日光東照宮御仮殿鐘楼での湿度制御温風殺虫処理の視察

視察の様子
日光東照宮御仮殿鐘楼(処理空間内部)

 令和6(2024)年5月15日に、日光東照宮御仮殿鐘楼で開始した「湿度制御温風殺虫処理」の現地視察を行いました。湿度制御温風殺虫処理とは、木造建造物の柱、梁など木材を食害する害虫を高温(60℃程度)によって駆除する方法です。昇降温時に、木材の含水率が一定に保たれるように処理空間内の湿度を制御することで、木材の物性にほとんど影響を与えずに木材の内部まで温度を上げていくことが可能になります。従来のガス燻蒸による殺虫処理は、安全性や環境配慮の観点から継続が困難な状況にあるため、湿度制御温風殺虫処理はガス燻蒸に代わる新しい方法として期待されています。
 これまでに、日光社寺文化財保存会、京都大学、トータルシステム研究所、関西電力、KANSOテクノス、東京文化財研究所などからなる研究チームで実際の建造物を対象とした3度の検証処理を実施しました。殺虫効果や建造物への影響の評価に加え、騒音などの環境への影響や消費電力量などについても検討が行われ、湿度制御温風殺虫処理は実用可能な新しい木造建造物の殺虫処理法として確立されました。そして昨年、指定文化財として初めて輪王寺護法天堂にて殺虫処理が実施され、今回、指定文化財では2例目となる東照宮御仮殿鐘楼での処理が実施されました。今後は、本法が木造建造物の殺虫処理の新たなスタンダードとなるよう普及を進めていきたいと考えています。

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