ユネスコ無形文化遺産保護条約第20回政府間委員会会合の傍聴
令和7(2025)年12月8日から13日にかけて、ユネスコの無形文化遺産保護条約第20回政府間委員会会合がインドのニューデリーで開催されました。会場はユネスコ世界文化遺産でもある「赤い城(ラール・キラー)」でした。東京文化財研究所からは3名の研究員がオブザーバーとして会合の様子を傍聴しました。
今回、日本から新しい案件の提案はありませんでしたが、3件の案件(「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」「和紙:日本の手漉和紙技術」「山・鉾・屋台行事」)について要素の拡張が認められました。これは既存の案件に新しい要素を加えるというもので、令和6(2024)年のサイクルから新しく始まった手続きです。例えば「和紙:日本の手漉和紙技術」はこれまで「石州半紙」「本美濃紙」「細川紙」の3つの要素によって構成されていましたが、今回新たに「越前鳥の子紙(えちぜんとりのこし)」が加わりました。
日本は現在、新しい案件の提案をするタイミングは事実上2年に一度と限られていますが、要素の拡張はその制限を受けることがありません。無形文化遺産の代表一覧表に記載された日本の案件の数は23件と変わりませんが、複数の無形文化財、無形民俗文化財、選定保存技術がその要素として加えられることとなりました。
なおこの要素の拡張は多国籍提案による案件にも適用されてきました。今回は例えば、「キルギスとカザフのユルト(チュルク民族の移動住居)製作の伝統的な知識と技能」にウズベキスタンの要素が追加され、その名称も「キルギスとカザフとカラカルパクのユルト(チュルク民族の移動住居)製作の伝統的な知識と技能」に変更されました。ユネスコは国と国との対話や相互理解を深めるという観点から多国籍提案を行うことを推奨していますので、今後こうした動きはより広がっていく可能性があります。
今回の会合では武力紛争下にあるウクライナやスーダンといった国の代表から、無形文化遺産が危機にさらされている状況への懸念とともに、文化遺産が平和構築に果たす役割の意義についても意見が表明されたのは印象的なことでした。
今回の開催国であるインドは多様な文化を有する国であることから、会合の節目やサイドイベントで伝統芸能をはじめとする様々な文化的パフォーマンスが披露されました。会合の閉会直後には会場内に楽団が現れ、参加者も事務局スタッフも分け隔てなく、その場はダンスフロアのような様相となりました。
なお次回の政府間委員会会合は中国の厦門(アモイ)で令和8(2026)年11月30日から12月5日までの日程で開催される予定です。
