タジキスタン南部出土初期イスラームの壁画の保存修復

フルブック遺跡出土断片(部分) 左:処置前 右:表面クリーニングと小断片の接合後
裏打ち作業の様子

 11月6日から12月5日まで、タジキスタン国立古代博物館が所蔵する壁画断片の保存修復作業を現地にて実施しました。修復の対象である壁画断片は、タジキスタン南部に位置する初期イスラーム時代の都城址フルブック遺跡から1984年に出土しました。長い間適切な処置がなされないまま古代博物館の収蔵庫に保管されていましたが、2010年度より本格的な保存修復処置が開始されています。
 壁画断片は著しく脆弱化しており、彩色層は顔料が載っているのみの状態であったり、下塗りの石膏層は細かく断片化したりしていました。昨年度の彩色表面の強化処置に引き続き、細かく割れた小断片の接合や、新しく裏打ちをするなど、グループ化された各断片を安定化させるための処置をおこないました。また、昨年度に安定化させた断片については、欠損部の充填など、展示を目指した今後の処置を試験的におこないました。壁画断片は、接合や充填による安定化に加え、図像も見やすくなってきています。今後は、将来的な展示方法の検討をしていく予定です。
 なお、本修復事業は、住友財団による海外の文化財維持・修復事業助成を受けて実施しています。

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