企画情報部2013年度第2回研究会の開催

 企画情報部では、5月28日(火)、定例の研究会を行いました。今回は、「四天王寺所蔵六幅本聖徳太子絵伝をめぐる諸問題」として、聖徳太子絵伝について調査チームを組んで活動をされている土屋貴裕氏(東京国立博物館)、村松加奈子氏(龍谷ミュージアム)より発表が行われました。
 今回取り上げられた四天王寺六幅本聖徳太子絵伝(重文)は、元亨三年(1323)、井田別所の僧・定意阿闍梨の発願により、南都(奈良)絵所の遠江法橋なる人物が描いたことを述べる裏書があることと合わせ、14世紀初頭以降数多く作られた聖徳太子の中でも重要な作品です。裏書については30年ほど前に活字化されたものによってこれまでそのまま認識されてきましたが、実物の調査を行ったチームの米倉迪夫氏(東京文化財研究所名誉研究員)によれば、裏書は当初のものではなく、その内容についてはなお疑義が残るとするとの見解が裏書の画像とともに示されました(米倉氏は当日ご不在のため土屋氏から論旨の代読)。このあと、土屋氏は絵の詳細な画像を示しつつ、これまで漠然と「南都の絵画」として認識されていたこと自体に疑問を提示し、それがこの時代にすでに様式として実在的なものであったかどうか今一度検討の余地があることなどを発表されました。村松氏は、多くの他の聖徳太子絵伝の中における図像的な関連を示し、聖徳太子絵伝の遺品群における意義について、その重要性が指摘されました。制作も優れた注目すべき作品でありながら本格的に論じられることのなかった本図についての研究が深まる端緒となるでしょう。

to page top