長谷寺十一面観音像と蓮華王院千手観音・二十八部衆像についてー令和7年度第10回文化財情報資料部研究会の開催

研究会の様子

 令和8年(2026)3月16日に開催された第10回文化財情報資料部研究会では米沢玲(文化財情報資料部)と奧健夫氏(武蔵野美術大学)による研究発表が行われました。
 まず米沢は「調査報告 長谷寺 銅造十一面観音立像」と題して、奈良・長谷寺の十一面観音立像の概要について報告しました。長谷寺像は鎌倉時代に制作された金銅仏で、長谷寺本尊を模した十一面観音立像と考えられています。米沢は本像について様式や図像に検討を加え、さらに鋳造技法に特異な点がみられることを指摘しました。
 続いて奥氏による「蓮華王院本堂千手観音・二十八部衆像再考」と題した研究発表が行われました。京都・蓮華王院本堂(三十三間堂)は長寛二年(1164)に建立されたものの鎌倉時代の大火によって焼失し、文永三年(1266)に再建されたことはよく知られています。奥氏は本尊千手観音像の眷属である二十八部衆像について、まず『山槐記』の記事から創建当初には存在していたことを前提とし、現存する像の多くが平安時代の創建当初に制作されたものであること、また鎌倉時代に再興された像も基本的には創建当初像に倣った姿であることを指摘しました。二十八部衆像の制作年代に関しては作風に加えて制作技法の特徴を挙げて論証し、文化財修理の現場に長年携わってきた奥氏の知見に基づいた非常に説得的な内容でした。さらに、二十八部衆像のうち婆数仙像には中国・五台山に対する信仰が反映されている可能性について論じ、後白河院による創建当初の構想にも言及しました。
 奥氏の発表は二十八部衆像の研究史に大きな一石を投じるもので、終了後には参加者から活発な意見が交わされ大変有意義な研究会となりました。

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