無形文化遺産(伝統技術)の伝承に関する研究会Ⅱ「染織技術の伝承と地域の関わり」の開催

熊谷伝統産業伝承室(くまぴあ)での見学の様子

 無形文化遺産部では平成27年11月11日、12日にかけて熊谷市と共催で無形文化遺産(伝統技術)の伝承に関する研究会Ⅱ「染織技術の伝承と地域の関わり」を開催しました。本研究会では第1回目の同研究会(平成27年2月3日開催)のテーマ「染織技術をささえる人と道具」を引き継ぎ、染織技術に必要な「道具」の保存と活用について積極的な支援を行っている埼玉県熊谷市と京都府京都市の担当者を招き、染織技術に欠かせない要素である「道具」の保存と活用に関して行政がどのように関わっていく事ができるのかについて考えました。
 11日は当研究所保存修復科学センターの中山俊介近代文化遺産研究室長より文化財という視点から「道具保護と活用」について報告があった後、熊谷市立熊谷図書館の大井教寛氏に「熊谷染関連道具の保護と行政の関わり」、京都市伝統産業課の小谷直子氏に「京都市における染織技術を支える事業について」を報告いただきました。その後の総合討議では、行政でできることや、様々な立場の人々の連携の重要性等について活発に議論が交わされました。フロアからは、技術を伝承するためにはその技術の根ざす「地域」を大切にしながら他の「地域」と連携していくことも視野に入れていくことが必要との意見もでました。
 12日は遠山記念館の水上嘉代子氏による講演「埼玉県の染織の近代化小史―熊谷染を中心に―」の後、熊谷伝統産業伝承室(熊谷スポーツ・文化村「くまぴあ」内)の見学を実施しました。同室内に展示されている長板回転台や水洗機、蒸し箱はポーラ伝統文化振興財団の助成により移設されたものです。
 今回の研究会は、染織技術やそれをささえる道具との関わりについて具体的な事例をもとに議論を展開し、染織技術の伝承を考えていく上で、道具を保存していく大切さを改めて認識することができる機会となりました。
 今後も無形文化遺産部では伝統技術を取り巻くさまざまな問題について議論できる場を設けていきます。

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