研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト―「保存修復材料としての和紙研修」の実施―

物性試験の様子

 国際協力機構(JICA)が行う大エジプト博物館保存修復センター(GEM-CC)プロジェクトの一環として、GEM-CCでパピルス等の有機遺物の保存修復を担当している2名を対象に、6月8日~17日まで「保存修復材料としての和紙研修(第4期)」を実施しました。
 本研修は、日本の伝統的な修復技術である装こう技術をパピルス等の保存修復へ応用するため、4回シリーズで開催してきた研修の最終回です。研修員はこれまでに当研究所および京都の修復工房で8週間、日本の文化財保存修復の概要や、裏打ち等の基礎的な装こう技術を学んできました。そして今回はパピルスサンプルを用いて「引張り試験」や「こわさ試験」といった様々な物性試験方法を学び、データ整理や分析方法についても理解を深めました。また、研修員より要望の高かった、天然染料を用いた和紙の染色方法についても講義・実習を行いました。彼らは非常に高い関心を持って研修に臨んでおり、講師に積極的に質問し意見交換を行うなど、多くのことを吸収していました。
 GEM-CCプロジェクトでは、研修内容をGEM-CC内により広く浸透させ、全体の底上げを図るためにも、研修員が学んだ知識や経験を自らが指導者となって同僚に教え伝えていくことで、スタッフ間の協力体制を構築、強化していくことを目指しています。こうした水平展開の後には、将来的に実際の日常業務に活用・応用していくためのアクションプランを作成する予定です。

大エジプト博物館保存修復センタープロジェクトへの協力―染織品研修の実施―

染色実習の様子

 国際協力機構(JICA)が行う大エジプト博物館保存修復センター(GEM-CC)プロジェクトへの協力の一環として、GEM-CCのエジプト人スタッフ8名を対象とした染織品研修を当研究所で実施しました。研修員は、染織品など有機遺物の保存修復士5名と収蔵庫管理者1名、および機器分析を担当する科学者2名で構成され、染織品保存修復士である石井美恵客員研究員を総括講師として9月2日〜13日までの2週間行われました。
 研修では、東京都立産業技術研究センターの朝倉守氏のご協力を得、合成染料の染色機構や光による退色、耐光堅牢度試験について講義していただきました。また、当研究所で保存科学を専門とする藤澤明アソシエイトフェローの指導により、材料試験法についても実習を交え学びました。加えて染色や展示品のマウント作製実習のほか、博物館収蔵庫や修復現場の視察なども実施しました。
 研修を通して、保存修復士や収蔵庫管理者、科学者といった異なる立場の者が互いに協力して作業にあたり、分析や評価、意見交換を行うことの重要性についても理解を促しました。研修員は短い期間の中で多くのことを吸収していました。
 本プロジェクトでは、研修内容をGEM-CC内により広く浸透させ、全体の底上げを図るためにも、研修員が学んだ知識や経験を自らが指導者となって同僚に教え伝えていくことで、スタッフ間の協力体制を構築、強化していくことを目指しています。

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