熱心になっていますが、条約実施のための国内体制の整備に大きな課題を残しています。条約下の無形文化遺産保護に関する調査研究分野において、アジア太平洋諸国ではどんな課題があり交流や協力ができるか、引き続き調査を続けていく予定です。


東大寺法華堂の常時微動調査

東大寺法華堂建物の常時微動調査(強制加振)

 東京文化財研究所では、文化財の防災計画に関する調査研究の一環として「塑造・乾漆造仏像群の地震対策に関する研究」を進めています。現在調査を実施している東大寺法華堂においては、須弥壇及び建物の揺れ方が把握できることで、万が一強い揺れが観測されたときに、仏像群がどのように揺れるかを推測するこ とができます。
 そこで私たちは三重大学などの協力を得て、法華堂建物および須弥壇の常時微動の計測を実施しました。これから計測結果を解析することで、法華堂建物およ び須弥壇の振動特性や耐震性を評価するとともに、仏像群の地震対策に役立てていきたいと考えています。


ユネスコ文化遺産保存日本信託基金による「中央アジア諸国の文化遺産のドキュメンテーション」プロジェクト~トルクメニスタン~

歴史研究所 遺物・アーカイブ保管室
アナウ遺跡、モスク跡(15世紀)
メルブ遺跡出土仏像(5世紀、国立博物館展示)

 文化遺産国際協力センターでは、ドキュメンテーション・プロジェクト(1月活動報告参照)の実施に先立って、1月の中央アジア諸国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタン、タジキスタン)での関係者協議に続き、同じくユネスコの要請による準備ミッションを2 月14 日~18 日にかけてトルクメニスタンへ派遣しました。その主な目的は、本プロジェクトでの同国における活動内容の検討、トルクメニスタン側の研究体制やアーカイブ保管状況の確認などでした。
 同国側の関係者と今後の事業の方向性や具体的な実施内容について協議を行ったほか、「シルクロード」世界遺産登録の候補遺跡の1 つであるアナウや、古代トルクメニスタンの至宝を数多く所蔵する国立博物館なども訪問しました。トルクメニスタンにはゾロアスター教の遺跡や現在確認されている中では最も西方に位置する仏教遺跡などがあり、多種多様な文化の足跡を辿ることができます。この地は、まさにシルクロードを代表するような文化遺産の宝庫といえます。
 今後も、トルクメニスタンを含む中央アジアの文化遺産に関する研究や人材育成・技術移転などに積極的に取り組んでいく予定です。


文化遺産国際協力コンソーシアム協力相手国調査:ブータン

寺院風景
国立図書館における経典修復作業
ジグメ・ティンレイ首相表敬

 文化遺産国際協力コンソーシアムでは、2月14日から23日までブータンでの協力相手国調査を実施しました。
 本調査では、同国に対する文化遺産保護分野での協力の可能性を探ることを目的に、ブータン人にとっての文化遺産の概念から、法制度や技術面における保護の現状、国際協力の状況、協力ニーズに至る多方面の情報収集および関係機関との意見交換等を行いました。
 敬虔な仏教国ブータンでは、文化遺産はまさに人々の日常生活とともに息づいています。伝統文化の継承発展を国是とし、国情にふさわしい文化遺産保護のあり方を模索している彼等の真摯な努力を目の当たりにするほどに、日本として今後どのような協力が望まれるか、慎重にそして着実に検討する必要性を強く感じています。


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