2025年度保存科学研究センター新規導入・更新機器

 保存科学センターでは、令和7(2025)年度に「紫外可視近赤外分光光度計」「大型真空凍結乾燥機」を新規導入し、「顕微赤外分光光度計」を更新しました(図1)。これらの機器についてご紹介します。
紫外可視近赤外分光光度計
 試料に光を照射すると、その構造によって光の吸収パターン(スペクトル)が変化しますが、それによって物質の構造や濃度を分析する装置です。文化財の業界においては、特に色の数値化でも多用されます。大型積分球と、ファイバー式の外部積分球も付属しており、様々な試料の分析が可能です。
顕微赤外分光光度計(更新)
 赤外分光光度計は、特に有機物の構造解析においては最も基本となる分析装置と言えます。例えば、紙の接着に用いられている糊の種類・繊維製品の繊維の種類・文化財に付着してしまった汚染物質などを分析する際には、まず赤外分光分析を行うことが多く、保存科学研究センターにおいて最も利用頻度が高い分析機器です。通常の赤外分光分析に加え、顕微赤外分光分析も可能であり、大きさが数µm程度しかないような微小な資料でも分析可能です(図2)。
大型真空凍結乾燥機
 真空凍結乾燥(フリーズドライ)は、凍らせた水分を昇華させることで、変形を少なく資料を乾燥させる装置です。水害等で濡れてしまった文書資料も、効率よく安全に乾かすことができます。今回導入された大型真空凍結乾燥機は、多くの被災資料を一度に処理できるため、文化財防災の現場での活用が期待されます。 
 これらの装置を用いて文化財分析を今後も進めていきます。


図1 新規導入・更新機器の写真

A:紫外可視近赤外分光光度計

B:顕微赤外分光光度計

C:大型真空凍結乾燥機

図2 顕微赤外分光光度計による繊維分析

JIS L 0803準拠の多繊交織布の一部をマッピングした結果。この領域は、経糸はPET繊維、緯糸はレーヨン・アクリル・絹からなっているが、きれいなマッピングができている。この分析は反射分析で実施した。更新前の従来の機器ではこのような分析は困難であったが、装置の進歩により非接触非破壊での分析性能が可能となり文化財分野においては非常に有益である。

to page top