近現代の大礼にみる“伝統”――第1回文化財情報資料部研究会の開催

研究会の様子

 昨年(2019年)、平成から令和への代替わりの一大行事(大礼)として行なわれた即位礼・大嘗祭は記憶に新しいところです。その折に用いられた雅な装束に目を奪われた方も多かったことでしょう。そんな古式を彷彿とさせる一連の行事が、明治・大正・昭和・平成、そして令和と五代にわたっていかに伝えられたのか——―令和2(2020)年6月23日に開催された文化財情報資料部研究会での田中潤氏(客員研究員)による発表「近代の大礼と有職故実」は、近現代の皇室における“伝統”のあり方をうかがう内容となりました。
 明治時代以降、皇室においても洋装が日常的なものとなり、従来の有職装束は着用が祭祀儀礼の際に限られるようになります。用いられる機会が減少した装束の途絶を回避するために有職故実研究の重要性が増し、大礼の都度、その成果が活かされました。一方で各時代の大礼で用いられた装束を比較すると、視覚的な効果や経費の問題等、さまざまな理由により変更も少なからず認められます。田中氏の発表を拝聴して、時代の要請に柔軟に対応しながら、“伝統”のイメージを伝えていく大礼のあり方は、まさに有形無形の文化財を守り伝える姿勢にも通じるものがあるように思いました。
 なお今回の研究会は、新型コロナウイルス感染拡大による休止をはさんで、およそ4ヶ月ぶりの開催となりました。会場も2階の研究会室から密集、密接を避けて地階のセミナー室へと移すなど、感染対策をとった上で行ないました。

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