虚空蔵菩薩像・千手観音像(東京国立博物館)の共同研究調査

蛍光X線分析による彩色材料分析

 東京文化財研究所は東京国立博物館と共同で、同館所蔵の仏教絵画作品に関する光学的調査研究を行っています。この共同研究の一環として、平成30(2018)年5月22、23日に、虚空蔵菩薩像及び千手観音像を対象に、高精細カラー画像の分割撮影と蛍光X線分析による彩色材料調査を行いました。平安時代後期の代表的な仏画作品は、特に洗練された美意識と高度に発達した表現技法によって描かれており、その繊細優美な描写は重要な特徴と言えます。これまでの調査研究で、平安仏画の高精細カラー画像、近赤外線画像、蛍光画像などを取得しましたが、さらに今回の蛍光X線分析では、尊像の顔、身体、着衣、装飾品、持物、光背、天蓋、背景など主要な部分の彩色材料を網羅的に調査しました。今回得られた分析結果は、それぞれの作品を理解するために有益であるばかりか、日本美術史研究全体においても重要な指標となります。今後、さらなる調査の実施とその結果の検討を行い、平安仏画の研究資料として公開する準備を進める予定です。

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