研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS
(東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。
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平等院では、平成15年から20年までの間、鳳凰堂の平成大修理が行われ、阿弥陀如来坐像、および、その光背・台座等を境内の特設工房に遷されました。これを機に、平成16・17年に平等院のご理解とご協力のもとに、仏後壁前面画の詳細な光学調査を実施し、高精細デジタル撮影技術を駆使して詳細に壁画の現状を記録することができました。その成果報告として2月26日に『平等院鳳凰堂仏後壁調査資料目録―近赤外線画像編』を刊行いたしました。本書は昨年度刊行の『平等院鳳凰堂仏後壁調査資料目録―カラー画像編』に続くものです。周知の通り、平等院鳳凰堂の仏後壁前面に描かれた板絵は、普段、本尊・阿弥陀如来像の背後に位置するため、画面の全貌を詳細に把握することは容易なことではありません。本書はこれからの平等院鳳凰堂仏後壁前面画の研究のとどまらず、広く平安仏画の研究に大いに活用されることになるものと思われます。なお、来年度は『平等院鳳凰堂仏後壁調査資料目録―蛍光線画像編』の刊行を予定しています。
『“オリジナル”の行方―文化財を伝えるために』表紙
昨年度に東京文化財研究所は、第32回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会「“オリジナル”の行方―文化財アーカイブ構築のために」を開催しましたが、まる一年の編集期間を経て、このたび、その報告書を刊行する運びとなりました。国内外の25名の研究者による発表と討論を収録した同書は、日本・東洋の美術を中心に西洋の美学や現代美術、無形文化財をも視野に入れ、“オリジナル”の姿を志向しつつ、いかに文化財を伝えるべきかを探る内容となっています。発表の各タイトルについては、企画情報部刊行物のページをご覧ください。
http://www.tobunken.go.jp/~joho/japanese/publication/book/report_sympo32th.html
有名な北斎の《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》を左右反転させた表紙の作品は、同研究集会のPRイメージにも使わせていただいた現代美術家、福田美蘭氏によるものです。同書は『“オリジナル”の行方―文化財を伝えるために』のタイトルで、平凡社より市販されています。
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/frame.cgi?page=newbooks.html
『春日権現験記絵披見台 共同研究調査報告書』表紙
特別陳列「おん祭と春日信仰の美術」において、「春日権現験記絵披見台」の前で解説を行う奈良国立博物館研究員・清水健氏
東京文化財研究所企画情報部では、研究プロジェクト〈高精細デジタル画像の応用に関する調査研究〉の一環として、奈良国立博物館との共同研究を実施しています。平成22年3月には、「春日権現験記絵披見台」(奈良・春日大社蔵)の報告書を刊行いたしました。本作品は、縦約42㎝の6枚折りの屏風装の画面に、金銀の泥、切箔を用いて、春日大社の境内の情景が描かれています。この作品はかねてより紙本屏風の古例と見なされることや、14世紀の金銀泥絵の貴重な遺例としても、注目されていました。今回の共同研究調査で撮影した蛍光画像では、肉眼では確認しづらい図様や細部の表現を認識でき、今後の景物画、金銀泥絵研究において、重要な研究資料となることが期待されます。また報告書刊行に先立ち、2009年12月8日~2010年1月17日に奈良国立博物館で開催された特別陳列「おん祭と春日信仰の美術」において、本作品が出陳されるのにあわせて、この調査で撮影したカラー画像と蛍光画像をパネルとして対比的に展示し、一部成果公表を行いました。
当研究所の刊行物『日本美術年鑑』(年刊)では、当該年に亡くなられた美術家及び美術関係者の方々についてまとめた記事を、物故者の欄に掲載しています。このたび、創刊号の『日本美術年鑑 昭和11年版』から『日本美術年鑑 平成6年版』までの51冊に掲載した物故記事2,104件を再編集し、ホームページの出版&デジタルアーカイブのコーナーで公開を始めました。記事ではその人物の生没年をはじめとして、略歴、著作目録などを紹介しております。現在1935年から1973年までの物故記事がご覧いただけますが、1974年以降の物故記事についても順次公開の予定です。なおホームページの研究資料検索システムのコーナーの美術家・美術関係者資料データベースで人名を検索していただきますと物故日が確認できますので、あわせてご利用ください。
http://www.tobunken.go.jp/materials/bukko
無形文化遺産部では1月14日に当研究所セミナー室にて、「アジア太平洋諸国における保護措置の現状と課題」と題して、国内外の11人の専門家を交えてシンポジウムを行いました。その報告書をこのほど刊行しました。PDF版は以下のリンクでご覧になれます。
http://www.tobunken.go.jp/~geino/ISSICH/IS2010.html
『保存科学』49号
東京文化財研究所保存修復科学センター・文化遺産国際協力センターの研究紀要『保存科学』の最新号が、平成22年3月31日付けで刊行されました。高松塚古墳・キトラ古墳の保存に関する研究情報、その他保存科学に関する基礎研究や調査結果など、当所で実施している各種プロジェクトの最新の研究成果が発表・報告されています。ホームページから全文(PDF版)をお読みいただけますので、ぜひご利用ください。(http://www.tobunken.go.jp/~hozon/pdf/49/MOKUZI49.html)
臼杵磨崖仏周辺岩盤の樹脂耐候性試験
保存修復科学センターは、大韓民国・国立文化財研究所保存科学研究室と「文化財における環境汚染の影響と修復技術の開発研究」を進めております。共同研究では、相互の研究サイトで共同調査を行うとともに、年1回の研究会を持ち回りで開催し、意見交換を行っております。
今年度の研究会は、平成22年3月18日、東京文化財研究所地階会議室で開催しました。韓国から国立文化財研究所および公州大学校の研究者にご参加頂き、日本および韓国の研究者による発表および議論を行いました。研究発表は主に石造文化財の保存修復に関するものでしたが、今回は日韓の研究者による共同発表の成果が目立つようになり、より緊密な関係が築けるようになってまいりました。
今後もこのような形での研究交流を進めてゆき、両国の文化財保存修復の発展に尽くしてゆきたいと考えております。
討論の様子
参加者記念撮影
「東アジア地域の文化遺産―文化遺産保護国際協力活動を通じて我々は何を発見し共有しうるか―」と題して、2010年3月4日-6日、東京文化財研究所を会場としてアジア文化遺産国際会議を開催しました。中国文化遺産研究院、韓国国立文化財研究所、中国敦煌研究院、ユネスコ北京オフィス、ユネスコ・アジア太平洋地区トレーニング研究センター、奈良文化財研究所、東京文化財研究から延べ63名の文化遺産保護の専門家が集まり、国際協力による文化遺産保護活動の現状と将来について話し合いました。研究機関はどのような国際協力を行っていくことができるのか。各研究所で実施されてきた共同研究と事業、相互の人材育成、文化遺産のドキュメンテーションの標準化など、多岐に渡る経験と情報を共有できました。このような場において20時間以上の密な意見交換がくりひろげられることは初めてで、各研究所間の関係を深めることができました。さらには、今後のプロジェクト立案と具体的な成果へつなげるスタートを切ったといえましょう。
処置前
研修生による処置後(クリーニング、充填)
平成22年2月27日から3月10日まで、文化庁委託文化遺産国際協力拠点交流事業の一環として「タジキスタン国立古代博物館が所蔵する壁画断片の保存修復」の第7次ミッションを実施しました。本事業の目的は、タジキスタンにおいて壁画断片の保存修復作業を行う専門家を育成することにあります。
第7次ミッションでは、壁画断片の欠損部分を充填材で埋める作業を日本人専門家の指導のもとで行いました。タジキスタン北部のカライ・カフカハI遺跡から出土した壁画断片は、火災による被害を受け、表面や下塗り層の色味が断片によって異なります。そのため、断片全体の色味を観察したうえで、充填材の色味を断片ごとに決定しなければなりません。研修生は、繰り返しサンプルを作成し、次第に適切な色味と堅さの充填材を作る感覚をつかんできたようです。
来年度は、壁画断片を新しい支持体に設置する作業(マウント)について研修を行っていく予定です。
モンゴル・ユネスコ国内委員会関係者および文化遺産センター長との情報交換
東京文化財研究所は文化遺産国際協力拠点交流事業として、関係機関および専門家との連携、文化遺産国際協力コンソーシアムの協力により、モンゴルで木造建造物の修理、石碑・岩画の保存に関する研修を行っています。3月16日~18日、相手先であるウランバートルの教育・文化・科学省文化芸術局とモンゴル文化遺産センターで、昨夏に行った研修と関連調査の成果報告、次年度の活動方針について協議しました。成果に対するモンゴル側の満足は大きく、また今後の活動内容の具体的な提案から、期待の高さを実感しました。また、関連調査として、モンゴル・ユネスコ国内委員会委員長と面会、一覧表に登録済みの文化遺産の保護の方針や、今後登録を申請する文化遺産など、世界遺産に関する取り組みについて伺いました。木造建造物修理研修を行っているアマルバヤスガラント寺院は世界遺産暫定一覧表に登録されており、今後の展開が期待されます。
ユネスコ国内委員会関係者ほか6名
2月8日に、日本ユネスコ国内委員会の主催する研修事業にて招へいされた、中国・韓国・タイ・カンボジア・マレーシア各国のユネスコ国内委員会関係者が、無形文化遺産に係る当研究所の取り組みについて視察のため来訪、地階無形文化遺産部実演記録室、4階文化遺産国際協力センター、2階企画情報部資料閲覧室および1階ロビー企画展示を見学し、それぞれの担当者が説明及び質疑応答を行いました。
今年2月、当研究所は黒田記念館のホームページ(フランス語版)
http://www.tobunken.go.jp/kuroda/index_f.html
を新設しました。その内容は日本語のページとほぼ同じで、「黒田清輝について」「公開日と交通案内」「黒田清輝作品一覧」などから構成されています。黒田記念館のホームページの外国語版としては英語・中国語・ハングルに続く四つ目です。
1884年(明治17)、黒田清輝は法律を学ぶためにフランスに渡りましたが、2年後、絵画に転向し、画家としての人生を歩むようになりました。1890年から1893年の帰国までの間、黒田清輝はしばしばグレー・シュル・ロワンという小村に滞在し、数々の作品を描いています。
このように日本の近代洋画の父とよばれた黒田清輝が、フランスとたいへん縁の深い画家であったことを、黒田記念館のホームページ(フランス語版)を通して、フランスはもちろん、フランス語圏の方々にご理解いただければ幸いです。
ディスカッションの様子
セインズベリー日本藝術研究所は1999年に英国東部のノリッジに設立され、日本の芸術文化の研究拠点として積極的な活動を展開しています。また同研究所のリサ・セインズベリー図書館は日本の芸術文化に関する図書や資料を収蔵し、その中には陶芸家バーナード・リーチや美術史研究者柳澤孝の旧蔵書も含まれ、とくに柳澤の蔵書については彼女の勤務先であった東京文化財研究所も深い縁があります。2月25日に東京文化財研究所企画情報部、アート・ドキュメンテーション学会の共催で、同図書館司書の平野明氏をお招きし、研究会「セインズベリー日本藝術研究所と英国の文化財アーカイブ」を東京文化財研究所セミナー室にて行いました。平野氏の報告はセインズベリー日本藝術研究所の紹介から英国、さらにはヨーロッパにおける日本研究のネットワークに及ぶものでした。またディスカッションでは、同研究所を拠点に研究をされた経験をもつ森下正昭氏(東京文化財研究所企画情報部客員研究員)と出光佐千子氏(出光美術館学芸員)がパネラーとして加わり、海外での日本美術研究の実体験やヨーロッパでの現代美術をめぐるアーカイブの現状について話題を拡げていただきました。フロアも交えたディスカッションの中で、日本の大学や美術館・博物館の紀要論文や展覧会カタログの閲覧が海外では難しいことが挙げられ、その電子化や国際的な連携協力といった現実的な問題をあらためて認識する機会ともなりました。
ブータン染織博物館での染織技術伝承活動の様子
トンガ教育大学での伝承活動(カバの儀式)
トンガ教育大学での伝承活動(タパ・クロスの製作)
無形文化遺産部では、ユネスコの無形文化遺産条約の枠組みにおける無形文化遺産の保護状況についてアジア太平洋諸国において調査を行っています。2月には、タイ、ブータン、太平洋諸国(サモア、トンガ、ニュージーランド、フィジー、パラオ)にミッションを派遣し、無形文化遺産関連の政府担当者や関係機関担当者等とヒアリングと意見交換を行いました。タイは条約批准に向けて無形文化遺産保護における国内体制を強化しており、ブータンでは条約批准後に無形文化遺産の記録やデータベース作成にとりかかり、国内法のドラフト準備に入っています。太平洋諸国は無形文化遺産条約の締結に熱心になっていますが、条約実施のための国内体制の整備に大きな課題を残しています。条約下の無形文化遺産保護に関する調査研究分野において、アジア太平洋諸国ではどんな課題があり交流や協力ができるか、引き続き調査を続けていく予定です。
東大寺法華堂建物の常時微動調査(強制加振)
東京文化財研究所では、文化財の防災計画に関する調査研究の一環として「塑造・乾漆造仏像群の地震対策に関する研究」を進めています。現在調査を実施している東大寺法華堂においては、須弥壇及び建物の揺れ方が把握できることで、万が一強い揺れが観測されたときに、仏像群がどのように揺れるかを推測するこ とができます。
そこで私たちは三重大学などの協力を得て、法華堂建物および須弥壇の常時微動の計測を実施しました。これから計測結果を解析することで、法華堂建物およ び須弥壇の振動特性や耐震性を評価するとともに、仏像群の地震対策に役立てていきたいと考えています。
歴史研究所 遺物・アーカイブ保管室
アナウ遺跡、モスク跡(15世紀)
メルブ遺跡出土仏像(5世紀、国立博物館展示)
文化遺産国際協力センターでは、ドキュメンテーション・プロジェクト(1月活動報告参照)の実施に先立って、1月の中央アジア諸国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタン、タジキスタン)での関係者協議に続き、同じくユネスコの要請による準備ミッションを2 月14 日~18 日にかけてトルクメニスタンへ派遣しました。その主な目的は、本プロジェクトでの同国における活動内容の検討、トルクメニスタン側の研究体制やアーカイブ保管状況の確認などでした。
同国側の関係者と今後の事業の方向性や具体的な実施内容について協議を行ったほか、「シルクロード」世界遺産登録の候補遺跡の1 つであるアナウや、古代トルクメニスタンの至宝を数多く所蔵する国立博物館なども訪問しました。トルクメニスタンにはゾロアスター教の遺跡や現在確認されている中では最も西方に位置する仏教遺跡などがあり、多種多様な文化の足跡を辿ることができます。この地は、まさにシルクロードを代表するような文化遺産の宝庫といえます。
今後も、トルクメニスタンを含む中央アジアの文化遺産に関する研究や人材育成・技術移転などに積極的に取り組んでいく予定です。
寺院風景
国立図書館における経典修復作業
ジグメ・ティンレイ首相表敬
文化遺産国際協力コンソーシアムでは、2月14日から23日までブータンでの協力相手国調査を実施しました。
本調査では、同国に対する文化遺産保護分野での協力の可能性を探ることを目的に、ブータン人にとっての文化遺産の概念から、法制度や技術面における保護の現状、国際協力の状況、協力ニーズに至る多方面の情報収集および関係機関との意見交換等を行いました。
敬虔な仏教国ブータンでは、文化遺産はまさに人々の日常生活とともに息づいています。伝統文化の継承発展を国是とし、国情にふさわしい文化遺産保護のあり方を模索している彼等の真摯な努力を目の当たりにするほどに、日本として今後どのような協力が望まれるか、慎重にそして着実に検討する必要性を強く感じています。
消防本部(右から本部長:鈴木所長、副本部長:北出管理部長、中野副所長、手前は消防隊長:高栁管理室長)
救護者の搬送
消火器による放水体験と訓練参加者の様子
AEDの操作訓練の模様と、説明を真剣に聞き入る参加者
1月25日午前10時30分から当研究所で総合消防訓練が実施された。 この日は研究所3階の給湯室からの出火を想定。初期消火、通報、避難誘導、救護などを研究所の職員で構成する自衛消防隊を中心に訓練を行い、当日研究所に勤務する職員が多数参加した。
午前10時30分、所内に設置された火災警報機が鳴り、「火災が発生したので避難してください」の放送。自衛消防隊及び火災発見者が消火器による初期消火(模擬)を行い、119番通報(模擬)。職員を誘導し屋外に避難させた。
その間、消防本部、救護所を設置するとともに、自衛消防隊が、煙を吸って具合が悪くなり、逃げ遅れた職員1人を担架で避難させ、文化財(模擬)を搬出した。
鈴木所長からは、訓練における対応等への謝辞及び感想の後、明日の文化財防火デーは、文化財保護法の契機となった、法隆寺金堂壁画の焼失は原因不明のままであり、いつ、どこから出火するかわからないので、常日頃から気を引き締めてほしいとの講評があり、参加者は防災意識を高めていた。
避難訓練終了後、消火器の種類、取扱い方法の説明を受けた後、訓練用消火器を使用した訓練も行われ、「火事だ!」との発声とともに放水訓練を行った。
その後、研究所に設置されているAED(自動体外式除細動器)の取扱説明があり、AEDの取扱訓練を行った。参加者は真剣な表情でAEDを操作し、救命措置の重要性に対する関心の高さが感じられた。
研究所では、1月26日の「文化財防火デー」に合わせ、関連行事として毎年、消防訓練を行っている。
『東京文化財研究所七十五年史 本文編』
当研究所は、2006(平成18)年に創設から75周年を迎えたことを記念して、『東京文化財研究所七十五年史』を刊行すべく、編集をすすめて参りました。
このほど、当研究所の沿革と各部、センターの調査・研究、現況、関連資料等を記録した『本文編』を刊行することができました。(B5版、607ページ、2009年12月25日発行)一昨年3月には、創設以来の事業の記録と蓄積されてきた資料の一覧を掲載した『資料編』を刊行いたしました。つきましては、『資料編』と『本文編』をあわせて、当研究所の七十五年史とします。
編集にあたっては、各部、センターの編集委員が中心になりましたが、それだけではなく所内外の多くの機関、及び関係者に協力していただきました。ここに感謝の意を表したいとおもいます。
本書が、75年にわたる当研究所の歴史を振り返ることにとどまらず、その歴史を誇りとして共有し、同時に未来にわたる当研究所の活動のひとつの指針として、新たなる展望を開く契機になることを願っています。なお、本書は一部、中央公論美術出版社より市販されます。
協議会の様子
2010年に当研究所企画情報部の機関誌『美術研究』は、400号の刊行となります。また、星岡文化財団韓国美術研究所が発行する『美術史論壇』が、今年、30号を刊行することになっています。同研究所長の洪善杓梨花女子大学教授には、『美術研究』の海外編集委員を委嘱していることから、昨年来日の折に、両誌刊行の記念として共同でシンポジウムを開催しようと合意していました。
1月28日には、洪教授をはじめ、鄭干澤(東国大学校教授)、文貞姫(同研究所学術主任)、張辰城(ソウル大学助教授)、徐潤慶(同研究所専任研究員)の5名を迎えて、当部研究員とともにシンポジウムにむけた協議会を開催しました。
協議の結果、美術史における「評価」をテーマに揚げて、2011年2月下旬に東京(会場:当研究所)で、3月上旬にはソウル(会場:梨花女子大学)で開催することになりました。シンポジウムでは、基調報告(東京では洪教授、ソウルでは田中が報告します)にはじまり、当部研究員2名、韓国側2名の計4名による研究発表を両会場でおこない、総合討議をします。同じテーマのもと、そして同じ発表をするのですが、両国の研究者等の間での問題意識や考え方の違いが予想されることから、これによって今後、さらに相互理解が深まり、同時に両誌のさらなる協力関係を築いていくことを期待しています。