研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


シリア人専門家を対象とする紙文化財保存修復研修の実施および同国文化遺産関連資料の提供

紙文化財保存修復研修
シリア文化遺産関連資料の提供

 中東のシリアでは平成23(2011)年3月に紛争が始まり、終結をみないまま既に7年の月日が経過しています。人的被害のみならず、紛争の被害は貴重な文化遺産にも及んでいます。
 日本政府とUNDP(国連開発計画)は、平成29(2017)年から文化遺産分野においてシリア支援を開始し、平成30(2018)年の2月からは、奈良県立橿原考古学研究所を中心に、筑波大学や帝京大学、早稲田大学、中部大学、古代オリエント博物館などの学術機関がシリア人専門家を受け入れ、考古学や保存修復分野に関するさまざまな研修が始まっています。
 東京文化財研究所も、平成30(2018年)5月15日から30日までの2週間にわたり、シリア人専門家2名を日本に招聘して紙文化財の保存修復に関する研修を実施しました。国立国会図書館および国立公文書館の協力のもと行ったこの研修では、文書資料や書籍などの基本的な修復方法や保存方法を学んでもらいました。
 一方、平成30(2018)年1月には、シリア北西部にあるシロ・ヒッタイト時代の神殿址アイン・ダーラ遺跡が空爆され深刻な被害が生じたというニュースが報道されました。この遺跡では、平成6(1994)年から平成8(1996)年にかけて、東京文化財研究所が保存修復事業を行っていました。そこで、この事業を率いた西浦忠輝名誉研究員から当時の関係資料を提供いただき、今後の同遺跡の修復に役立ててもらうべく、上記研修に招聘したシリア人専門家を通じてシリア古物博物館総局に提供しました。また、併せて東京文化財研究所が所蔵する、和田新が昭和4(1929)年から翌年にかけてアレッポやダマスカス、パルミラなどを撮影した貴重な古写真のデータも提供しました。

アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査III

出土したテラス状構造物
測量調査の様子

 東京文化財研究所は、カンボジアにおいてアンコール・シエムレアプ地域保存整備機構(APSARA)によるタネイ遺跡保存整備計画策定に技術協力しています。平成30(2018)年3月8日~22日の間、同遺跡において今年度3回目となる考古学調査および周辺の測量調査を実施しました。
 今回の発掘調査は、平成29(2017)年12月の第二次調査において出土した、東バライ貯水池土手上のテラス状構造物のさらなる解明を主目的として、APSARA機構のスタッフと共同で行いました。
 調査の結果、この構造物は全体が十字形を呈するようにラテライトの切り石が敷かれており、東西13.8m、南北11.9mの規模を持つことが明らかとなりました。さらに、付近からは多くの瓦が出土し、石敷き上には柱穴と思われる多くの穴や窪みが確認されたことから、このテラス状構造物上にはかつて木造建造物が存在したと推測されます。テラス状構造物は寺院の東西軸上に位置していることから、今後は両者の関係を明らかにするべく調査を続けていく予定です。
 同時に、遺跡周辺において、トータルステーションを用いた測量調査も行いました。今回収集したデータを基に、詳細な地形図を目下作成中で、本遺跡の保存整備への有効な活用が期待されます。また、この測量調査に際しては、APSARA機構スタッフへの指導・技術移転も同時に行いました。学術的な調査とともに、このような技術的な支援も継続していきます。

アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査 II

検出されたテラス状構造物
支保工の現状調査

 東京文化財研究所は、カンボジアでアンコール・シエムレアプ地域保存整備機構(APSARA)によるタネイ遺跡保存整備計画策定に技術協力しています。平成29(2017)年11月28日から12月8日にかけて、2回目の考古学調査と建造物の危険個所調査を同遺跡にて実施しました。
 今回の発掘調査は、7月の第一次調査で発見した寺院東正面の参道および東バライ貯水池土手上の構造物の遺構確認を主目的として、奈良文化財研究所の協力を得ながら、APSARA機構のスタッフと共同で行いました。
 まず東門の東方約50mの位置に東西2m×南北5mのトレンチを設定して発掘を実施したところ、現地表下70cmで参道と思われる硬化面が確認されました。この硬化面は、コブシ大の砂岩礫を敷いた上に5mmほどの細かい砂岩礫を撒き、その上を黄色土で覆ったものでした。
 また、この参道の延長線上にあたる東バライ貯水池土手の上面に東西11m×南北1mのトレンチを設定して発掘を実施したところ、現地表下30cmでラテライトの石敷面が確認されました(図1)。周辺の地形や露出しているラテライトの分布などから、この遺構は東西20m×南北15m程度の規模を持つテラス状の構造物の一部と推定されました。
 一方、建造物の危険個所調査(risk mapping)に関しては、既存支保工の更新方法を検討しました。本遺跡では、中心祠堂、東祠堂、内回廊などの主要建造物において、崩壊のおそれなど安全上の懸念がある計16ヵ所に木製の支保工が施されています。しかし、これらの仮設物が遺跡の観賞を妨げており、また設置から20年程経過して木材の腐朽や接合部の緩みなどが進行して更新の時期を迎えています。そこで、支保工の現状を観察記録するとともに、より耐久性のある材質や微調整が可能な設計に変更するなど、改良案の検討を行いました。

博物館の環境管理に関するイラン人専門家研修

東京文化財研究所で実施した座学の様子

 東京文化財研究所は、平成29(2017)年3月に、イラン文化遺産手工芸観光庁およびイラン文化遺産観光研究所と趣意書を取りかわし、今後5年間にわたり、イランの文化遺産を保護するため様々な学術分野において協力することを約束しました。
 平成28(2016)年10月に実施した相手国調査の際、イラン人専門家から、現在、首都テヘラン市では大気汚染が深刻な問題となっており、その被害が文化財にもおよび、イラン国立博物館に展示・収蔵されている金属製品の腐食が進行していると相談されました。
 そこで、今回、10月29日から11月5日にかけて、イランにおける博物館の展示・収蔵環境の改善を目指し、イラン国立博物館とイラン文化遺産観光研究所から各1名の専門家を招聘し、研修とスタディー・ツアーを実施しました。
 研究所において、博物館環境と大気汚染に関する座学を実施したほか、東京国立博物館の展示・収蔵環境や鎌倉大仏などの視察を行いました。
 来年度も、イランの博物館の展示・収蔵環境の改善を目指し、協力を実施していく予定です。

セミナー「インドにおける文化遺産保護と最新のインダス文明研究」の開催

セミナー終了後、シンデ博士を囲んでの集合写真

 東京文化財研究所およびNPO法人南アジア文化遺産センターは、インド・デカン大学学長のヴァサント・シンデ博士をお招きし、9月26日にセミナー「インドにおける文化遺産保護と最新のインダス文明研究」を開催しました。
 ヴァサント・シンデ博士は、インドを代表する考古学者で、インド国内で数多くの発掘調査を行ってきました。現在は、モヘンジョ・ダロ遺跡を凌ぐインダス文明最大の都市遺跡ラキー・ガリー遺跡の発掘調査を行っています。
  今回のセミナーでは、「インドにおける文化遺産保護の現状」と「ラキー・ガリー遺跡の最新の発掘調査成果」に関して、ご報告いただきました。
 また、発表前の時間を利用して、東京文化財研究所を見学していただきました。シンデ博士の所属するデカン大学は文化遺産に特化した大学院大学ですが、来年度、新たに「保存修復」と「文化遺産マネージメント」の学部を新設するとのことです。そのような理由もあり、とくに保存科学研究センターの朽津室長の説明に熱心に耳を傾けていました。

アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査

図1 危険個所調査
図2 トレンチの発掘と確認された溝状遺構(SfMにより作成)

 東京文化財研究所では、アンコール・シエムレアプ地域保存整備機構(APSARA)によるタネイ遺跡保存整備計画策定に技術協力しています。平成29(2017)年7月16‐30日にかけて、考古発掘調査および建造物の危険個所調査を同遺跡において実施しました(図1)。
 今回の発掘調査は寺院正面である東参道の遺構確認を主目的とし、奈良文化財研究所の協力を得ながら、APSARA機構のスタッフと共同で行いました。事前に外周壁東門から東方の東バライ貯水池土手にかけての延長100m余の範囲で下草・灌木類を伐採したところ、同土手上面にラテライト造のテラス状構造物が存在することが初めて確認され、ここを起点に東門に至る参道の存在が強く推定されました。
 まず東門の東方約12mの位置に東西2m×南北10mのトレンチを設定し発掘を実施したところ(図2)、現地表下50cmで東西方向に走る溝状の遺構が確認されました。溝状遺構は幅2m程度で、溝内には無数の細かいラテライト粒(直径1cm~5mm)が充填されており、参道の可能性が考えられました。また、溝状遺構の両脇には、こぶし大ほどの砂岩礫が敷き詰められていました。
 また、この溝状遺構の続きを検出することと当初の地表面を確認することを目的に、東門に沿う形で東西2m、南北2.5mのトレンチを設定し掘り下げました。このトレンチでは、現地表下50cmのところで、砂岩礫が敷かれた面が全面に広がり、溝状遺構を確認することはできませんでした。
 東参道のさらに詳しい様相と新たに発見されたテラス状遺構の全容を把握するため、11月にも現地調査を再度行う予定です。
 一方、本遺跡はアンコールの他遺跡に比べて人手が加わっていない廃墟的景観が大きな魅力となっている一方で、これ以上の崩壊を防ぐことが来訪者の安全面からも求められています。このため、伽藍全体の構造学的リスク評価に基づいて支保工等を計画的に設置・更新することが急がれます。SfM1)写真測量技術による立面図の作成と危険個所のチェック作業を中軸線上の主要建物から順に実施することとし、手始めに2棟を対象にその作業手順の確立に努めました。この作業はAPSARA機構のスタッフが引き続き実施中です。
 周辺環境も含めた遺跡の良好な保存を図ると同時に、現地を訪れた人々がその意味と価値をより良く理解できるようにするため、学術的な解明と有効な保存整備の実現に向け、さらに協力を深めていきたいと思います。
註1 SfMとは「Structure from Motion」の略で、地形や遺跡、遺構などをデジタル・カメラで多方向から撮影し3Dモデルを作成する技術のことです。

イラン文化遺産セミナーの開催ならびにイラン文化遺産手工芸観光庁および文化遺産観光研究所との協力趣意書の締結

協力趣意書の締結

 イラン・イスラム共和国は、アケメネス朝ペルシアの王都ペルセポリスや、その繁栄ぶりから「世界の半分」と称賛されたイスファハーンなど、世界有数の文化遺産を有しています。
 東京文化財研究所ではこのたび、モハンマド・ハッサン・タレビアーン博士(イラン文化遺産手工芸観光庁副長官)およびモハンマド・ベヘシュティ・シラージー博士(イラン文化遺産観光研究所所長)をお招きし、3月29日に「イラン文化遺産セミナー」を開催しました。日本人専門家の講演とあわせて、お二人には同国の歴史文化的背景と文化遺産保護についての興味深いお話をいただきました。
 セミナー終了後、東京文化財研究所、イラン文化遺産手工芸観光庁、イラン文化遺産観光研究所の三者の間で趣意書を取りかわし、今後5年間にわたって、イランの文化遺産を保護するため様々な学術分野において協力することを約束しました。

シンポジウム『シリア内戦と文化遺産―世界遺産パルミラ遺跡の現状と復興に向けた国際支援―』

ISによって破壊されたパルミラ博物館の収蔵品(ロバート・ズコウスキー氏提供)

 中東のシリアでは、2011年3月に起きた大規模な民衆化要求運動を契機に内線状態へと突入し、すでに5年の月日が経過しています。シリア国内での死者は25万人を超え、480万人以上が難民となり国外へ逃れています。
 シリア内戦下では、貴重な文化遺産も被災し、国際的に大きなニュースとして報道されています。とくに昨年8月から10月にかけて起きたIS(自称『イスラム国』)による世界遺産パルミラ遺跡の破壊は、日本国内でも大々的に報道され注目を集めました。
 東京文化財研究所は、文化庁、奈良文化財研究所、公益財団法人アジア文化センター文化遺産保護協力事務所と共催で、11月20日と11月23日に東京国立博物館および東大寺金鐘ホールにて、シンポジウム『シリア内戦と文化遺産―世界遺産パルミラ遺跡の現状と復興に向けた国際支援―』を開催しました。
 パルミラ遺跡は2015年5月からISによって実効支配されていましたが、2016年3月にシリア政府軍が奪還、4月にポーランド人研究者やシリア人研究者がパルミラ遺跡に入り現地調査を行いました。彼らは、パルミラ遺跡とパルミラ博物館の被災状況を記録したほか、被災した博物館の収蔵品に対し応急処置を施し、ダマスカスまで緊急移送を行いました。
 今回のシンポジウムでは、現地で生々しい状況を目にしたポーランド人研究者やシリア人研究者のほか、国内外の専門家やユネスコ職員が一同に会し、パルミラ遺跡を含む被災したシリアの文化遺産の復興に向けてどのような支援が効果的なのか、討議を行いました。

アルメニア・イラン相手国調査

エチミアジン大聖堂博物館に保管されている染織品

 9月26日から10月6日にかけて、文化遺産保護分野における協力のニーズを把握することを目的として、アルメニア共和国とイラン・イスラーム共和国を訪問しました。
 最初の訪問国であるアルメニアに関しては、文化省との協力合意書がすでに存在し、2011年から2014年にかけては、アルメニア歴史博物館をカウンター・パートに考古金属資料の調査研究および保存修復を共同で実施しました。今回の訪問では文化省やアルメニア歴史博物館、エチミアジン大聖堂博物館などを再訪し、これからのプロジェクトの展開に関して協議を行いました。アルメニアに対しては、今後、染織品の保存修復分野における技術移転に協力していくことを計画しています。
 続くイランでは、文化遺産手工芸観光庁や文化遺産観光研究所、イラン国立博物館などを訪問しました。イラン人専門家との協議の中でとくに話題にのぼったのが、大気汚染の問題でした。現在、首都テヘラン市では、大気汚染が深刻な社会問題になっています。そして、この大気汚染が、博物館の展示品・収蔵品にも影響を及ぼしている可能性があることが協議の場で指摘されました。今後、イランとは、展示・収蔵環境の改善を目指し、上記の問題についての共同研究を実施していくことを検討しています。

キルギス共和国及び中央アジア諸国における文化遺産保護に関する拠点交流事業

アク・ベシム遺跡出土土器の実測実習

 文化遺産国際協力センターは、文化庁の文化遺産国際協力拠点交流事業の枠組みに基づき、2011年度より、キルギス共和国及び中央アジア諸国における文化遺産保護への協力を実施しています。これまで、キルギス共和国において、「ドキュメンテーション」、「発掘」、「保存修復」、「史跡整備」をテーマに文化遺産保護に関連する分野の人材育成ワークショップを行ってきました。
 本事業の最終年度にあたり、本年は、7月に日本国内での史跡整備と展示に関する視察及びワークショップを実施し、それに引き続き、10月27日から11月1日までの6日間、第8回ワークショップ「展示と調査報告書作成に関する人材育成ワークショップ」をキルギス共和国のビシュケクで実施しました。このワークショップには、キルギスから12名の研修生が参加しました。
 キルギス国内の博物館は未だ十分な設備と人材が整えられているとは言い難いのが現状です。このため、ワークショップでは博物館における展示技法、照明や温湿度管理及び展示室の管理手法に関する講義を行いました。また、それに続いて、遺物実測や観察表作成等を含む報告書作成の技術についての講義・実習を行いました。あわせて、近年、考古学調査手法の多様化により、調査報告書に掲載される内容も多種の自然科学分析が含まれるようになってきたことから、2012~2013年度にかけて発掘研修を行ったアク・ベシム遺跡でサンプリングした動植物遺存体の分析手法に関する講義・実習も行いました。
 本枠組みでのワークショップ開催は今回で終了となります。しかしながら、キルギス及び中央アジア諸国の博物館や保存修復施設、史跡整備の現状を鑑みると、今なお文化遺産保護全般に関する国際支援が必要です。文化遺産国際協力センターは、今後もひき続き、中央アジアの文化遺産の保護を目的とした様々な文化遺産国際協力事業に取り組んでいく予定です。

キルギス共和国及び中央アジア諸国における文化遺産保護に関する拠点交流事業

人材育成ワークショップに参加した研修生と金沢大学の大学院生

 文化遺産国際協力センターは、中央アジアの文化遺産保護を目的に、文化庁の受託を受け、2011年度より、中央アジア、キルギス共和国において「ドキュメンテーション」、「発掘」、「保存修復」、「史跡整備」をテーマに一連の人材育成ワークショップを実施しています。
 2014年7月3日から7月14日までの12日間、第7回目のワークショップ「史跡整備と展示に関する人材育成ワークショップ」を実施しました。
 今年の6月カタールで開催された世界遺産委員会で中央アジアのシルクロード関連史跡が世界文化遺産に登録されることが決定しました。しかし、ほとんどの史跡では史跡整備が追い付いていないのが現状です。現在、史跡整備、オンサイト・ミュージアムの建設は、中央アジア諸国で緊急の課題となっています。
 そのため、今回、キルギス共和国から3名、アフガニスタン・イスラーム共和国から3名の若手専門家を日本に招聘し、「史跡整備」と「展示」に関する人材育成ワークショップを実施しました。東京文化財研究所、奈良文化財研究所において、講義を実施したのち、日本を代表する考古博物館や史跡などの視察を行いました。
 また、今回の人材育成ワークショップには、金沢大学国際文化資源学センターが実施する「文化資源マネージャー養成プログラム」などの大学院生8名も参加してくれました。

シンポジウム:シリア文化遺産の保護へ向けて

パネルディスカッションの様子

 2011年4月シリアにおいて大規模な民主化要求運動が発生し、そのうねりはとどまることを知らず、現在では、事実上の内戦状態となっています。シリア国内での死者はすでに14万人を超え、400万人以上が難民となって国外へ逃れています。
 内戦が繰り広げられる中、文化遺産の破壊も、また大きなニュースとして国際的に報道されています。アレッポやクラック・デ・シャバリエなど、シリアを代表する世界遺産が戦場となり、また多くの遺跡が盗掘にあい、博物館が略奪され、シリア国内からの文化財の不法輸出が国際的な問題となっています。このような中、ユネスコは、新たにシリアの文化遺産保護に向けた活動を開始しました。
 6月23日、東京文化財研究所は、シンポジウム「シリア文化遺産の保護へ向けて」を主催し、ユネスコが5月26日から28日にかけて行った専門家会議「シリアの文化遺産を保護するための国際社会への呼びかけ」に関する報告を行い、また、シリア文化遺産保護に向けた国内、海外のさまざまな取り組みを報告しました。

ユネスコ主催専門家会議「シリアの文化遺産を保護するための国際社会への呼びかけ」

シリアの文化遺産被災状況を報告するシリア古物博物館総局長

 2011年4月シリアにおいて大規模な民主化要求運動が発生し、そのうねりはとどまることを知らず、現在では、事実上の内戦状態となっています。シリア国内での死者はすでに14万人を超え、400万以上が難民となって国外へ逃れています。
 内戦が繰り広げられる中、文化遺産に対する被害も、大きなニュースとして取り上げられています。アレッポ、パルミラ、クラック・デ・シャバリエなど、シリアを代表する世界遺産が戦場となり、多くの遺跡が盗掘にあい、博物館が略奪され、シリア国内からの文化財の不法輸出が国際的な問題となっています。
 このような中、今年3月、シリアの文化遺産を保護するため、欧州連合の支援を受け、ユネスコは、新たに「シリア文化遺産緊急保護プロジェクト」を開始しました。
 今回、このプロジェクトの一環として、5月26日から28日にかけて、パリのユネスコ本部において、ユネスコ主催専門家会議「シリアの文化遺産を保護するための国際社会への呼びかけ」が開催されました。この会議には、22カ国から120名以上の専門家が参加し、東京文化財研究所からは山内、安倍の2名が参加しました。同会議では、シリアの文化遺産の被災状況が報告され、シリアの文化遺産を保護していくための今後の方針が活発に議論されました。

キルギス共和国及び中央アジア諸国における文化遺産保護に関する拠点交流事業

土器の修復、復元を行うキルギス人若手専門家

 文化遺産国際協力センターは、中央アジアの文化遺産保護を目的に、文化庁の受託を受け、2011年度より、中央アジア、キルギス共和国において「ドキュメンテーション」、「発掘」、「保存修復」、「史跡整備」をテーマに一連の人材育成ワークショップを実施しています。
 2014年2月10日から2月15日までの6日間、キルギス共和国国立科学アカデミー歴史文化遺産研究所と共同で、第6回目のワークショップ「出土遺物の保存修復に関する人材育成ワークショップ」を実施しました。
 今回の研修では、各研修生がキルギス国内で発掘した考古遺物を持ち寄り、専門家の指導のもと、それぞれが保存修復作業を実施しました。また、新規の内容として「考古遺物のレプリカ作り」に関する実習も行いました。
 今回の研修には、毎回、参加するキルギス人若手専門家8名のほかに、キルギスタン・トルコ・マナス大学のタバルディエフ教授が学生を引き連れ見学にこられ、研修は盛況のうちに終了しました。
 文化遺産国際協力センターは、今後もひき続き、中央アジアの文化遺産の保護を目的とした様々な人材育成ワークショップを実施していく予定です。

『シルクロード世界遺産登録に向けた支援事業:ウズベキスタン共和国における人材育成ワークショップと最終会議』

写真測量をもとに3Dイメージを作成する研修生

 2014年度のシルクロード関連遺跡の世界遺産登録を目指し、中央アジア5カ国と中国は、様々な活動を行なってきました。この活動を支援するため、文化遺産国際協力センターは、2011年度より3年間にわたりユネスコ・日本文化遺産保存信託基金による「シルクロード世界遺産登録に向けた支援事業」に参加し、中央アジア各国でさまざまな人材育成ワークショップを実施してきました。
 今回、最後の人材育成ワークショップをウズベキスタン共和国タシケントのユネスコ・タシケント事務所で12月1日から12月3日にかけて行ってきました。今回は、「文化遺産の写真測量」をテーマに研修を行いました。研修には、14名の若手専門家が参加しました。
 また、人材育成ワークショップ終了後に、12月4日、5日と同じくタシケントで開催された「シルクロード世界遺産登録に向けた支援事業の最終会議」に参加しました。この会議では、東京文化財研究所やロンドン大学が中央アジア各国で実施してきた人材育成事業のレビューが行われました。各国からは、今後も継続した研修を行ってほしいとの声があがり、とくに「歴史的建造物の測量」、「遺跡の保存」、「文化遺産のマネージメント」に関する研修を行ってほしいとの要望が寄せられました。

シンポジウム「シリア復興と文化遺産」

発表を行うユーセフ・カンジョ博士

 「アラブの春」に端を発した中近東諸国における民主化運動はアラブ世界に大きな変化をもたらしました。シリアにおいても2011年4月に大規模な民主化要求運動が発生し、そのうねりはとどまることを知らず、現在では事実上の内戦状態となっています。シリア国内の死者はすでに10万人を超え、多くの国民が難民となることを余儀なくされ、隣国に逃れる中、対立は激しさを増しており、いまだに出口が見えない状況です。
 内戦が繰り広げられる中で、文化遺産の破壊もまた世界的なニュースとして大きく取り上げられています。とくに、風光明媚な古都として知られているシリア第2の都市アレッポでは激しい戦闘が行われ、世界遺産に登録されている歴史的なスークが炎上し、アレッポ城が損壊を受けるなど、文化遺産が重大な危機に曝されています。これを受けて、ユネスコ世界遺産委員会は、2013年6月20日、内戦が続いているシリア国内にある6つの世界遺産のすべてを「危機遺産」に登録しました。
 このような状況を踏まえ、東京文化財研究所は、日本西アジア考古学会の後援を受け、さる10月31日にシンポジウム「シリア復興と文化遺産」を主催しました。
 シンポジウムでは、現アレッポ博物館館長であるユーセフ・カンジョ博士を含む9名の専門家が、「シリア内戦の現状と行方」、「シリアの歴史と文化遺産」、「シリア内戦による文化遺産の破壊状況」、「文化遺産の復興と国の復興」に関して発表を行い、その後、パネル・デスカッションにおいて、「現在そして今後、シリアの文化遺産復興に関して何をなすべきなのか」を活発に議論しました。

キルギス共和国および中央アジア諸国における文化遺産保護に関する拠点交流事業

アク・ベシム遺跡における発掘実習

 文化遺産国際協力センターは、中央アジアの文化遺産保護を目的に、文化庁の受託を受け、2011年度より、中央アジア、キルギス共和国において「ドキュメンテーション」、「発掘」、「保存修復」、「史跡整備」をテーマに一連の人材育成ワークショップを実施しています。
 今年度も、8月27日から9月12日までの17日間、キルギス共和国国立科学アカデミー歴史文化遺産研究所と共同で、第5回目のワークショップ「遺跡の発掘と出土遺物の保存修復と史跡整備に関する人材育成ワークショップ」を実施しました。
 今回の研修では、実際に中世の都城址アク・ベシム遺跡で、発掘実習を行い、また脆弱遺物の取り上げ実習や土層の剥ぎ取り実習などを実施しました。また、史跡整備に関しても講義を行い、アク・ベシム遺跡を題材に、史跡整備のプランニングを実施しました。
 今回のワークショップには、キルギスから8名、アルメニア、トルクメニスタン、カザフスタン、タジキスタンから1名ずつ、アフガニスタンから2名、計14名の若手専門家が研修生として参加しました。
 文化遺産国際協力センターは、今後もひき続き、中央アジアの文化遺産の保護を目的とした様々な人材育成ワークショップを実施していく予定です。

キルギス共和国および中央アジア諸国における文化遺産保護に関する拠点交流事業

金属製品のクリーニングを行なう研修生

 文化遺産国際協力センターは、中央アジアの文化遺産保護を目的に、文化庁の受託を受け、2011年度より、中央アジア、キルギス共和国において「ドキュメンテーション」、「発掘」、「保存修復」、「史跡整備」をテーマに一連の人材育成ワークショップを実施しています。
 今回は、2月8日から14日にかけて、キルギス共和国国立科学アカデミー歴史文化遺産研究所と共同で、第4回ワークショップ「考古遺物の保存修復処置と出土遺物のドキュメンテーションの人材育成ワークショップ」を実施しました。今回の研修には、キルギス共和国の若手専門家8名が参加しました。
 今回の研修では、夏の第3回ワークショップの際にアク・ベシム遺跡から出土した遺物を用い、研修生がそれぞれ「土器の復元」と「金属製品の保存修復処置」また「土器の実測」を行う実習形式で行いました。
 文化遺産国際協力センターは、今後もひき続き、中央アジアの文化遺産の保護を目的とした様々な人材育成ワークショップを実施していく予定です。

キルギス共和国および中央アジア諸国における文化遺産保護に関する拠点交流事業

発掘研修

 文化遺産国際協力センターは、中央アジアの文化遺産保護を目的に、文化庁の受託を受け、2011年度より、中央アジア、キルギス共和国において「ドキュメンテーション」、「発掘」、「保存修復」、「史跡整備」をテーマに一連の人材育成ワークショップを実施しています。
 今年度も、9月1日から9月17日までの17日間、奈良文化財研究所とキルギス共和国国立科学アカデミー歴史文化遺産研究所と共同で、「考古遺跡発掘」と「出土遺物の保存修復」をテーマに第3回目のワークショップを実施しました。今回の研修は、実際に中世の都城址アク・ベシム遺跡で発掘作業を行なう実習という形で行われました。ワークショップには、キルギスから8名、アルメニア、トルクメニスタン、カザフスタン、タジキスタンから1名ずつ、アフガニスタンから2名、計14名の若手専門家が研修生として参加しました。
 文化遺産国際協力センターは、今後もひき続き、中央アジアの文化遺産の保護を目的とした様々な人材育成ワークショップを実施していく予定です。

研究会「キルギス共和国の文化遺産」の開催

講演中のテンティエヴァ女史

 文化遺産国際協力センターは、文化庁の委託を受け、「キルギス共和国および中央アジア諸国における文化遺産保護に関する拠点交流事業」を2011年度より実施しています。この事業は、中央アジアの文化遺産保護を目的に、中央アジアの若手専門家育成を目指すものです。
 今回、この事業の一環として、キルギス共和国よりバキット・アマンバエヴァ女史、アイダイ・スレイマノヴァ女史、アイヌラ・テンティエヴァ女史の3名の専門家を日本に招聘し、「キルギス共和国の文化遺産」と題する研究会を3月15日に開催しました。アマンバエヴァ女史とスレイマノヴァ女史は、キルギス共和国における考古学新発見に関して発表を行ない、またテンティエヴァ女史はキルギス共和国の無形文化遺産に関する講演を行ないました。

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