アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査VI

ICC専門委員による現地調査
小型クレーンによる散乱石材の移動

 東京文化財研究所では、カンボジアにおいてアンコール・シエムレアプ地域保存整備機構(APSARA)によるタネイ寺院遺跡の保存整備事業に技術協力を行っています。これまでに策定した同遺跡の保存整備計画に基づく東門の修復工事の開始に向け、アンコール遺跡救済国際調整委員会(ICC)での同修復計画の審査と工事着手前に必要な調査の実施のため、令和元(2019)年5月19日から6月29日にかけて計5名の職員の派遣を行いました。
 6月11~12日に開催されたICC技術会議では、解体修理を主体とした修復計画を提案し、3名の専門委員による現地調査を含む慎重審議の結果、ほぼ原案どおりでの承認を受けることができました。また、工事着手前の調査として、東門周囲の散乱石材の移動等に伴う石材調査と排水経路検討のための発掘調査を行いました。
 石材調査では、散乱石材の記録と番付を行い、石材を修復工事の邪魔にならない外周部に移動、整理しました。石材の移動には、西トップ遺跡の修復工事を行っている奈良文化財研究所の小型クレーンを借用し、効率的に作業を進めることができました。
 発掘調査では、東門周囲からの自然排水の経路を検討するため、東門西方に位置する十字テラス北東端部と東門周辺との間の旧地表面の高低差を明らかにすることを試みました。東門周辺は周囲に比べて標高が低くなっており、雨水が溜まってしまうことが懸念されることから、今後の整備にあたっては寺院北濠への排水路の設置を計画しています。なお、今回の発掘調査では、十字テラスと東門をつなぐ参道の一部の可能性があるラテライト敷き遺構を検出しました。さらなる調査の成果が期待されます。

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