バハレーンにおけるイスラーム墓碑の3次元計測調査(第3次)

トゥブリ墓地での調査
地元コミュニティによって保存されるアル・カデム墓地の墓碑

 東京文化財研究所は長年にわたり、バハレーンの古墳群の発掘調査や史跡整備に協力してきました。一方、同国内のモスクや墓地には歴史的なイスラーム墓碑が残されており、現在でも同国内には約150基ほどの墓碑が確認されていますが、多くは塩害などにより劣化が進行しています。
 それらの墓碑の保護に協力してほしいとのバハレーン側の要請に応え、令和5(2023)年と令和6(2024)年に写真から3Dモデルを作成する技術であるSfM-MVS(Structure-from-Motion/Multi-View-Stereo)を用いた写真測量を行いました。これにより、博物館や現代の墓地に所在する約100基の墓碑の3次元計測を完了しました。作成したモデルは、広く国内外からアクセスできるプラットフォームである「Sketchfab」に公開し、墓碑のデータベースとして活用されています。
 このたび、同国南部の墓地にも対象を広げた3次元計測調査を令和7(2025)年2月8日~12日にかけて行いました。これまでと同様に写真測量を行い、トゥブリ墓地2基、サルミヤ・モスク1基、フーラ墓地12基、マフーズ墓地1基、ダイ墓地1基、ノアイーム墓地5基、アル・カデム墓地2基、カラナ墓地5基の計29基について計測を完了しました。埋没した墓碑や破壊された墓碑を除き、本調査をもってバハレーン全土の墓碑の計測が一旦完了しました。
 一基ごとの寸法、形状、碑文に関する情報も伴った3Dモデルによる100基以上の墓碑のデータベースはこれまでに例がなく、単に形状の記録保存という意味合いにとどまらず、本調査の成果が今後のイスラーム墓碑研究にも役立つことが大いに期待されます。

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