航空機保存に関する韓国人研究者との学術交流 —鹿児島県内の事例の視察—
令和8(2026)年度、東京文化財研究所保存科学研究センターでは航空機の保存に関する韓国との学術交流を進めています。令和8(2026)年6月には千葉研究員、川野邊名誉研究員と共同研究者らが韓国を訪れ、現地の取り組み事例を視察しました(https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/2527344.html)。これに続く形で、8月に韓国から戦争記念館のカン・ヒョンナム氏、ハンソ大学校のオ・スンジュン氏を日本にお招きし、鹿児島県内における航空機保存の現場をご紹介しました。
南九州市の知覧特攻平和会館では、南九州市指定文化財である陸軍四式戦闘機「疾風(1446号機)」の保存に向けた調査現場をご案内しました。この調査は、同館により平成28(2016)年から継続的に実施されているもので、東京文化財研究所も南九州市との覚書に基づき、共同で調査に当たっています
(参考:https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/995996.html、https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/1033881.html)。
この調査では、オリジナルパーツの残存状況や劣化状態の確認、また戦後にアメリカ軍や民間所有者等によって交換されたパーツの特定を通じて、機体の歴史的評価を深めるとともに、今後の保存に必要な情報を取得することを目的としています。作業は、知覧特攻平和会館の主導のもと、大戦機保存修復、エンジン修復、航空史、そして保存科学など多様な分野のスペシャリストによるチームで行われています。韓国では主に保存科学研究者が主導して作業が行われることが多いとのことで、多様なバックグラウンドを持ったメンバーが共同で作業に当たっていることに関心が寄せられました。
また、この度の視察では、知覧特攻平和会館に加え、以下の施設も訪れました。
南さつま市・万世特攻平和祈念館:海浜から引き揚げられた機体(零式水上偵察機)の保存・展示に関する現状と課題の共有
鹿屋市・鹿屋航空基地史料館:二式大型飛行艇や多数の自衛隊機など、主に屋外で展示・保管されている機体のメンテナンスに関する現状と課題の共有
これらの視察を通じ、韓国における航空機の調査・保存の取り組みなども踏まえながら、日韓双方の視点から活発な意見交換が行われました。
本交流事業では、来る11月にも両氏を日本にお招きし、関東近郊における航空機保存の取り組みをご紹介するほか、さらなる意見交換を重ねる予定です。東京文化財研究所では、今回の交流と調査で得られた知見を活かし、今後も国内外の専門機関と連携しながら、貴重な航空機遺産の保存・活用に向けた取り組みを進めてまいります。
末筆ながら、この度の視察にあたりご対応いただいた各機関の皆様へ改めて御礼申し上げます。
