研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


ハイパースペクトルカメラを用いた梅上山光明寺での分析調査

調査の準備
調査箇所についての協議

 これまで何回かにわたり「活動報告」で紹介してきました通り、東京都港区の梅上山光明寺が所有している元時代の羅漢図についての調査が文化財情報資料部によって実施されてきました(梅上山光明寺での調査)。そして、光学調査で得られた近赤外線画像や蛍光画像から、補彩のために新岩絵具が用いられた箇所がある可能性が示唆されました。
 このような画像データの観察に加えて、科学的な分析調査を行うことにより、高精細画像とは異なる切口から情報が得られると考えられます。そこで、令和4(2022)年1月19日に光明寺にて、保存科学研究センターの犬塚将英・紀芝蓮・高橋佳久、そして文化財情報資料部の江村知子・安永拓世・米沢玲が反射分光分析による羅漢図の調査を実施しました。
 反射分光分析を行うことにより、光の波長に対して反射率がどうなるのか、すなわち反射スペクトルの形状から作品に使用されている彩色材料の種類を調べることができます。さらに、今回の調査に適用しましたハイパースペクトルカメラを用いると、同じ反射スペクトルを示す箇所が2次元的にどこに分布するのかを同時に調べることができます。
 今後は、今回得られたデータを詳細に解析することにより、補彩のために用いられた材料の種類と使用箇所の推定を行う予定です。

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