研究会「考古学と国際貢献 イスラエルの考古学と文化遺産」の開催

研究会「考古学と国際貢献 イスラエルの考古学と文化遺産」のプログラム

 令和4(2022)年2月20日、イスラエルにおける考古遺跡の保存修復や整備公開をテーマとした研究会をオンラインで開催しました。この研究会は、文化遺産国際協力センターが「考古学と国際貢献」をテーマとして今後5ヵ年にわたり開催を計画している年次研究会の第1回目となります。イスラエルは、世界の中でも文化遺産関係の研究者層が厚く、また文化遺産保護制度も整備されていることから、今回の対象国としました。
 研究会では、まずイスラエルで史跡の指定や整備を担う機関であるイスラエル国立公園局から、保存開発部長のゼエヴ・マルガリート氏と北部地区担当官のドロール・ベン=ヨセフ氏が講演を行いました。マルガリート氏からは同国における考古遺跡の管理に関する諸課題、ベン=ヨセフ氏からは歴史資料と考古資料とのはざまで考古遺跡をどのように公開するかということについて、現地での取り組みが紹介されました。
 続いて日本国内の専門家として、筆者のほか北海道大学観光学高等研究センター准教授の岡田真弓氏と立教大学文学部教授の長谷川修一氏が講演を行いました。筆者からは1960年代以来実施されてきた日本によるイスラエルでの考古調査の概観、岡田氏からは同国で文化遺産マネジメントが発達する過程の考察、長谷川氏からは自身が発掘調査を行っている遺跡を事例とした保存活用に関する諸課題について、各自の専門的見地からの報告がされました。
 研究会の後半には、長谷川氏の司会のもと、講演者全員によるパネルディスカッションを行いました。そこでの議論を通して、考古遺跡の保存や整備において何を残して何を残さないかということに関する問題や、保存や整備に関わる当事者のジレンマなど、両国間で共通する課題があることが認識されました。
 今後、西アジア諸国を対象とした同様の研究会を通じて各国と課題を共有することで、より実効性の高い国際協力事業へとつなげていきたいと考えています。

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