前田青邨文庫の受入

「前田青邨文庫」の一部
女史箴巻を見る前田青邨(『文化』第246・247号、1974年10月から転載)

 日本画家前田青邨(1885-1977)の旧蔵資料「前田青邨文庫」を、青邨の三女・秋山日出子氏から、日出子氏の長男である秋山光文氏(お茶の水女子大学名誉教授、目黒区美術館館長)のご紹介により、令和4(2022)年10月11日付で東京文化財研究所にご寄贈いただき、11月8日に感謝状を贈呈しました。
 この文庫は、113種類275点(図書109種類270冊、カセットテープ3本、レコード1組2枚)の資料からなり、甲冑など武具の故実書、歴史物などの江戸期版本や、幸野楳嶺の画集、「梶田半古自筆画稿」の題簽が付された折本、日本美術院の後輩である小林柯白、酒井三良らの小品集などが含まれており、今後の前田青邨研究において欠かせない資料といえます。
 また、この文庫には、カセットテープ「青邨『女史箴』再見談」が収められております。これは昭和49(1974)年に、青邨の女婿で東京大学文学部教授であった秋山光和氏(光文氏の父、当研究所名誉研究員)の斡旋により北鎌倉の青邨邸にて行われた小林古径・青邨筆「臨顧愷之女史箴巻」の調査、青邨本人への聞き取りの記録です。この調査には東北大学の亀田孜氏・原田隆吉氏とともに、当時の東京国立文化財研究所の辻惟雄・関千代・河野元昭らの各氏が参加しており、当研究所の活動記録としても、とても重要なものです。このように、青邨の作品・作家研究に必須であることはもとより、当時の文化財調査のあり方を示す資料として、広く今日の文化財研究にとっても有用といえます。
 今回ご寄贈いただいた「前田青邨文庫」は資料閲覧室にて公開します。また図書資料は、ゲッティ研究所との共同事業におけるオープンアクセス対象の資料とし、一方、カセットテープやレコードなどはデジタル化し、長期にわたって研究に活用できる処置を施したいと考えています。この文庫が、前田青邨や近代日本画、さらには文化財の研究に寄与できれば幸いです。

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