文化遺産の3Dデジタル・ドキュメンテーションとその活用に関するワークショップの開催

写真測量の実習
広島県平和記念公園でのVRツアー体験
福井県一乗谷朝倉氏遺跡でのARコンテンツの体験

 文化遺産国際協力センターは、令和6(2024)年度文化遺産国際協力拠点交流事業「デジタル技術を用いたバーレーンおよび湾岸諸国における文化遺産の記録・活用に関する拠点交流事業」を文化庁より受託しています。その一環として、令和6(2024)年10月21~30日にかけて「文化遺産の3Dデジタル・ドキュメンテーションとその活用に関するワークショップ」ならびに「日本の博物館、史跡におけるAR、VR、デジタル・コンテンツの活用に関するスタディー・ツアー」を実施しました。本研修は、前年度に同交流事業を受託してバーレーンにて実施した、3Dデジタル・ドキュメンテーションに関する基礎的な研修を発展的に継承したもので、今回はバーレーン、クウェート、サウジアラビア、オマーン、エジプトの5カ国から計7名の専門家を招聘して、応用的な技術講習・実習に加え、ドローンを航行させての遺跡や建物の広域測量の実習、さらに日本国内での活用事例を見学するスタディー・ツアーも行いました。
 日本に招聘して研修を実施するねらいは、考古遺跡や歴史的建造物の記録における3Dデジタル・ドキュメンテーションの導入だけでなく、歴史教育や博物館展示、史跡公開などの場面での活用事例を学んでもらうことにあります。そこで、東京国立博物館と文化財活用センターが製作したデジタル日本美術年表をはじめとするデジタル・コンテンツや、産業技術総合研究所が進めるデジタルツイン事業の一つである3D DB Viewer、博物館資料の3Dデータを3Dモデルとして出力し“触れる展示資料”を提供している「路上博物館」などの事例を紹介しました。また、広島の平和記念公園で実施されているPeace Park Tour VRの体験、大塚オーミ陶業による文化財のレプリカ製作の現場見学、福井県一乗谷朝倉氏遺跡の屋内外における遺構露出展示や復元街並みとAR・VRの融合事例の見学などを実施しました。
 湾岸諸国の中でも、3Dデジタル・ドキュメンテーションを本格的に導入したい対象や場面が国毎に異なり、より専門的かつ集中的な研修と実用化が求められていることがうかがわれました。今後はそれらのニーズに個別に対応した、より実践的な協力のあり方も検討していきます。

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