アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査V

レーザースキャナーを用いた東門の測量
トータルステーションを用いた地形測量

 東京文化財研究所は、カンボジアにおいてアンコール・シエムレアプ地域保存整備機構(APSARA)によるタネイ寺院遺跡の保存整備事業に技術協力しています。平成31(2019)年3月8日~17日の間、通算で第5次となる現地調査を同遺跡において行いました。
 今回は、同遺跡東門に対する3D測量および遺跡周辺における地形測量を、東京大学生産技術研究所・大石岳史研究室や、測量専門家の内田賢二氏らの協力のもと、APSARA機構のスタッフと共同で実施しました。
 東門は同寺院の本来の正門ですが、今日では通常の見学動線から外れており、構成する建材の多くが不安定な状態で、公開・活用の観点からも適切な修復を行うことが望まれます。今回実施した測量では、レーザースキャナーおよびカメラを搭載した無人航空機(ドローン)を用い、門本体だけでなく、その周囲に散乱する石材の位置や形状も含めた現状を三次元で詳細に記録しました。今回得られた情報を基に変形や損傷の様相を総合的に把握し、今後の具体的な修復計画の検討に反映していく予定です。
 また、地形測量は、これまで未調査であった遺跡南東部を主な対象区域として、トータルステーションを用いて実施しました。収集したデータから遺跡全体の詳細な地形図を作成することで、寺域内の整備にとどまらず、周辺の諸遺跡とも関連づけた広域的な活用にも資することが期待されます。

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