無形文化財を支える原材料―上牧・鵜殿のヨシの調査開始

上牧・鵜殿のヨシ原焼き記録調査
篳篥
篳篥のリード(蘆舌)

 雅楽の管楽器・篳篥のリード(蘆舌)の原材料は、イネ科ヨシ属の多年草「ヨシ」です。特に、河川や湖沼のほど近くで生育する陸域ヨシは篳篥のリードに適していると言われています。この良質な陸域ヨシの産地として知られているのが、大阪府高槻市の淀川河川敷、上牧かんまき殿どの地区です。ここでは、ヨシ原の保全、害草・害虫の駆除のために、ヨシを刈り取った後、2月に地元の鵜殿のヨシ原保存会と上牧実行組合がヨシ原焼きを実施してきました。ところが、荒天とコロナ禍によりヨシ原焼きが2年続けて中止され、ヨシの生育環境が懸念されていたところ、令和3(2021)年9月頃より、この地域のヨシが壊滅状態に近いという情報が広まりました。
 無形文化遺産部では、伝統芸能を支える保存技術や、そのために使われる道具、原材料についても調査を行っています。ヨシは、無形文化財である雅楽を支える原材料として欠かせないとの観点から、このたび、令和4(2022)年2月13日、2年振りに行われたヨシ原焼きの記録調査を実施しました。
 今後は、鵜殿のヨシ原保存会と上牧実行組合を中心に、ヨシに巻き付いて枯らしてしまうツルクサの除去を行うなどして、ヨシの生育環境を整えていくとのことです。無形文化遺産部としても、文化財の保存に欠くことのできない原材料を再生・確保するための重要な試みとして、引き続きこの動向を注視していく予定です。

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