タジキスタン共和国フルブック遺跡出土の壁画の保存修復および展示

修復作業の様子(マウントボードに壁画片を配置)
修復された壁画のオープニングセレモニーの様子

 9月11日から10月2日までタジキスタン国立古代博物館において、フルブック遺跡出土の壁画断片の保存修復および展示作業を実施しました。この壁画断片は10世紀から11世紀頃に製作されたと推定されるもので、類例が少ないため、同国及び中央アジアの美術史に関わる貴重な学術資料のひとつです。当研究所では2010年度よりタジキスタン共和国科学アカデミー歴史•考古•民族研究所と協力して、この壁画断片の本格的な保存修復を実施し、昨年度までに小断片の接合、強化や安定化処置を行いました。
 今年度は安全な展示に向けたマウント処置を目的として、まず、壁画断片の裏面のサポート作製とその取り付けを行いました。次に17片の壁画断片を1つの連続した図像として鑑賞できるよう、発掘当時に作成された線画を元に幅91×高さ182cmのマウントボードに配置して取り付けました。壁画断片の周囲は質感を合わせた化粧モルタルを施しています。また、固定にはボルトとナットを使用し、他博物館での展示のための移動など、将来マウントボードから取り外す必要が生じた際には、安全に取り外しができる構造になっています。
 展示後には修復された壁画のオープニングセレモニーが開催され、東文研からの出席者の他、国立古代博物館のボボムロエフ館長、歴史•考古•民族科学アカデミーのマソフ所長、在タジキスタン鎌田日本大使が出席されました。この壁画はフルブック遺跡の出土品を集めた国立古代博物館の一室に、今後も展示され続ける予定です。
 なお、本修復事業の一部は、住友財団「海外の文化財維持・修復事業」の助成により実施しています。

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