二幅の不動明王画像について―文化財情報資料部研究会の開催
研究会の様子(画像:禅林寺・不動明王二童子像)
平成31(2019)年2月28日、第9回文化財情報資料部研究会が開催されました。米沢玲(文化財情報資料部)が「二幅の不動明王画像―禅林寺本と高貴寺本―」と題した発表を行い、コメンテーターには津田徹英氏(青山学院大学)をお招きしました。
発表は、京都・禅林寺の不動明王二童子像と大阪・高貴寺の不動明王四童子像に関するもので、二幅の図像と表現様式について詳しい検討を加えたうえで、それぞれが鎌倉時代後期と南北朝時代後期の制作であることを論じました。また、二幅の画像では中央に描かれる不動明王と脇に立つ二童子像の図像が共通していることを指摘し、不動明王四童子像という珍しい画像を制作する際に、禅林寺本のような既存の不動明王画像を参照したであろうことを述べました。
密教の尊格である不動明王は平安時代初期に信仰が盛んになり、彫刻や絵画として数多く造形化されました。中世にいたると、それまでにはなかった新奇な不動明王像が作られるようになりましたが、高貴寺本のような不動明王四童子像もそのひとつです。二幅の画像を詳細に考察することで、多様に展開した不動明王像の制作について、その一端を明らかにすることができると言えます。
研究会では内外の研究者によって、不動明王の信仰形態や二幅の伝来、表現などについて活発な議論が交わされました。