南イタリアにおける石窟壁画の調査

サン・アントニオ・アバーテ地下教会
サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ地下聖堂

 平成30(2018)年11月12日〜11月20日までの期間、南イタリアのプーリア州において岩窟教会壁画に関する調査を実施しました。この調査は、文化庁より受託した「トルコ共和国における壁画の保存管理体制改善に向けた人材育成事業」の一環として、調査結果をカッパドキア地方の岩窟教会壁画を対象に実施している研修事業に反映させることを目的にしたものです。
 今回訪れたのは、マッサフラにあるカンデドラ地下聖堂やサン・アントニオ・アバーテ地下教会、ポッジャルドにあるサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ地下聖堂やサンティ・ステファニ・ディ・ヴァステ地下聖堂など、いずれもビザンチン様式の石窟壁画を有します。調査は、壁画技法や使用されている材料、また描かれている周辺環境に配慮しつつ、その状態や保存管理の現状に着目しながら行いました。その結果、保存管理の点で共通する問題を抱えていることや、イタリアでは実施されているがトルコでは実施されていない取り組みがあることなどが明らかとなりました。
 この調査には、研修事業でもご協力をいただいているフィレンツェ国立修復研究所の専門家に同行いただき、収集した情報をまとめています。来年度の6月に予定している研修事業では今回の調査結果を反映させながら、類似する壁画が異なる国ではどのような状況にあるのかを伝え、保存管理について考えていきます。

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