アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査XXⅡ-中央伽藍前十字テラスの発掘調査と「十字テラスの修復に向けた実践ワークショップ」の実施
東京文化財研究所とアンコール・シェムリアップ地域保存整備機構(APSARA国立機構)は、タネイ寺院遺跡における協力事業の一環として、中央伽藍の正面に位置する十字テラスの保存修復に向けた調査を継続しています。
タネイの十字テラスの外装は、砂岩の舗石と、砂岩およびラテライトで築かれた側壁からなり、その内側は土を突き固めた盛土層で構成されています。このような内部盛土層の機能や構造的特性については未解明の部分が多く、その安定化をめぐってはアンコール遺跡内の他遺構の修復においても様々な手法が模索されてきました。
令和8(2026)年5月20日~6月21日の派遣では、盛土層を主体とする十字テラスの内部構造や建設過程を明らかにし、十字テラスの適切な修復手法を検討することを目的として、発掘調査と地盤工学調査を実施しました。
テラス内外の計4カ所で行った発掘調査からは、層位ごとに異なる種類の土を使い分けて内部盛土層が構成されている様子が確認されたほか、クメール寺院建築について従来知られているものとはやや異なる石造構築技法が本テラスに用いられていることや、樹木の根の侵入が側壁の変形に係わっていることなどが判明しました。さらに、隣接する矩形テラスとの建設工程に関してもいくつかの新たな手掛かりが得られました。
地盤工学調査は、東京大学生産技術研究所桑野玲子教授の指導のもと、「十字テラスの修復に向けた実践ワークショップ」の第二弾として行いました。 APSARA 国立機構からは3名が参加し、テラス内部の土層を対象とした現場での簡易動的コーン貫入試験や、採取試料に対する乾燥密度、粒度分布等の室内試験を実施しました。さらに、プノンペンにあるカンボジア工科大学を訪問し、三軸圧縮試験、透水試験を実施するための協議を行いました。
今後、これらの調査結果を元に、十字テラスの構造学的評価を行い、今後の適切な修復手法について APSARA国立機構側との議論を進めていきます。
