東文研―SISJAC研究交流ワークショップの開催

ワークショップの様子 ※スクリーンショット

 令和8(2026)年9月25日、東京文化財研究所(以下、東文研)は、英国のセインズベリー日本藝術研究所(Sainsbury Institute for the Study of Japanese Arts and Cultures、以下SISJAC)との研究交流ワークショップをオンラインで初めて開催しました。
 英国ノリッチに所在するSISJACは、ヨーロッパにおける日本芸術文化研究の主要拠点の一つです。東文研では平成25(2013)年より同研究所との共同事業を継続しており、研究情報の共有に取り組むとともに、文化財情報資料部の研究員を毎年英国へ派遣し、講演や研究交流を行ってきました。
 これまでの交流は、主に東文研の研究員が英国で研究発表を行う形で進められてきました。そこで、令和7(2025)年12月に田代裕一朗と吉田暁子が訪英した際、SISJACの関係者との協議において、両機関の研究者が互いに研究成果を発表し、意見交換できる機会を設けることを提案しました。今回のワークショップは、この提案を具体化したものであり、従来の交流をより双方向的なものへと発展させるための新たな試みです。
 初回となる今回は、今後の継続的な開催を見据え、Microsoft Teamsを用いた小規模なオンライン形式で実施しました。冒頭では、SISJACのユージニア・ボグダノヴァ=クマー氏と東文研の田代が、それぞれの機関における近年の活動について紹介しました。
 続く研究発表では、SISJACのフェロー3名が報告を行いました。Claudia Zancan氏は「空間・文様・体験:壁画系装飾古墳への新しいアプローチ」、Jung-An Liu氏は「神話から帝国へ――八紘一宇の塔における図像伝統の重層と交錯」、Eve Kazuhara-Loh氏は「『植物性』の観点から見た田中一村の絵画」と題して発表し、それぞれ河野一隆氏(東京国立博物館)、坂口英伸氏(美術史研究者)、塩谷純(東文研)がコメンテーターを務めました。
 一方、東文研からは、田代が「立原正秋の文学世界と韓国陶磁」、月村紀乃が「美術作品の伝来研究―旧長尾美術館所蔵品を例として」と題して発表し、それぞれSol Jung氏(Independent Scholar and Curator, Norway)、植野哲也氏(林原美術館)がコメンテーターを務めました。
 各発表では、多様な研究テーマや方法論が紹介され、コメンテーターからも活発に質問や意見が寄せられました。専門分野の異なる研究者がそれぞれの視点から議論を交わすとともに、国内外の研究者が互いの研究活動に触れ、新たなつながりを築く機会となりました。ワークショップ終了後には、SISJAC側から、各研究発表や両機関の近年の研究活動について興味深く聞くことができたとの感想とともに、今後の持続的な開催を期待する声も寄せられました。
今回のワークショップは、これまで積み重ねてきたSISJACとの協力関係を基盤に、新たな研究交流の可能性を広げる第一歩となりました。文化財情報資料部では、今回の試行的な開催で得られた手応えをもとに、国内外の若手研究者をつなぐ場としても発展させながら、研究情報の共有と人的交流の両面からSISJACとの連携を深めていきたいと考えています。

(202609 / 田代裕一朗)