在外日本古美術品保存修復協力事業の関連調査

仮張り乾燥中のローマ本(部分)

 今年度修復している作品のなかに、国立ローマ東洋美術館(イタリア)の「虫の歌合絵巻」があります。この作品はさまざまな虫たちが和歌の優劣を競う様子を描いた愛らしい絵巻物ですが、残念ながら欠紙と錯簡のあることが明らかでした。そこで類例をさがしたところ、同内容で首尾完結した作例が個人宅に収蔵されていることがわかりました。所蔵者に事情を説明したところ、調査をご快諾いただき、2月5日(木)、現品を拝見することができました。いくつかの疑問点も残っていますが、少なくともローマ本(の当初の状態)を直接模写したのが個人本であるか、あるいは両者に共通の原本があるか、いずれにせよ両者が非常に近しい関係にあるということはわかりました。これによって確証をもってローマ本の錯簡を訂正し、欠紙部分を相応に処置することができるようになったわけです。その結果をもって同日、修復作業を行っている松鶴堂(京都市)にも行き、修復についての最終的な詰めの協議を行いました。作品は本紙への作業をほぼ終えて仮張り乾燥させているところで、近々、巻子装に仕立てられ、修復が完了します。その後、イタリアへ返却する前の5月下旬に、東京国立博物館で一般公開する予定です。

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