無形文化財を支える原材料―篳篥ひちりき蘆舌ろぜつの原材料・ヨシをめぐる上牧かんまき鵜殿うどのでの新たな動き

今年のヨシ原焼き(2026.2.15)

 無形文化遺産部では、無形文化財を支える原材料の調査・研究も行っています。雅楽に用いられる篳篥の蘆舌(リード)の適材として知られる、大阪府高槻市の淀川河川敷、上牧・鵜殿地区のヨシ。毎年2月に行われてきた恒例のヨシ原焼きが、荒天とコロナ禍で2年続けて中止されてから5年が過ぎました。ヨシ原焼きが2年途絶えたことで、ツルクサが繁茂してヨシに巻き付いて枯死が進んでしまったことが課題でしたが、今年にかけてヨシ原の保全に向けた動きに変化がありました。
 ツルクサの除草は、これまで雅楽協議会内のヨシ対策室が中心になって寄付やボランティアを募り、ウェブサイト上で情報発信しながら対応してきましたが、一方で安定的で継続性のある枠組みも模索されてきました。令和5(2023)年、雅楽演奏に欠かせない上牧・鵜殿のヨシの安定的な入手が一つの発端となって、一般社団法人雅楽協会が設立されました。ここに国の重要無形文化財「雅楽」の保持者である宮内庁式部職楽部部員が設立準備段階からかかわり、協会に加盟したことは、国の重要無形文化財と上牧・鵜殿のヨシを繋ぐ一つの道筋ができたことを意味します。
 さらに、雅楽の継承と当該地のヨシ原保全に連携して継続的に取り組むべく、令和7(2025)年6月、一般社団法人雅楽協会、地域の鵜殿のヨシ原保存会、上牧実行組合と高槻市が連携する「雅楽の楽器『篳篥』用ヨシ保全コンソーシアム1」が設立され、オブザーバーとして文化財行政を司る文化庁と当該地を管轄する国土交通省が名を連ねました。連動して、無形文化財(雅楽)とその原材料(ヨシ)の関係の重要性を広く知ってもらうための普及事業も活発化しています。
 またこれらの体制が整ったことを受けて、令和7年度(2025)9月1日付で、文化庁の文化財保存事業費の国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金(篳篥用ヨシ保全事業の補助金)が補助事業者・ヨシ保全コンソーシアムに対して交付決定されました(事業区分「文化財保存技術」)。また高槻市も「雅楽の楽器『篳篥』用ヨシ保全事業補助金」を交付決定し、篳篥用ヨシの安定的な確保に向けた調査を行い、次年度からの本格的な除草作業に備えています。
 まさにヨシ原保全のためのスキームが実働し始めている当該地で、令和8(2026)年2月15日、恒例のヨシ原焼きが実施されました。当日は高槻市長はじめ、市役所関係者や一般社団法人雅楽協会関係者も立ち合い、また一般のヨシ原焼き見学者からは「ここのヨシは雅楽の楽器に使われているらしい」という会話も聞こえていました。
無形文化遺産部では、無形文化遺産を支える原材料保全の動向についても、引き続き調査研究を継続していきます。また、令和8(2026)年3月末には、無形文化遺産部より『篳篥蘆舌の原材料・ヨシに関する報告書―淀川河川敷 上牧・鵜殿を中心に―』が刊行されます。ご一読いただければ幸いです。

1以下本稿では「ヨシ保全コンソーシアム」と略す。

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