オンライン授業による大学院教育の実施

所内に構築されたオンライン講義用のブース

 東京文化財研究所では、平成7(1995)年より東京藝術大学大学院美術研究科と連携してシステム保存学コースを開設し、文化財保存を担う人材の養成を行ってきていますが、令和2(2020)年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、例年通りの授業の開講や研究室における学生指導などが行えない状況になりました。令和2年4月に、東京藝術大学が原則として学生の入校禁止と授業のオンライン化を決定したのを受け、令和2年度前期のシステム保存学の大学院教育はこの方針に従って進められました。
まず、緊急事態宣言が出されていた5月25日以前は、研究所からの指示によって自宅待機中だった東京文化財研究所の併任教員が、自宅からカリキュラムに従ってオンライン講義を実施しました。緊急事態宣言解除後の6月からは、職員の研究所への出勤は認められるようになりましたが、依然として授業はオンラインで行うことが大学から要望されていたため、対面で行うことで初めて効果が得られるような講義は後回しにして、順番を入れ替えてオンラインで行える講義を先に実行しました。その時の講義は、研究所からオンライン講義を発信できるような環境を所内で構築し(図)、出勤した併任教員が入れ替わりでそこからオンラインで行いました。
そして7月以降は、例外として一部で対面授業を行うことも認められるようになったので、後回しにされていた講義を研究所内で対面で実施することとしました。この時は学生の研究所への立ち入り前の検温や健康チェック、マスクの着用、受講学生数に対して十分に広い講義室の確保、部屋の換気、などに十分注意しながら、対面で行うことでしか効果が得られない教育を研究所にて行いました。
この間、研究室の大学院生は自宅待機を原則とし、それぞれの指導教官(併任の東京文化財研究所職員)が主としてWeb会議システムを用いて個別にオンラインで指導を行っていました。
 前例のない困難な状況によって各地で教育に支障が出ているというニュースが聞こえている中、受講した学生の中に健康を害したものはおらず、またインターネット情報を駆使したオンライン講義ならではの新たな教育も試みたため、例年と比べても遜色ない教育効果を挙げることができたと考えています。

令和2年度前期に実施した講義
・保存環境計画論  朽津信明・犬塚将英・佐藤嘉則 履修者20名(聴講2名)
 全12回 全てオンラインで実施
・修復計画論    朽津信明・安倍雅史    履修者 9名(聴講3名)
 全12回 全てオンラインで実施
・修復材料学特論  早川泰弘・早川典子    履修者 12名(聴講3名)
 全12回 オンラインで4コマ分、対面で8コマ分実施
・文化財保存学演習 朽津信明           履修者21名(聴講2名)
 オンラインにて実施

システム保存学在籍大学院生
・修士課程 1名 博士課程 1名

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