ロビーパネル展示「記録で守り伝える無形文化遺産」の開催

 令和3(2021)年6月3日より東京文化財研究所ロビーにおいて、無形文化遺産部による令和3年度パネル展示「記録で守り伝える無形文化遺産」が始まりました。今回の展示の企画趣旨は、特に新型コロナウイルス感染症の流行によって無形文化遺産の多くが危機に瀕している中、記録することの重要性をさまざまな事例から知っていただくことにあります。
 例えばコロナ禍によって古典芸能の演者は実演が激減し、深刻な苦境に立たされています。それでもなお感染対策を講じ、規模を縮小してでも継承を絶やさないよう努めています。また大手三味線メーカー「東京和楽器」が廃業の危機に陥ったニュースは、伝統芸能界に大きな衝撃を与えました。
 民俗芸能や祭礼なども、コロナ禍で中止が余儀なくされています。年に一度の行事は一回休止しただけでも2年のブランクになるため、継承の危機が深刻な問題となっています。そしてさらに、自然災害や少子高齢化などに伴うリスクも、常に継承を脅かしています。特に自然の素材を利用する工芸や民俗技術などは、大きな影響を受けています。
 こうしたさまざまなリスクで消失しかねない無形文化遺産を、記録によって保存することは重要な課題です。さらに現在の危機的状況を記録することも、今後の継承を考える際の拠り所となるでしょう。そして記録を発信することが継承への後押しになることも、この展示を通じて感じていただけたら幸いです。

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