研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


無形文化遺産部公開学術講座「東大寺修二会(お水取り)の記録」

公開学術講座プログラム
対談の様子
展示会場の様子

 第6回無形文化遺産部公開学術講座が10月22日に東京国立博物館平成館大講堂で開催されました。
 今回の講座では、無形文化遺産部が所蔵する無形文化財関連の資料の中から、東大寺修二会(お水取り)の録音記録を取り上げました。1967年から継続的に行われた調査の過程で蓄積されてきた東大寺修二会の現地録音は、10インチのオープンリールだけでも約400本にも上る膨大なものです。1960年代から90年代にかけて修二会に参籠されていた橋本聖圓師(東大寺長老)と、調査で中心的な役割を果たされた佐藤道子氏(東京文化財研究所名誉研究員)との対談の合間に、そうした録音記録の一部を紹介しました。また、平成館小講堂では東大寺修二会に関連する珍しい資料の展示を併催しました。
 一般参加者は200人を超える盛況で、アンケートでは展示ともども大変な好評をいただきました。
 橋本聖圓師と佐藤道子氏の対談では非常に興味深いお話をうかがうことができました。今年度の無形文化遺産部の報告書に、その内容を掲載する予定です。

秋田県仙北市における茅葺き技術の調査

作業用の木製足場の組立(A家)
差し茅を行う職人(B家)

 10月中旬、秋田県仙北市で茅葺き技術の調査を行ないました。茅葺きはススキ、ヨシ、カリヤス等の植物材によって葺かれた屋根の総称で、民家や寺社建築の伝統的形態のひとつです。高度経済成長期以降、茅葺き屋根をめぐる技術・景観・文化は急速に失われており、高齢化にともなう職人の減少や茅材料の不足が衰退に拍車をかけています。
 調査では茅葺き職人の後継者育成や技術の記録保存等の事業を行っている「秋田茅葺き文化継承委員会」の案内により、職人への聞き取りと技術の実地調査を行ないました。茅葺き屋根を維持する技術には、大きくわけて「葺き替え」(茅を全面的に葺き替える技法)と「差し茅(さしがや)」(痛んだ茅を差し替える技法)がありますが、秋田を含む東北日本海側の茅屋根はそのほとんどが「差し茅」によって維持されるという点で、全国的にみても特徴的です。
 研究では差し茅技術の特徴を調査・記録していくと共に、これをひとつの民俗技術と捉え、その文化的意義を明らかにしていきたいと考えています。

国際研究集会「染織技術の伝統と継承―研究と保存修復の現状―」の開催

会場の様子

 第35回文化財の保存および修復に関する国際研究集会「染織技術の伝統と継承―研究と保存修復の現状―」を東京国立博物館平成館において、9月3日から5日の3日間開催しました。このシンポジウムでは、国内外から染織品制作の技術者、染織品修復技術者、学芸員、研究者など様々な立場の各専門家を招き、有形である染織品を「つくる」「まもる」「つたえる」といった無形の側面よりアプローチすることで、今後の「染織技術」研究の道筋を示すことを目的としました。そして、主催者としては、今日における染織品の制作や修復の際に直面する原材料・道具の問題、技術を次世代へと伝えていくための後継者養成をめぐるシステム、多角的な染織技術研究のあり方などについて、この機会に情報の共有化を図り、議論を深めることも意図しました。
 冒頭に行われた2本の基調講演では染織技術が時代により変化して然るべきものであることや、それぞれに時代により失われた技術が多くあるという染織技術に関する根本のテーマについて参加者との共有を図ることができました。これに続いて、「染織技術をまもる」「染織品保存修復の現状」「染織技術へのまなざし」「染織技術をつたえる」の計4セッションを設け、最後に総合討議が行われました。各セッションでは、技術者の立場からの染織技術継承に向けての提言や、修復技術に関する国外・国内の歴史や現状、染織技術研究に向けての国内外の染織品や関連資料の検討方法や、後継者育成についてなどいずれも興味深い報告が続きました。討議の中では、変化しながら受け継がれてきた染織技術を、現在どのように保護していくことができるかという問題や染織品修復技術の技術者側の抱える問題、そして、国内外の近代染織品収蔵の考え方の相違など、さらに議論が必要である項目が取り上げられました。このような多様な論点に対して具体的な解決策を議論する時間が不足したことなどの反省点もありますが、参加者からは、現在、染織技術保護が抱えている課題を共有する機会として、また、新たなネットワーク構築に向けて大いに有益であったとの好意的評価をいただくことができました。
 本研究集会の詳細な記録は、来年度、報告書として刊行する予定です。

佐賀県立博物館新収資料花鳥図螺鈿琵琶 銘「孝鳥絃」の調査

花鳥図螺鈿琵琶 銘「孝鳥絃」背面

 佐賀県立博物館に寄贈された花鳥図螺鈿琵琶 銘「孝鳥絃」の調査を、武蔵野音楽大学の薦田治子教授と一緒に行いました。これは、明国出身の武冨家に伝来したもので、大財聖堂を築いた武富廉齋(1638~1718)の父が清国の商人から購入し、廉齋が後水尾天皇の求めで御前演奏を行って「孝鳥弦」の名を下賜された、という伝えのある琵琶です。裏面に螺鈿の細工があり、徳川美術館の小池富雄氏が明時代の技法、と判定されましたが、従来知られていた明時代の琵琶よりは胴がふっくらした形態で、中国南部の南琵の系統を引く楽器と考えられます。日本で弾奏するために、中国琵琶特有の柱(ブリッジ)を表板からはずした可能性も考えられるので、今後、中国との比較研究を行って、さらに詳しく調査を行いたいと思います。

日韓無形文化遺産研究会の開催

ロビー展示「無形文化遺産の記録」展示を前に議論する日韓の研究員

 無形文化遺産部では、近年の世界的な無形文化遺産保護の気運の高まりに応じて、アジア地域を中心とした各国の関係機関との国際的な調査研究協力を積極的に進めています。その一環として、2008年には韓国国立文化財研究所無形文化財研究室との間に「無形文化遺産の保護に関する日韓研究交流」合意書を交わし、以後3年間にわたって国際研究交流を行なってきました。その研究交流の集大成として、8月9日、東京文化財研究所にて日韓無形文化遺産研究会が行なわれました。韓国から6名の研究者が来日して参加し、韓国側の発表者3名を含む6名が、無形文化遺産に関する研究発表を行ないました。また、研究会の後には今後の研究交流についての協議が行なわれ、2012年から五か年計画で、引き続き交流を行なうことが合意されました。

ヘレン・ケラー初来日時の音声資料

フィルモン音帯「トーキングブツク/ヘレンケラー」大阪芸術大学博物館所蔵

 無形文化遺産部は、早稲田大学演劇博物館(演劇映像学連携研究拠点)と共同で、フィルモン音帯(日本で開発されたエンドレステープ式の長時間レコード)の調査研究を実施しています。
 フィルモン音帯は、生産期間が1913年から1915年と短かったため、現存数は決して多くありません。1937年に初来日したヘレン・ケラーが録音を行っていたことは事実として知られていましたが、現物を確認できない音帯のひとつでした。調査の過程で、その音帯が大阪芸術大学博物館に現存することが明らかとなりました。この時の録音以外には、初来日当時の肉声は残されていないようです。歴史的にも貴重な資料であり、8月18日付『読売新聞』夕刊には紹介記事が掲載されました。
 フィルモン音帯の概要は『無形文化遺産研究報告』第5号(2011年3月刊)に報告しています。収録内容を含め、その詳細は今年度の報告書にまとめる予定です。

京観世の記録化

 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センターでは5月から「京観世の記録化」という研究会を始めました。2月に大学創立百三十周年記念の公開講座「京観世の伝統―記録と記憶から聞こえるもの―」をおこないましたが、そこで講演をおこなったつながりで、高桑無形文化財研究室長が、この研究会に参加しています。京観世は、大正時代半ば頃まで残っていた京都独特の謡の伝承です。現在では途絶えてしまいましたが、無形文化遺産部では50年前に録音をおこない、30年前にその録音を中心にしたレコードの作成にも関わっていました。そのときどきの資料を扱いながら、京観世の伝承を甦らすべく、共同研究をおこなっています。

山口県下松市米川地区の莚織り技術調査

座談会形式で村の方々に昭和20年代の暮らしについてお聞きしました

 7月4日~5日の二日間、下松市米川地区(旧米川村)の西平谷にて莚(むしろ)織り技術の調査を行ないました。西平谷は西谷・平谷から成る谷筋の山間集落ですが、昭和30年以降、沿岸市街地への転出が一気に進み、現在では両村合わせて10戸に満たないほどに過疎化が進行しています。この地域で、地域おこしの一環として、地元有志を中心に莚織りの技術を復活させようとする活動が昨年度から行なわれてきました。莚は古くより日本の百姓の暮らしのなかでごく当たり前に見られた民具であり、その技術もすでに近世から日本列島でほぼ共通しています。しかし当たり前であるからこそ、その技術がきちんと記録されることはほとんどありませんでした。西平谷の莚は自家用に織り継がれてきたものであるために、最も単純な道具を用いた技術であり、莚織り技術のより古い形を保存していると考えられます。調査研究では地元有志をお手伝いする形で莚織り技術を復元し、記録・伝承するとともに、莚という民具の背景にある村の暮らしや環境を掘り起し、記録することを目指しています。

久留米絣の工芸技術調査

二代目 森山虎雄(もりやまとらお)氏の工房にて

 6月27~28日にかけて重要無形文化財保持団体「重要無形文化財久留米絣技術保持者会」のメンバーを中心に工芸技術調査を行いました。絣とは装飾的な意図を持って糸の一部を染め分け、これを経(たて)、緯(よこ)に織り上げて模様を表現したものです。写真は緯糸を経糸の模様に合わせながら織っているところです。久留米絣は大麻の樹皮である「粗苧(あらそう)」を用いて糸に防染を行います。粗苧製造も国の選定保存技術として保護されている技術です。今後も、現地に足を運びながら各技術とその保護について調査を行っていきます。

日立市十王「ウミウの捕獲技術」の調査

断崖に作られた小屋で、飛来する若いウミウを捕獲する
捕獲に適した若い鵜(右)

 6月7日~8日、茨城県日立市十王町にて「ウミウの捕獲技術」(日立市の無形民俗文化財)の調査を行ないました。鵜飼は現在でも関東から西日本の十数ヶ所で行なわれていますが、その際に用いるウミウはそのほとんどがこの十王町で捕獲されます。調査では、鵜捕りの技術や伝承の状況についてお話を伺ったほか、断崖絶壁にある鵜の捕獲場なども見せていただきました。この捕獲場は、3月の大地震により崩落の被害を受けましたが、伝承者自身の手によって修復され、4月下旬から5月中旬にかけて行なわれる春の鵜捕りでは、11羽が全国各地に送られました。秋の鵜捕りシーズンにはもう一度現地を訪ね、技術の実地調査を行なう予定です。

国際会議 “The Value and Competitive Power of Naganeupseong Folk Village as World Heritage” 韓国全羅南道順天市

会議の様子

 この国際会議は、韓国全羅南道順天市の楽安邑城(ナガンウプソン)という民俗村の世界遺産登録へ向けての運動の一環で、韓国民俗学会の主催で5月12日に開かれたもので、歴史・民俗・建築等多方面からの専門家や保護行政関係者が参加しました。日本からは無形文化遺産部の宮田が招聘され、「日本の世界遺産(無形文化遺産分野)登載現況と見通し」という題目で発表を行いました。楽安邑城は、単なる民俗テーマパークとは異なり、今も現実に住民の暮らしが続いています。こうした遺産を評価するためには、有形・無形双方からのアプローチが不可欠であるという認識は、参加者の共通の認識であり、日本の無形のあり方に関しても高い関心が寄せられました。無形文化遺産部では、今後もこうした意見交換の場には積極的に参加し、日本の知見を広く発信したいと考えています。

『無形民俗文化財の保存・活用に関する調査研究報告書』刊行

『無形民俗文化財の保存・活用に関する調査研究報告書』

 平成18年度から始まったプロジェクト「無形民俗文化財の保存・活用に関する調査研究」(「民俗技術に関する調査・資料収集」も一体として実施)の成果報告書を刊行し、関係諸機関等に配布しました。本書では、「民俗技術に関する調査と研究報告」、「無形民俗文化財の公開と国際交流-『国際民俗芸能フェスティバル』の15年-」、「民俗芸能の伝承組織についての一試論-『保存会』という組織のあり方について」、以上3点の無形民俗文化財の保存・活用に関する報告を掲載しています(ホームページ上でも全頁のPDFを公開しています)。

NEACHセミナー“DOCUMENTATION AND SAFEGUARDING OF INTANGIBLE CULTURAL HERITAGE” マレーシア クアラルンプール

会議の樣子

 この国際セミナーは、ASEAN10カ国+日・中・韓3カ国で構成される、”NETWORKING OF EAST ASIAN CULTURAL HERITAGE(NEACH)”の枠組みで定期的に行われているもので、今回はマレーシアがホスト国となり、2011年3月5日から8日にかけてクアラルンプールで開催されました。今回は無形文化遺産がテーマであり、日本からは無形文化遺産部の宮田が招聘され、“Documentation and Archiving of Japanese Intangible Cultural Heritage”というテーマで発表を行いました。参加した各国は、無形文化遺産保護条約に関しては締約国・非締約国の別はあったものの、総じて無形文化遺産保護の必要性に関する意識は高く、活発な意見交換がなされました。無形文化遺産部では、今後もこうした機会には積極的に参加し、日本の経験を広く発信したいと考えています。

無形文化遺産部プロジェクト報告書『無形文化財の伝承に関する資料集』の刊行

図版頁(『横笛細工試律便覧』)より

 平成18年度から始まったプロジェクト「無形文化財の保存・継承に関する調査研究」の成果報告書を刊行しました。
 本書では、江戸時代の笛製作に関する技法書『横笛細工試律便覧』、文楽義太夫節の曲節を分類整理した実演集『義太夫節の種類と曲節』、江戸小紋の歴史と製作工程を記した『江戸小紋技術記録』、以上3点の無形文化財の保存・継承に関する資料を紹介しています(ホームページ上でも全頁のPDFを公開する予定)。

第5回公開学術講座「和泉流狂言の伝承」in 金沢

 無形文化遺産部恒例の公開学術講座を、今年度は金沢大連携融合事業・日中無形文化遺産プロジェクトとの共催で、12月12日、石川県立能楽堂で開催しました。金沢市は江戸時代から能楽が盛んな土地柄で、宝生流の謡曲と和泉流の狂言が行われています。今回は和泉流の狂言にスポットを当てました。同じ和泉流でも金沢と名古屋では伝承が大きく異なっています。その歴史的な背景や実技の違いについて講演をおこない、それぞれの伝承に基づく狂言を演じていただきました。東京都は異なり聴衆はそう多くはありませんでしたが、熱心な聴講者が多く、好評でした。

第5回無形民俗文化財研究協議会

 無形文化遺産部では毎年、無形の民俗文化財の保護と継承に関わる諸問題について話し合う研究協議会を開催しております。その第5回を、「無形の民俗の保護における博物館・資料館の役割」をテーマとして、2010年11月18日に当研究所セミナー室において開催しました。近年、博物館や資料館の活動が多様化するなかで、地域の文化を代表するものとして、無形の民俗文化財の保護や継承に積極的に取り組む例が増えています。協議会では、全国から4件の博物館・資料館の事例について現状や課題を報告をしていただき、それをもとに活発な討議が行われました。この協議会の内容は、2011年3月に報告書として刊行する予定です。

宝生流:今井泰男師の謡曲録音 100曲達成

 無形文化遺産部では、2005年度より宝生流の最長老今井泰男師の番謡の記録作成をおこなっていますが、この9月でそれが100曲に達成しました。宝生流のレパートリーは210番ありますが、そのうちの主要な曲目の記録を作成したことになります。能としては上演されず謡だけ伝承されている最奥の秘曲「檜垣」が記念すべき100曲目でしたが、年老いて零落したかつての美しい白拍子(舞人)が過去の罪業を僧の前で懺悔する内容を、今年90歳になられる今井氏は静かに淡々と謡われました。昭和後半の宝生流を代表するおひとりの記録を、まとめて残した意味は大きいと言えるでしょう。この録音は、このあとももう少し続く予定です。
(無形文化遺産部・高桑いづみ)

女子美アートミュージアムにおける調査

女子美アートミュージアムにおける調査風景

 服飾文化共同研究拠点における共同研究の一環で、平成22年7月12日に女子美アートミュージアムにおいて染織品調査を行いました。この共同研究は平成20年11月より開始され、文化服飾博物館に所蔵される三井家伝来小袖服飾類とそれに付随する円山派衣装下絵との関係を服飾文化史的視点から明らかにすることを目的としています。今回の調査は、女子美アートミュージアムに所蔵されている旧鐘紡株式会社所蔵の小袖の中から本研究テーマである三井家伝来小袖と類似するものを中心として、技法・意匠構成、仕立てを含めた詳細な調査を行いました。これらの調査で得られた知見は来年度の報告書刊行に向けて更なる精査を進めていきます。

韓国国立文化財研究所での研修

重要無形文化財伝授会館での聞き取りの様子(重要無形文化財刺繍匠保有者、韓尚洙氏)

 「無形文化遺産の保護に関する日韓研究交流」にもとづき、無形文化遺産部の俵木が、6月28日から7月8日まで韓国国立文化財研究所無形文化財研究室を訪問し、韓国の無形文化遺産保護についての研修を行いました。過去2年の研修において、韓国における無形文化遺産に関する記録のアーカイブ化の状況を調査してきましたが、今年度は、とくに韓国文化財庁が関係諸機関の製作する記録物について集約的なデータ管理を行っている現状と、そのために定められた「文化財記録化事業標準データ製作指針」について、関係者に聞き取りを行いました。また、韓国の無形文化財保護制度の特徴の一つである伝授教育制度について、文化財庁および保有者(任実筆峰農楽保存会)から現状や問題点の聞き取り調査を行いました。

フィルモン音帯の調査

フィルモン音帯

 フィルモン音帯とは、戦前の日本で開発された特殊なレコードです。形状は合成樹脂製のエンドレステープ(約13メートル)で、最長で36分間の録音が可能であったといわれています。無形文化遺産部は音帯5本を所蔵しています。音帯には専用の再生機が必要な上に、再生機の現存そのものが極めて少ないので、録音の内容確認すらこれまではかないませんでした。
 昨年度より、早稲田大学演劇博物館(演劇映像学連携研究拠点)と共同でフィルモン音帯の調査を行うことになりました。演劇博物館は再生機を動態保存しているので、音帯の再生音をデジタル化することも計画に含まれています。
 現在、無形文化遺産部と演劇博物館、それに個人蔵の音帯を加えると、延べで100本以上の現存を確認することができました。残念ながら、経年劣化が著しいために、再生が難しいものもも相当数ふくまれていますが、少しでも多くの音帯から再生音が得られるよう、現在、作業を進めているところです。

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