スタッコ装飾及び塑像に関する研究調査(その10)

ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡でのクリーニングテスト
ヴィッラ・ロマーナ・ディ・レアルモンテから出土したスタッコ装飾片

 文化遺産国際協力センターでは、令和3(2021)年度より、運営費交付金事業「文化遺産の保存修復技術に係る国際的研究」の一環として、スタッコ装飾および塑像に関する研究調査を進めています。

 ギリシャ・ローマ時代を中心とする考古遺跡の保存修復に関する研究を推進するため、令和8(2026)年9月9日から10月2日にかけてイタリアを訪問し、ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡をはじめ、シチリア島のセリヌンテおよびアグリジェントの考古学公園とその周辺に点在する考古遺跡において調査研究を実施しました。
 ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡では、東京大学を中心とする調査団によって発掘されたローマ時代の装飾門を対象に、過去の修復時に塗布された合成樹脂の除去方法について、効果的かつ適切な保存修復手法を検討するため、複数の条件を設定したクリーニング実験を実施しました。これにより、今後の処置方法の選定に向けた基礎的な知見を得ることができました。
 また、シチリア島では、パレルモ文化財監督局の協力のもと、各地の考古遺跡に残る、古代オリエントからギリシャ・ローマ時代にかけて制作されたスタッコ装飾を調査しました。その結果、時代や遺跡によって使用材料や制作技法に明確な違いが認められ、それらの特徴や変遷を解明するために必要な科学分析および検証実験の方向性を具体化することができました。さらに、関係機関との協議を通じて、本研究への理解と関心が一層深まり、今後の調査研究に向けた協力体制がより確固たるものとなりました。

 今後は、現地調査で得られた知見をもとに、科学分析と実験的検証を組み合わせ、スタッコ装飾の材料・技法とその歴史的変遷を明らかにするとともに、遺跡の環境や保存状態に応じた保存修復方法の確立を目指します。さらに、現地の関係機関との連携を継続・発展させ、文化遺産の長期的な保存と適切な維持管理に資する研究を進めていく予定です。

(202609 / 前川佳文)