博物館の環境管理に関するイラン人専門家研修III

東京文化財研究所における講義
国立民族学博物館における講義

 東京文化財研究所は、平成29(2017)年3月にイラン文化遺産手工芸観光庁およびイラン文化遺産観光研究所と趣意書を取りかわし、5年間にわたって、同国の文化遺産を保護するためさまざまな学術分野において協力することを約束しました。
 平成28(2016)年10月に実施した相手国調査の際、イラン人専門家から、首都テヘラン市では大気汚染が深刻な問題となっており、その被害が文化財にもおよび、イラン国立博物館に展示・収蔵されている金属製品の腐食が進行していると相談されました。そこで、イランにおける博物館の展示・収蔵環境の改善を目指し、平成29(2017)年度より研修事業を実施してきました。
 令和元(2019)年度も、イラン文化遺産観光研究所から2名、イラン国立博物館から2名、計4名のイラン人専門家を日本に招聘し、11月25日から29日にかけて、研修事業を行いました。 
 まず、東京文化財研究所において、佐野保存科学研究センター長と呂俊民先生が中心となり、博物館環境に関する講義を行ったほか、昨年度、イラン国立博物館で実施した大気汚染調査の成果に関して報告を行いました。また、佐藤生物科学研究室長と小峰アソシエイトフェローが中心となり、文化財の生物被害防止に関して講義を実施しました。
 その後、京都国立博物館と国立民族学博物館などを訪問しました。京都国立博物館では降幡順子先生に防災対策について講義していただき、同館の防災システムを見学しました。国立民族学博物館では、日髙真吾、和髙智美、河村友佳子、橋本沙知の各先生方に、同館における環境管理や空調管理、生物被害対策などについて講義していただいたほか、展示室や収蔵庫を見学しました。ご協力いただいた各位および各機関に改めて御礼申し上げます。
 東京文化財研究所は、今後もイランの文化遺産を保護するための協力活動を行っていく予定です。

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