第48回世界遺産委員会への参加
令和8(2026)年7月19日~29日、第48回世界遺産委員会が韓国・釜山で開かれ、東京文化財研究所から3名がオブザーバーとして参加しました。加えて、当研究所が事務局を務める文化遺産国際協力コンソーシアムが、その趣旨や活動、実績、展望を広報するためのサイドイベントを25日に開催し、事務局5名と地域分科会委員3名が参加しました。24日には「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群保存活用協議会主催のサイドイベントも開催され、「飛鳥・藤原の宮都」の登録審議にあわせて多くの関係者が会場に集まるなど、隣国開催の利点を活かし、例年に比べて日本からの参加者が目立つ委員会となりました。文化遺産国際協力コンソーシアム主催のサイドイベントの概要や当日の様子については、コンソーシアムのウェブサイトに掲載しています。ぜひご覧ください(https://www.jcic-heritage.jp/)。
今回、パレスチナやレバノンなど紛争地の緊急案件を含む25件が新規登録され、世界遺産の総数は1273件となりました。また、この両国やウクライナなどの6件が危機遺産一覧表に加えられるなど、武力紛争の影響を色濃く反映した決議がありました。わが国に関しては「飛鳥・藤原の宮都」が新規登録された一方、「明治日本の産業革命遺産」について関係締約国から展示解説の一層の充実が求められました。また、進化する世界遺産保護の考え方は遡及的に適用され、英国・ロンドンにあるバッファゾーンが未設定の文化遺産2件に関し、その環境に対する都市開発の悪影響と危機遺産一覧表への記載の可能性が議論されました。実際には、これらの危機遺産入りは回避されたものの、都市の中にある文化遺産の保全の課題はわが国にも当てはまります。
従来、世界遺産制度には5Cとよばれる五つの基本目標(信頼性・保存・能力開発・情報伝達・共同体)が設けられていますが、武力紛争や気候変動など国際社会が団結して取り組むべき六つ目のC(協力)を加える釜山宣言が満場一致で採択されました。このほか、遺産と真正性に関するナイロビ宣言については口承文化や精神性など非物質面の重要性が再確認されたものの、不動産を保全の対象とする世界遺産制度にどう反映させるかといった課題も浮き彫りになりました。こうした動静を考慮しつつ、今年度の世界遺産研究協議会では「地域の中の世界遺産」を取り上げ、引き続き情報発信に取り組んでいきます。
