ブータン王国の伝統的建造物保存に関する拠点交流事業

版築施工現場における職人への聞き取り調査
パガ・ラカンでの実験

 ブータン王国における文化庁委託・拠点交流事業の一環として、2012年5月27日~6月8日の日程で日本より7名の専門家を派遣しました。本事業はブータン王国における伝統的建造物に関し、その構造評価および耐震対策を含む保存修復技術についての技術移転・人材育成を行うものとして今年度から始まったものです。
 今回はまず、ブータン王国内務文化省文化局と東京文化財研究所の間で本事業を遂行するための覚書と実施要綱を締結しました。ブータン側と共同で行った具体的な作業としてはまず、保存すべき文化財的価値を特定するために、版築部と木部から構成されている寺院・民家・廃墟を対象に伝統的建築工法を解明するための実地調査を実施し、今後の建築学的調査を円滑に進めるための調査票を作成しました。さらに、伝統的建築物の構造性能を定量的に把握するために、火災に見舞われ撤去が予定されていたパガ・ラカン(寺院)での版築壁引き倒し実験、同ラカンの版築ブロックの材料試験、パンリ・ザンパ・ラカンでの常時微動測定等、構造学的調査を実施しました。
 今後も引き続き、建築学的調査と構造学的調査を両輪として、伝統的技術の延長上における耐震対策の可能性を検討していく予定です。

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