研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


台湾での震災遺構保存事例の視察

921地震教育園區内の被災した光復國民中學の展示
車籠埔断層保存園區での断層露頭を用いたプロジェクションマッピング

 平成28(2016)年に起きた熊本地震の際に、田んぼに露出した断層が大きく注目されて保存の要望が出されましたが(現在は益城町指定天然記念物)、こうした断層露頭を保存して公開・活用が行われている事例としては、日本では例えば平成10(1998)年にオープンした野島断層保存館(阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震で現れた断層を保存した博物館)がよく知られています。その翌年平成11(1999)年に台湾では集集大地震が起きましたが、特に被害の大きかった台中市の近郊には、野島断層保存館に学びそれを発展させたような博物館が建てられているため、その視察を行ってきました。921地震教育園區は、被災した中学校校舎の上に覆屋をかけてそのまま保存公開が試みられているなど、地震の怖さを伝え、また耐震や免震の有効性を説いた防災博物館としての展示が目立ちました。一方の車籠埔断層保存園區の方は、調査で確認された断層断面を覆屋内でそのまま露出展示した科学博物館であり、地震が起きるメカニズムや過去の地震の歴史が示されていました。特に、断層面に投影したプロジェクションマッピングにより、現在の地層面を見ただけではすぐには理解しにくい複雑な地層の歴史が、順を追ってヴィジュアルでわかりやすく示されているのが印象的でした。このような展示方法は、日本でも、地層の展示ばかりでなく例えば考古遺跡における遺構の説明など、様々な分野での応用性が期待されます。

日韓共同研究―文化財における環境汚染の影響と修復技術の開発研究―2015年度研究報告会

石塔の構造補強に関する共同調査(明導寺七重石塔)

 保存修復科学センターは大韓民国・国立文化財研究所保存科学研究室と覚書を交わし、「日韓共同研究-文化財における環境汚染の影響と修復技術の開発研究」を共同で進めています。詳細には、屋外にある石造文化財を対象にお互いの国のフィールドで共同調査を行うとともに、年1回の研究報告会を相互に開催し、それぞれの成果の共有に努めています。
 今年度の研究報告会は7月8日、東京文化財研究所地階会議室にて日本側の主催で行われました。研究報告会は石造文化財の構造的な問題をテーマに、日韓双方の研究者がそれぞれの研究成果を報告し、議論を行いました。また本研究報告会に伴う韓国側研究者の来日にあわせて、日本での共同調査として熊本県湯前町にある明導寺九重石塔および七重石塔などを視察し、構造補強の方法の変遷について情報共有を行いました。

日韓共同研究―文化財における環境汚染の影響と修復技術の開発研究―2014年度研究報告会

2014年度研究報告会(大韓民国・国立文化財研究所)

 保存修復科学センターは大韓民国・国立文化財研究所保存科学研究室と覚書を交わし、「日韓共同研究―文化財における環境汚染の影響と修復技術の開発研究」を共同で進めています。詳細には、屋外にある石造文化財を対象にお互いの国のフィールドで共同調査を行うとともに、年1回の研究報告会を相互に開催し、それぞれの成果の共有に努めています。
 今年度は韓国側が担当であったため、5月27日に保存科学センター講堂にて研究報告会が開催され、保存修復科学センターからは岡田、朽津、森井が参加しました。会場が満席になるほど関心を集めたなか、研究報告会では日韓共同研究の担当者および協力関係にある大学教授から石造文化財に関する発表をそれぞれ行い、会場から多くの質問およびコメントをいただくなど、活発な議論が行われました。なお、今年度は横穴墓を対象に、今後共同調査を行う予定です。

第24回国際文化財保存修復研究会の開催

総合討議風景

 2010年7月8日に、71名の参加を得て、第24回国際文化財保存修復研究会「覆屋保存を考える」を開催しました。遺跡の保存を目的として覆屋がかけられることがありますが、そのメリット・デメリットを理解するためには、建設から既にある程度の年数が経過した覆屋について、その後の状況を知る必要があります。こうした理由から、タイ芸術局のアナト・バムルンウォンサ氏による「プラーチンブリー県の二つ一組の仏足跡の覆屋:その問題と解決への指針」、福岡県文化財保護課の入佐友一郎氏による「福岡県における覆屋の諸形態と現状」、韓国国立文化財研究所のシン・ウンジョン氏による「韓国の石造文化財における覆屋の現状と事例研究」という3件の発表をお願いし、その後、総合討議が行われました。遺跡を保存するためには、遺跡の周辺環境まで含めた条件を理解した上で、覆屋の仕様を適切に考えていく必要があるのはもちろん、覆屋建設後も継続してモニタリングを行うことが重要であることが認識されました。

第23回国際文化財保存修復研究会の開催

総合討議

 10月8日、43名の参加を得て、第23回国際文化財保存修復研究会「遺跡はなぜ残ってきたか」を開催しました。 遺跡保存を考える際には、傷んでいる部分が特に調査され、その劣化原因が研究されるのが一般的ですが、今回は敢えて良好な状態で保存されている遺跡について、その遺跡がなぜ今も残っているかを検討することから、傷んでいる遺跡の今後の保存を考えることを目指しました。発表は、イタリア・ローマ文化財監督局のパオラ・ヴィルジッリ氏による「アウグストゥスのパンテオンとハドリアヌスのパンテオン―将来的な保存のための調査、発掘、研究、診断―」、鳥取県埋蔵文化財センターの原田雅弘氏による「青谷上寺地遺跡の保存環境」、インドネシア大学のチェチェプ・エカ・プルマナによる「インドネシア・南スラヴェシの洞窟壁画」の3件で、その後、総合討議が行われました。それぞれの遺跡が残されてきた経緯や科学的な条件などを理解することから、今後の遺跡保存に向けた有用な情報が参加者の間で共有されました。

カンボジア出張

微生物除去の薬品塗布風景

 7月24~28日に、カンボジアのアンコール遺跡群で、石造遺跡の劣化に関する調査を行いました。タ・ネイ遺跡では、遺跡で用いられているのと同種の砂岩新材を用いて、その表面に微生物を繁茂させることで、微生物が岩石風化に与える影響に関する調査を続けています。また、表面に地衣類が繁茂している石材の一部に、薬剤を塗布することでクリーニングを試み、その効果や弊害などについても観察を行っています。今回はこうした調査・研究に関する基礎的なデータを現地で収集し、また施工実験を行いました。また、奈良文化財研究所が調査を行っている、西トップ寺院でも、石材表面の微生物をクリーニングする実験に協力し、それに関わるデータの収集も行いました。

アジア文化遺産国際会議の開催

参加者記念撮影

 2009年1月14~16日に、タイ王国において、アジア文化遺産国際会議「被災後の遺跡の修復と保存」を開催しました。これは、東京文化財研究所とタイ王国文化省芸術総局とが共催し、東南アジア文部大臣機構考古芸術事業(SPAFA)と在タイ日本国大使館とが後援したものです。前半の二日間は、バンコク市のサイアムシティホテルにおいて、円卓会議を行い、最終日はアユタヤで、実際に災害対策や災害後の修復が行われている遺跡を視察するエクスカーションが行われました。円卓会議では、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、ベトナムの東南アジア5カ国からそれぞれ一人ずつの代表者に、開催国のタイと主催者の日本を加えた各国からの発表が行われたほか、地元の大学関係者などのオブザーバーからも積極的に意見や質問が出され、活発な議論が行われました。また、エクスカーションでは、修復材料などに関して様々な情報が参加者の間で共有されました。

第22回国際文化財保存修復研究会の開催

第22回国際文化財保存修復研究会発表風景

 2008年9月19日に、75名の参加を得て、第22回国際文化財保存修復研究会「遺跡保存と水」を開催しました。遺跡保存コンサルタントのリチャード・ヒューズ氏による「モエンジョダロ遺跡における水文学、水理学、地質工学―水との共存」、仙台市富沢遺跡保存館の佐藤洋氏による「仙台市富沢遺跡保存館における遺構保存の現状と課題」、イタリア・ナポリ及びポンペイ特別考古学局のニコラ・セベリーノ氏による「バイア水中公園:その保存と公開」の3件の発表と、総合討議が行われました。遺跡の保存対策といえば、多くの場合には水を如何にして防ぐかという視点で議論がなされますが、水が存在する前提で保存が図られている遺跡の事例は、そうでない状況にある多くの遺跡の保存を考える上でも参考になると期待されます。

第4回日タイ共同研究成果報告会の開催

第4回日タイ共同研究成果報告会

 文化遺産国際協力センターでは、2006年10月にタイ文化省芸術総局と東京文化財研究所との間で交わされた書簡に基づき、同局との間でタイの遺跡の劣化と保存に関する共同研究を実施していますが、この度バンコクにて、その成果報告会を開催しました。
 報告会は、9月4日と5日の二日間にわたり、バンコク市のタイ・ナショナルギャラリーにて行われました。会では、日本側から6件、タイ側から4件の研究発表が行われ、現地研究者など約30名の参加者により、活発な議論が持たれました。
 バンコク滞在中には、タイ芸術総局を訪問し、2009年1月14~16日にバンコクで開催される予定のアジア文化遺産国際会議に関して打ち合わせを行いました。

タイ・カンボジア現地調査

砂岩の物性(帯磁率)調査
(カンボジア・アンコール遺跡)

 文化遺産国際協力センターは、2008年7月に、タイおよびカンボジアにおいて、石造遺跡の劣化に関する調査を実施しました。
 タイでは、文化省芸術総局と共同で、スコータイ遺跡およびアユタヤ遺跡で調査を行いました。スコータイ遺跡では、スリチュム寺院において、藻類が繁茂しやすい場所としにくい場所とで、水分蒸発がどの程度違っているかを定量しました。アユタヤ遺跡では、マハタート寺院で2004年に実施した、塩類風化を軽減するための保存処理について、その後の経過や効果の持続性について調べました。
 カンボジアでは、アンコール地区保存整備機構(APSARA)と共同で、地衣類や蘚苔類が石材の劣化に与える影響に関する調査を行いました。特に、タ・ネイ遺跡で用いられている砂岩について、表面に微生物が存在する場合としない場合とで、強度などの物性がどのように異なるかを調べました。
 また、バンコク滞在中には、タイ芸術総局を訪問し、2009年1月14~16日にバンコクで開催される予定のアジア文化遺産国際会議に関して打ち合わせを行いました。

第21回国際文化財保存修復研究会の開催

会議風景

 2007年12月6日に、93名の参加を得て、第21回国際文化財保存修復研究会「保存処置後のモニタリング」を開催しました。国士舘大学の西浦忠輝教授による「遺跡保存におけるモニタリングの重要性とその問題点」、インドネシア・ボロブドゥール遺産保存研究所のナハール・チャヤンダル氏による「ボロブドゥール遺跡の修復後のモニタリング」、韓国国立文化財研究所の金思悳氏による「石窟庵の長期的保存方案」の3件の発表と、総合討議が行われました。それぞれの遺跡における様々なモニタリング方法が紹介され、参加者の間で情報が共有されましたが、それを他の遺跡にも導入するためには、さらに広くモニタリングの重要性を訴えていく必要があることが認識されました。

タイ王国文化省芸術局長来訪

タイ王国文化省芸術局長来訪(右から4番目がタイ王国文化省芸術局長)

 8月21日に、タイ王国文化省のArak SUNGHITAKUN 芸術局長が来訪されました。同氏は、国際交流基金の招聘により、8月20日から26日までの日程で来日されていたところ、日本の文化財保存関係活動視察の一環として来所されたものです。
 研究所では、所長と面談し、その後、所内見学及び文化遺産国際協力センターにおいて現在行っている日タイ共同研究の今後の進め方や、来年度にタイで行われる予定の国際会議に関する打ち合わせなどが行われました。

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