クラクフにおける国際集会「日本絵画の修復」の開催

講演
紙漉き体験

 令和元(2019)年7月29、30日にポーランド・クラクフ所在の日本美術技術博物館Mangghaにおいて、日本国文化庁および同館と共同で、ポーランド国立クラクフ博物館・一般社団法人国宝修理装潢師連盟・一般社団法人伝統技術伝承者協会の協力のもと、国際集会「日本絵画の修復」を開催しました。本集会は「日本ポーランド国交樹立100周年」記念事業の1つとして認定されました。
 東京文化財研究所では、平成3(1991)年より「在外日本古美術品保存修復協力事業」として、海外で所蔵されている日本美術作品の保存修復を行っており、このたびポーランド国立クラクフ博物館所蔵の掛軸3幅を修復しました。本集会は、今回修復した掛軸およびその修復過程を展示するとともに、講演・実演・体験など様々な方法を通して日本絵画の修復に関する理解を促進することを目的に開催したものです。国の選定保存技術である「装潢修理技術」のほか、これを支える選定保存技術「装潢修理・材料用具製作」として、手漉き和紙(宇陀紙)製作、刷毛製作、金物製作などについても展示・解説しました。
 修復技術者などを対象とした専門家会議として実施した1日目には、ポーランドを中心に欧米9か国より31名の修復技術者および学生が参加し、伝統技術を体験すると共に日本の技術者との意見交換も行われました。2日目は一般来場者への公開講座とし、展示解説や紙漉き体験に15か国219名もの人々が参加するなど高い関心を呼ぶことができました。諸外国の保存修復専門家との交流促進の場にとどまらず、伝統的な日本絵画の修復技術や材料について広く一般の理解を得る貴重な機会となりました。

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