徳島大学附属図書館所蔵「伊能図」の彩色材料調査

伊能図の彩色材料調査風景

 徳島大学附属図書館が所蔵する、伊能忠敬(1745-1811)による実測地図(以下「伊能図」)の本格的な学術調査を目的とする「徳島大学附属図書館伊能図検証プロジェクト」(統括:福井義浩・同館長)の一環として、彩色材料の科学調査を平成26年11月25日より4日間、同館にて行いました。伊能図は、国内では初の精密な科学的測量に基づいた地図であるとともに、地形や山河、建物等が絵画的に描写、彩色されており、近世絵図としての特徴も有しています。調査では、非接触分析手法である蛍光X線法と可視反射分光スペクトル法によって、使用されている顔料や染料の同定に関わるデータを取得しました。現在、データの解析を進めています。
 今回、調査対象とした「沿海地図」(3枚)、「豊後国沿海地図」(3枚)、「大日本沿海図稿」(4枚)はいずれも1800年から1816年の間に行われた測量に基いて作成された地図であり、それ自体の資料価値とともに、伊能図の最終版である「大日本沿海輿地全図」に至る過程を知る上でも非常に貴重です。プロジェクトでは彩色材料調査と併せて、使われた紙質や、測量図としての技術調査なども行われています。今後、これらの成果によって、伊能図の成立に関する重要な知見が得られると期待しています。

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