バハレーンにおける歴史的なイスラーム墓碑の3次元計測(第2次)

アブ・アンバラ墓地での調査
再利用されるアブ・アンバラ墓地の墓碑

 東京文化財研究所は長年にわたり、バハレーンの古墳群の発掘調査や史跡整備に協力してきました。令和4(2022)年7月に現地を訪問してバハレーン国立博物館のサルマン・アル・マハリ館長と面談を行った際に、モスクや墓地に残されている歴史的なイスラーム墓碑の保護に協力してほしいとの要請がありました。現在、同国内には約150基の歴史的なイスラーム墓碑が残されていますが、塩害などにより劣化が進行しています。
 この要請に応えた協力活動として、令和5(2023)年には写真から3Dモデルを作成する技術であるSfM-MVS(Structure-from-Motion/Multi-View-Stereo)を用いた写真測量を行い、バハレーン国立博物館所蔵の20基、アル・ハミース・モスク所蔵の27基の3次元計測を完了しました。作成したモデルは、広く国内外からアクセスできるプラットフォームである「Sketchfab」に公開し、墓碑のデータベースとして活用されています。
 令和6(2024)年2月9日から15日にかけて、バハレーン国内の他の墓地にも対象を広げた3次元計測調査を再び行いました。同様に写真測量を行い、アブ・アンバラ墓地の47基、アル・マクシャ墓地の2基、ジェベラット・ハブシ墓地の11基、ジドハフ・アル・イマーム墓地の3基の計測を完了しました。これらの墓碑は、過年度と異なりイスラーム教徒の墓地内に位置しており、一部の墓碑は現代の墓に再利用されていました。
 墓碑の寸法、形状、碑文に関する情報が合わさった3Dモデルによる100基以上のデータベースはこれまで例がなく、墓碑の記録保存に加えて、本調査の成果がイスラーム墓碑研究にも役立つことが期待されます。

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