研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


文化財情報のLinked Data化についてー第3回文化財情報資料部研究会の開催

研究会の様子

 令和元(2019)年6月25日に、今年度3回目となる文化財情報資料部研究会が開催されました。今回は「Linked Dataを用いた地域文化遺産情報の集約」と題して三島大暉(文化財情報資料部)より発表を行い、コメンテーターに村田良二氏(東京国立博物館)をお迎えしました。
 Linked Dataは、セマンティック・ウェブを実現する手段であり、構造化されたデータ間のリンクを辿ることで関連する情報を得られる可能性が高まります。そのため、公開するデータをLinked Dataとして外部の情報源とリンクさせることでそのデータの発見可能性や活用可能性の向上が期待されます。本発表では、近年文化財保護法の改正等により地域の文化遺産の活用が言及される中、地域の文化遺産“情報”の活用に焦点を当て、Linked Dataとして集約・公開する際のメタデータスキーマとその課題について述べました。
 地域の文化遺産情報の例として、東京都内の地方公共団体が公開する指定文化財等の情報を対象に分析したところ、名称・文化財分類・所在地といった記述項目名および記述項目内で使用される語彙や記述形式の共通点と相違点が明らかになりました。その情報をLinked Dataとして集約するにあたり、語彙や記述形式を揃えた情報と元の情報が並存するメタデータスキーマを作成しました。課題として、「有形文化財」-「建造物」など文化財分類特有の語彙の関係をデータとして示すためにそのシソーラス形成の仕組みが必要であると指摘しました。
 研究会では、参加者がこれまで文化財と関わった経験から、文化財情報がどのように作成・共有・公開されてきたかなど広く意見交換が行われました。

「デジタルアーカイブ学会第3回研究大会への参加」

システム構成図

 デジタルアーカイブ学会第3回研究大会が、平成31年(2019)年3月15日から16日にかけて、京都大学吉田キャンパスにおいて開催されました。当研究所からは3名の職員が参加し、当研究所の文化財情報データベースシステムに関するポスター発表を行うとともに、近年のデジタルアーカイブの動向について情報収集を行いました。
 ポスター発表では、当研究所の所蔵資料や刊行物を中心としたデータベースシステムである刊行物アーカイブシステムと、そのシステムを利用して刊行及び公開している『日本美術年鑑』及び「東文研 総合検索」(www.tobunken.go.jp/archives/)について、そのシステムの構築と運用に焦点をあてて紹介しました。本発表を通して、デジタルアーカイブ関係者と意見交換をすることができ、当研究所に求められている文化財情報データベースを知る貴重な機会となるとともに、当研究所が文化財研究に資する基礎的情報の提供機関であることを再認識しました。
 また、研究発表セッションに参加し、文化財に限定せず、デジタルアーカイブ全般に関して広く情報収集を行いました。デジタルアーカイブの技術的課題や制度的課題、地域研究やコミュニティでの利活用などの知見を得ることができました。近年、デジタルアーカイブが連携を求められる傾向の中、当研究所も文化財情報を単に発信するだけでなく、外部への提供や外部情報源との連携を考えるよい機会となりました。
 なお、デジタルアーカイブ学会第3回研究大会のプログラムについては、次のウェブサイトに掲載されています。
 http://digitalarchivejapan.org/kenkyutaikai/3rd/3rd_program

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