研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


キトラ古墳壁画の漆喰取外し

ワイヤソーによる漆喰取外しの様子
現在のキトラ古墳天井(紫は石材露出部分)

 保存修復科学センターでは文化庁からの受託事業「特別史跡キトラ古墳保存対策等調査業務」の一環としてキトラ古墳壁画の取外しを行っています。現在、石室内は微生物による汚染の増大が懸念されており、より早期に漆喰を取外すことが求められています。そこでこれまで月に1回、3日間程度実施していた取外し作業を、今年度からは1ヶ月間連続して行うことにしました。第1回目は5月11日からスタートし、主に天井南側の漆喰を取り外しました。1ヶ月間集中的に作業を行うことで効率を上げて取り外すことが可能となりました。また、図像のある漆喰は全て取外されていることから、紫外線照射による微生物の制御を行い、良好な結果が得られています。今回の作業の成功を踏まえ、今秋にも集中的な取外しが実施される予定です。

珍敷塚古墳のカビ対策のための調査

修復のための状態調査

 特別史跡珍敷塚古墳の保存修復のための指導助言及び調査を行いました。珍敷塚古墳は赤やグレーの顔料で文様が描かれた装飾古墳です。長い歴史の中で墳丘は失われ、現在は石室に用いられた石が露出しており、その周囲を覆屋で保護しています。この覆屋内の石の表面に大量のカビが発生し顔料が不鮮明となっていることがわかりました。そこで本格的な修復作業に向けた予備調査として、カビのサンプリングを行い、紫外線や筆などによるカビの除去を試みました。また、石表面温度の測定、近赤外水分計による水分量の測定を行い、処置が石に与える影響を検討しました。これらの調査結果を踏まえ、来年度には本格的な修復作業が実施されます。また、緊急的な処置だけでなく、覆屋内の環境制御を含めた中長期的な保存対策が求められています。

キトラ古墳天井天文図の取外し終了

天文図取外し作業の様子
天文図を取外し終了後の天井

 東京文化財研究所では文化庁からの受託事業「特別史跡キトラ古墳保存対策等調査業務」の一環としてキトラ古墳壁画の取外し作業を進めています。平成19年7月からは天井天文図の取外しに着手し、平成20年11月末をもって作業が終了しました。天文図は漆喰の状態が場所により異なり、天井に向かっての作業は困難を伴いましたが、技術の改良を重ね、星座ごとなど合計113片の漆喰片として取外しました。この作業の終了をもって、四神や十二支を含め、石室内で現在確認できる図像をすべて取外したことになります。今後は天文図周辺など無地の漆喰の取外しを行っていく予定です。また、取外した漆喰片を組み合わせて天文図を再構成し、将来の展示に向けた作業を進めていきます。

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