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アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査XXI-中央伽藍前十字テラスの保存修復に向けた予備調査と「十字テラスの修復に向けた実践ワークショップ」の実施

ワークショップでのグループディスカッションの様子
棟飾りの一部

 東京文化財研究所とアンコール・シェムリアップ地域保存整備機構(APSARA国立機構)は、タネイ寺院遺跡における協力事業の一環として、タネイ遺跡中央伽藍の正面に位置する十字テラスの保存修復に向けた予備調査を継続しています。 これまでの調査から、シェムリアップ市内にあるアンコール保存事務所に保管されている彫像や欄干部材の中にタネイの十字テラスの構成部材が存在することが明らかとなっていました。そこで、アンコール保存事務所に保管されているタネイ由来の欄干部材と、十字テラスの周囲に散乱していた欄干部材を、それぞれデジタル3次元計測で記録し、デジタル空間上で部材の仮組みを試みることにしました。この作業は、令和8(2026)年1月21~22日に「十字テラスの修復に向けた実践ワークショップ」として実施し、APSARA国立機構、アンコール保存事務所、アンコール国立博物館、シェムリアップ州文化財課から計約20名が参加しました。2日間のワークショップでは、参加者が各自のスマートフォンにダウンロードした無料の3次元計測アプリを使ってアンコール保存事務所とタネイ遺跡現地にある部材をそれぞれ記録し、さらに、グループディスカッションとして、記録した3次元モデルを確認しながら、別々の場所にある部材がどのように接合できるかの検討を行いました。その結果、複数の部材を接合できる可能性がみえてきたことは、今回のワークショップの大きな成果となりました。 このほか1月末に現場で行った作業としては、十字テラス周囲の発掘区に残していた2か所のベルトを掘り下げました。十字テラスが接続する矩形テラスの東側前面付近では表層から屋根瓦の散布が確認されており、今回も多くの瓦片が出土しました。併せて、これまでの調査で出土した考古遺物の整理作業にも着手し、棟飾りや軒丸瓦などの屋根材を同定したほか、クメール陶器に典型的なバラスター壺や波状沈線文の施された黒釉陶器、複数の輸入陶磁器など、遺物のバリエーションが確認されました。今後さらに精査し、タネイ寺院遺跡における出土遺物の特徴を明らかにしていきます。


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