研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


「中央アジアの岩絵遺跡の世界遺産への一括登録のためのユネスコ地域ワークショップ」への参加

 標記ワークショップは、平成20年5月26日から5月31日にかけて、中央アジアの一つであるキルギスタン共和国の首都ビシュケクで開催されたものです。トルクメニスタンを除く、キルギスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンの4ヶ国、及びユネスコ、イコモスが参加しており、当研究所の山内がオブザーバーとして参加しました。岩絵(もしくは岩画)は中央アジアのみならず、ユーラシア大陸に広く分布していますが、同ワークショップは中央アジアに地域を限定し、世界遺産として一括登録することを目的としています。会議では、多くの事例が紹介されるとともに、調査研究、登録作業、管理保存の問題点等が議論されました。また、国境を越えた遺産の一括登録の場合、各国での作業の進捗状況が異なり、世界遺産の申請書類の作成までには今後、さらに時間を要するものと思われます。同ワークショップでは2012年の世界遺産登録を目標に、今後も同種のワークショップを継続していくことが確認されました。文化遺産国際協力センターは、西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業の一環として、将来的な保存修復協力事業を念頭に、このようなワークショップに参加し、情報収集に努めるとともに、中央アジア諸国の関係者・関係当局との連携を図っていく予定です。

タジキスタン共和国の文化遺産保護のための協力に関する合意書の締結

 平成20年3月10日、タジキスタン共和国科学アカデミー、歴史・考古・民俗研究所と東京文化財研究所の間で、文化遺産保護のための協力に関する合意書と覚書が締結されました。合意書は包括的なもので、歴史・考古・民俗研究所と当研究所が協力して、タジキスタン共和国の文化遺産保護のための活動を行うこと、また、実際の保存修復作業やワークショップ等を通じて人材育成・技術移転を図ること等が、その内容に含まれています。覚書は、同研究所に所属する国立古物博物館所蔵の壁画資料の保存修復事業及びそれに係わる人材育成・技術移転のための協力に関するものです。文化遺産国際協力センターは、これらの合意書及び覚書に基づいて、平成20年度から具体的な活動を開始する予定です。

大エジプト博物館保存修復センター設立への協力

建設中の「大エジプト博物館保存修復センター」

 文化遺産国際協力センターは、エジプトのカイロで建設が進められている「大エジプト博物館(Grand Egyptian Museum)」の付属機関である「保存修復センター」の設立に向け、国際協力機構(JICA)の要請を受け、技術的な支援を行なっています。保存修復センターに必要な機材リストの作成、同センターで活動する専門家の人材育成、技術移転等、エジプト側が求めているさまざまな要請に対して、助言を行なっています。これに関し、11月12日から20日にかけて、清水センター長、山内地域環境研究室長、谷口特別研究員がエジプトに出張し、エジプト側の担当者と今後の協力について協議を行ないました。現時点では開設の準備段階で必要な支援を行なっていますが、同センターの開設(2008年4月予定)以後は、ワークショップ等を通じて、具体的な人材育成・技術移転の面で協力していく予定です。

「シルクロードの世界遺産登録のための国際シンポジウム」への参加

シルクロードの世界遺産登録のための国際シンポジウム

 10月30日及び31日に中国の西安で、2010年に予定されている「道としてのシルクロードの世界遺産への登録」のためのシンポジウムが開催されました。日本側からは、同シンポジウムには山内地域環境研究室長と前田耕作客員研究員が参加しました。日本にとっては、このシルクロードの登録はいくつかの問題を孕んでいます。特に問題となるのは、登録が予定されているシルクロードの地理的な範囲です。現時点では、シルクロードの東側の起点とされているのが中国の西安(長安)であり、日本、特に奈良の存在が考慮されていません。登録の申請書でどのような地理的な概念規定がなされていくかについて、今後とも強い関心を持ち続ける必要があると思われます。

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