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日光東照宮下神庫での湿度制御温風処理の視察

日光東照宮下神庫(処理空間内部)
視察の様子

 令和8(2026)年8月17日~19日にかけて、彩色修理を終えた日光東照宮下神庫で実施された「湿度制御温風処理」の現地視察を行いました。
 湿度制御温風処理とは、文化財害虫を60℃程度の温風によって駆除する処理技術で木造建造物の柱や梁などの木材を対象に開発されました。
 処理中は昇温および降温の過程に応じて処理空間内の湿度を適切に制御し、木材の含水率を一定に維持することで木材の物性への影響を最小限に抑えながら、木材内部まで十分な温度上昇を図ることができます。
 従来、博物館資料や木造建造物をはじめとする文化財の殺虫処理にはガス燻蒸が広く用いられてきました。しかし、安全性や環境負荷への懸念から、その継続的な運用が難しくなりつつあります。そのため、湿度制御温風処理はガス燻蒸に代わる新たな文化財害虫の対策技術として導入や活用の幅を広げつつあります。
 これまでに、東京文化財研究所をはじめとする研究チームにより、実際の木造建造物を対象として検証処理が行われました。検証では、殺虫効果や建造物への影響に加え、処理時の騒音などの周辺環境への影響や消費電力についても検討が行われました。
 これらの検証を経て、湿度制御温風処理は、木造建造物への影響を抑えながら害虫を駆除できる実用的な処理技術として、文化財保存の現場で適用実績を重ねています。
 下神庫は、長年にわたり受け継がれてきた高度な建築装飾技術と伝統的な材料によって彩色や金具の修理が施され、壮麗な佇まいを取り戻していました。今回の処理は、その装飾修理後の状態で初めて処理が行われました。
 本事例を通じて、未彩色の状態のみならず、彩色修理後の状態における処理についても知見を蓄積し、保存修復の現場におけるさらなる適用に繋げていきたいと考えています。

(202608 / 佐藤嘉則, 仁木真奈美)