研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


モントリオール(カナダ)での日本絵画作品調査

モントリオール美術館での調査風景

 海外の博物館・美術館等の施設が所蔵している日本古美術作品は、日本文化を紹介する大切な役割を担っています。ところが海外にはこれらの保存修復の専門家が少ないことから、適切な処置が行えず、展示・活用ができない作品が数多くあります。そこで当研究所では作品の適切な保存・活用を目的として、在外日本古美術品保存修復協力事業を行っています。この度、修復協力への要望が強く、その意義が大きいと考えられるモントリオール美術館所蔵の作品調査を行いました。同館は、モントリオール(カナダ)に所在し、1860年にモントリオール美術協会として設立され、カナダでは最も古い美術館です。現在は、古代から現代まで43000点以上の作品が所蔵されており、その中には日本の美術工芸品も多く含まれています。
 調査は、平成30(2018)年11月26日から28日にかけて、文化遺産国際協力センターの加藤雅人、元喜載、文化情報資料部の江村知子、米沢玲の4名が美術館を訪問し、美術史的な作品価値、修復の必要性と緊急性の観点から日本絵画作品15件(17点)、染織品3件の調査を実施しました。
 今後、調査で得られた情報を同館の学芸員、保存修復担当者と共有し、作品の保存・展示に役立てていただきたいと考えています。

国際研修「ラテンアメリカにおける紙の保存と修復」の開催

装潢修理で用いる道具の説明
接着剤の講義と実習

 平成30(2018)年5月28日から6月13日にかけて、ICCROM(文化財保存修復研究国際センター)のLATAMプログラム(ラテンアメリカ・カリブ海地域における文化遺産の保存)の一環として、INAH(国立人類学歴史機構、メキシコ)、ICCROM、当研究所の三者で国際研修『Paper Conservation in Latin America: Meeting with the East』を共催しました。本研修は、INAHに属するCNCPC(国立文化遺産保存修復調整機関、メキシコシティ)を会場として2012年より開催しており、本年はアルゼンチン、ブラジル、コロンビア、キューバ、メキシコ、パラグアイ、ペルー、スペインの8カ国から11名の文化財修復の専門家が参加しました。
 当研究所は研修前半(5月29日-6月5日)を担当し、当研究所の研究員と国の選定保存技術「装潢修理技術」保持認定団体の技術者を講師とし、講義と実習を行いました。日本の修復技術を海外の文化財へ応用することを目標に、装潢修理技術に用いる材料、道具、技術をテーマに講義、実習を行いました。実習は当研究所で数ヶ月間装潢修理技術を学んだCNCPCの職員と共に遂行しました。
 研修後半(6日-13日)は西洋の保存修復への和紙の応用を主題に、メキシコとスペイン、アルゼンチンの文化財修復の専門家が講師を担当し、材料の選定方法や洋紙修復分野への応用について講義と実習を行いました。これらの講師は過去の当研究所の国際研修へ参加しており、国際研修を通じた技術交流が海外の文化財保護に貢献していることを改めて確認することができました。

国際研修「ラテンアメリカにおける紙の保存と修復」の開催

水嚢を用いた糊漉しの実演

 2016年11月9日から25日に、ICCROM(文化財保存修復研究国際センター)のLATAMプログラム(ラテンアメリカ・カリブ海地域における文化遺産の保存)の一環である『Paper Conservation in Latin America Meeting with the East』が、メキシコ文化省に属するCNCPC(国立文化遺産保存修復機関、メキシコシティ)において開催され、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、エルサルバドル、グアテマラ、メキシコ、パラグアイ、ペルーの8カ国から11名の文化財修復の専門家が参加しました。
 当研究所はCNCPC、ICCROMと共催で研修前半(9日-17日)を担当し、当研究所の研究員と国の選定保存技術「装こう修理技術」保持認定団体の技術者を講師に、講義と実習を実施しました。日本の修復技術を海外の文化財へ応用することを目標に、日本の保護制度や修復の為の道具や材料を講義し、その文化や特性に対する理解を深める実習を行いました。実習は当研究所で数ヶ月間装こう修理技術を学んだCNCPCの職員と共に遂行しました。
 研修後半(18日-25日)は西洋の保存修復への和紙の応用を主題に、メキシコとスペイン、アルゼンチンの文化財修復の専門家が講師を担当しました。中南米での紙文化財の保存修復が欧米に及んでいないことから、材料の選定方法や洋紙修復分野への応用について講義と実習を行いました。研修担当の専門家らは過去の当研究所の国際研修へ参加しており、国際研修を通じた技術交流が海外の文化財保護に貢献していることを改めて確認することができました。

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